経営戦略の一環として、従業員の健康や活力ある職場づくりを推進する健康経営に取り組む企業が増えています。健康経営を推進するうえで知っておきたいのが、健康経営オフィスの考え方です。

健康経営オフィスを展開すれば従業員の健康がさらに促進され、業績向上も期待できます。

この記事では健康経営オフィスの基本的な概念と、自社で導入する際の手順を詳細に紹介します。

また経済産業省が提示する「簡易チェックシート」を活用し、自社の課題を発見して対応していくために必要な情報をまとめました。健康経営オフィス構築に向け、はじめの一歩を踏み出しましょう。

 

健康経営オフィスとは

経済産業省は、健康経営オフィスを次のように定義しています。

「健康を保持・増進する行動を誘発することで、働く人の心身の調和と活力の向上を図り、一人ひとりがパフォーマンスを最大限に発揮できる場」

出典:経済産業省 健康経営オフィスレポート P2 3段落 1行目~

ここで意味する「健康」とは心身の病気を抱えておらず、従業員や会社がイキイキと活気にあふれる状態です。

健康経営オフィスを構築すれば病気欠勤・休職による損失(アブセンティーズム)のみならず、体調不良による労働生産性の低下(プレゼンティーズム)の改善につながります。

プレゼンティーズムが企業にもたらす損失額については、下記の記事をご参照ください。

プレゼンティーズムの損失額は甚大!測定指標と具体的な対策を解説

健康経営オフィスで従業員の健康を維持、増進することは、今後の会社経営にとって必要です。

 

健康経営オフィス構築17項目と対策を徹底分析!

まずは自社オフィスが従業員の健康保持・増進に寄与する環境になっているか、点検・把握してください。チェックの際は、経済産業省「健康経営オフィスレポート」の簡易チェックシートの活用がおすすめです。

シートでは項目ごとにオフィス環境をチェックし、点数化します。目安として、7割以上該当する項目は合格、7割未満は改善が必要です。

現状のチェックをする際は人事・総務の担当者だけでなく、多様な部署の従業員に協力してもらうことが大切です。

多数の従業員が参加すれば、取り組みが全社的な活動につながります。

ここからはチェックシート記載の全17項目について、ポイントや具体的な改善策を紹介します。

出典:経済産業省 健康経営オフィスレポート P18

 

【A】快適性を感じる

快適な職場環境を実現することで、肩こりや腰痛の防止、ストレス減少などの効果が期待できます。

従業員が不便だと感じる点、過ごしづらいと感じる点などをヒアリングし、マイナスの影響が強い要因から改善してください。

1.自分の体に合わせて椅子の機能を調整している

長時間使用するオフィスチェアの改善は、健康への大きなプラス効果が期待できます。

特にチェックしたいポイントは以下4つです。

背面の張地

通気性が高く、長時間の使用による蒸れを防ぐもの

メッシュ素材がおすすめ

座面の素材

体へのフィット感が高いもの、長時間座っていても体が痛くならないものを選ぶ

背もたれの高さ

首の位置まであるハイバックがおすすめ

長時間座っていても疲れにくい

ロッキング機能

座ったまま体を後ろに反らせる機能(ロッキング機能)が充実したもの

長時間座っていても座りにくい、体に優しい設計のオフィスチェアを選んでください。

出典:SANWA DIRECT オフィスチェアの選び方とタイプ別おすすめオフィスチェア13選 「1.オフィスチェアを選ぶ5つのポイント」より

2.温室が快適である

職場の室温・湿度は、従業員の健康に大きな影響を及ぼします。以下の点を押さえて、オフィス内の室温・湿度調整を徹底してください。

避けるべき気温・湿度

健康への悪影響

気温15‐18度以下

風邪ウイルスが活性化する

気温28度以上

熱中症警戒レベル

室外との気温差が±5度以上

自律神経が乱れやすく、体調を崩す原因となる

湿度50%以下

肌や目の乾燥が起こりやすい

高温で湿度が75%程度

カビやダニが繁殖しやすい

2022年4月1日には「事務所衛生基準規則の一部を改正する省令」が施行されました。

この改正では、オフィスの室温は18度以上28度以下になるように努めなければならないと規定されています。室外との気温差に配慮しつつ、気温18度~28度、湿度50~70%を目安に調整してください。

出典:厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署 ご存知ですか?職場における労働衛生基準が変わりました P7 1行目~前半

 

3.作業面が十分に明るい

2022年12月より、室内の明るさに関する基準も改められました。改訂後の基準は、以下の通りです。

作業場の種別

明るさの基準

一般的な事務作業をするオフィス

300ルクス以上

付随的な事務作業*をするオフィス

150ルクス以上

(*「付随的な事務作業」とは、資料の袋詰め等、事務作業のうち、文字を読み込んだり資料を細かく識別したりする必要のないものを指します。)

照度不足の環境では、眼精疲労や、姿勢の悪化による上肢障害などを引き起こす危険性があります。

特に高年齢の労働者が増えている事務所では、照明に関する細やかな配慮が必要です。

出典:厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署 ご存知ですか?職場における労働衛生基準が変わりました P3~前半

 

4.タバコや強い香水など不快な臭いを感じない

2020年4月に健康増進法の一部が改正され、受動喫煙を防止する取り組みが必要となりました。

オフィス内は原則禁煙ですが、喫煙室を設けるなどの措置を講じれば一部屋内での喫煙が可能となっています。

受動喫煙の防止は、マナーではなくルールに変わりました。自社の喫煙ルールを見直してください。

また、強い香水や臭いのきつい食事などによって、気分不調を引き起こす可能性もあります。

ルールとマナーの両軸から、オフィスの臭い対策に取り組むことが大切です。

出典:厚生労働省 なくそう!望まない受動喫煙。改正法の全体像 P1 1段落目・図

 

5.自分の居場所が確保されていると感じる

職場を自分の居場所と感じられなくなるとストレスが増加し、メンタル不調につながります。

「心理的安全性」の高い職場を目指し、工夫してください。

心理的安全性とは、チームにおいて自分の発言が他者に拒絶されず、安心感を共有し合えている状態です。自分の言動が他者から非難されたり、軽視されたりすることのない風土づくりを目指すことが大切です。

心理的安全性の概要と具体的な施策については、下記の記事をご参照ください。

心理的安全性とは?人事から組織を活性化させる重要な視点を解説

 

【B】コミュニケーションする

職場の仲間との適度なコミュニケーションは、ストレスの軽減につながります。

メンタルヘルス不調や心身症の予防策として、社内コミュニケーションの活性化に取り組みましょう

6.雰囲気が友好的である

職場の雰囲気を友好的にするため、感謝の気持ちを伝え合う習慣づくりが有効です。

「ピアボーナス」の制度を取り入れると、従業員が自発的に感謝を伝え合うきっかけになります。

ピアボーナスとは従業員同士が感謝の気持ちをポイントなどで贈り合い、ポイントに応じたインセンティブが得られる制度です。愛社精神の醸成や、離職率の低減などの効果が期待できます。

7.周囲の人の仕事の内容を把握している

互いの業務内容を把握しているといざというときに助け合えるため、調子が悪いときも安心して休めます。仕事の可視化によって業務の重複を減らし無駄な残業を削減できれば、長時間労働による体調不良も予防可能です。

互いの業務内容や進捗状況を把握するには、コミュニケーションツールの活用が有効です。テレワークによって従業員が離れて仕事をしている企業では、とくに重要な対策です。

8.いつも挨拶をしている

毎日挨拶を交わすことで、相手のささやかな体調変化に気づける可能性が高まります。

無印良品で有名な株式会社良品計画では「挨拶当番」の取り組みで経営者が率先して挨拶をおこなった結果、社風が改善され業績向上につながっています。

円滑な人間関係構築のため、まず挨拶運動から始めてください。

出典:東洋経済 無印良品、課長以上は「朝8時」から挨拶当番! 「奇跡のV字回復」を支えた社風改革 P1~2

9.よく笑う機会がある

「笑い」は体内の細胞を活性化し、体の免疫力を上昇させます。職場に笑顔がないと感じるなら、まずは業務から離れたイベントを実施するのがおすすめです。

非日常の空間でコミュニケーションを深めることで、通常業務でのコミュニケーションや笑顔も増加します。

出典:日本成人病予防協会 笑う~ストレス解消法~「笑いの健康効果」より

【C】休憩・気分転換する

長時間労働や過度のストレスは健康へ悪影響をもたらすため、職場での休憩や気分転換の時間を取り入れることが大切ですここからは効果的な休憩の取り方や休憩の効果について、詳しく紹介します。

10.仕事の合間に雑談することがある

日本能率協会が2021年に実施した「ビジネスパーソン1000人調査」では、回答者の7割が雑談は人間関係を深めることにつながると回答しています。

出典:PR TIMES『2021年「ビジネスパーソン1000人調査」【雑談機会と効果】』 Q6より

一見ムダに見える雑談は、業務効率を上げ長時間労働を防ぐ、コミュニケーションを促進してストレスを軽減するなどの効果をもたらします。

雑談が少ない場合は朝礼時やミーティング開始時などを利用して、あえて雑談の時間と機会を作ることから始めてください。

11.仕事の合間に机や身の回りの整理整頓をすることがある

職場の整理整頓は、従業員の健康保持・増進に多くの効果をもたらします。

  • 清潔保持による感染症予防
  • 物が見つからないイライラによるストレスの軽減
  • つまずき・転倒などによるけがの防止
  • 業務効率化による長時間労働の予防

綺麗なオフィスを眺めることも、気分転換につながります。オフィス内の5S活動(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)を徹底してください。 

出典:一般財団法人 あんしん財団 気持ちよく働きやすい環境で生産性もUP 職場の「整理整頓」の進め方

 「整理整頓で4割以上の会社が従業員のモチベーションUPを実感」本文・図より

 

12.昼休みは規定通りしっかり休んでいる

忙しいことを理由に昼休みを取らなかったり、昼食の欠食が続いたりしたりすると、健康を損なう原因になります。昼休憩時に業務をおこなっていないか、管理職がチェックするよう徹底してください。

従業員が自発的に昼休憩を取りたくなるよう、ランチ代の補助制度を導入すると効果的です。

出典:公益社団法人 千葉県栄養士会 健康を考える皆さまへ おろそかにしないで!昼食 「昼食の役割」より

 

13.離席するのに周囲の人に気を使わない

心身の疲労回復のためには、適度な休憩が重要です。休憩をサボりだとしない雰囲気づくりから始めましょう。

特にサービス業や工場では、持ち場を離れることでサボっていると思われるのではないかと抵抗感を持つ方がいます。

ピアボーナスやサンクスカードを導入し互いの信頼関係を高めることで、安心して休憩を取れる風土を作ってください。

 

【D】体を動かす

適度な運動は健康の第一条件ですが、いきなりハードな運動習慣を従業員に求めるのは難しいでしょう。オフィス内で運動の時間を増やし、日常業務の中で体を動かすきっかけを作ることが大切です。

 

14.オフィス内をよく歩いている

スポーツ庁が紹介したオーストラリアの研究機関における調査では、日本人の成人が平日に座っている時間は世界20カ国中もっとも長く、1日420分=7時間とされています。

長時間座っていると血流や筋力の代謝が低下し、心筋梗塞や脳血管疾患、肥満やがんなどのリスクが高まります。

デスクワークが多い職場では、こまめに体を動かす時間を設定してください。

スタンディングデスク、体を動かしていないときにアラートを出してくれるアプリの導入が効果的です。

出典:スポーツ庁Web広報マガジン DEPORTARE 日本人の座位時間は世界最長「7」時間!座りすぎが健康リスクを高める あなたは大丈夫?その対策とは・・・ 「座りすぎは喫煙や飲酒と同じように体に悪い?」より

 

【E】適切な食行動をとる

食生活の見直しは、生活習慣病予防の重要なポイントです。従業員の食行動は自己責任と決めつけず、オフィスでできる食のサポートを検討してください。

15.仕事中に間食を時々摂っている

健康的な昼食の摂取はもちろん、適度な間食も健康保持に有効です。間食を従業員全員に取ってもらいたい場合、フルーツなどの健康的な軽食をオフィスに届けるサービスを導入してください。

また軽食を含む飲食代の補助など、食に関する福利厚生サービスは多数あります。自社の課題と条件に合ったサービスの導入を検討してください。

 

【F】清潔にする

健康保持・増進のために、従業員自らが清潔を保持する意識を持たなければいけません。清潔保持は感染症予防やアレルギー対策の基本となるため、各自が習慣化できるよう促します。

16.手洗い、うがいをしている

手洗い・うがいを習慣化して、新型コロナウイルスなどの感染症予防を徹底します。医療や福祉の現場では、事業所に入る際に必ず手洗いをする習慣があります。

しかしオフィスワーカーの場合、手洗いは徹底されていません。

外部の方と関わる機会が少ない職場であっても、こまめな声掛けで手洗い・うがいの習慣化を促してください。

またおしゃれなトイレタリーの充実、手荒れしにくいハンドソープの導入など、従業員が自発的に行動したくなるような取り組みを講じることが大切です

 

【G】健康意識を高める

従業員の健康保持・増進は、企業側からの一方的な取り組みだけでは実現しません。従業員自らが健康意識を高め、自分の健康は自分で守るという意識を持つことが大切です。

17.自分の健康状態をチェックしている

企業の健康診断は、経年で自身の健康状態の変化を知る良い機会です。健康診断の後で産業保健職との面談をおこなえば、健康意識向上のきっかけになります。

また社内のチャットツールを活用した健康情報の提供、産業医や産業保健師による健康セミナーなども有効です。健康増進の取り組みに対してインセンティブを付与すると、さらなる意欲向上につながります。

健康経営オフィスを構築するステップ

健康経営オフィスの構築では、会社全体で取り組むことが重要です。ここからは経営経営オフィス構築の6つのステップを、具体的に紹介します。

①健康経営に取り組むと社内外に宣言をする

全社的な経営課題として取り組みを認知してもらうことで、健康意識が高まります。まずは経営層が健康経営の重要性を理解し、社内外に向けて健康経営への取り組みを宣言してください。

自社webサイトやプレスリリースで発表する、健康経営優良法人制度や健康宣言事業にエントリーするといった行動が有効です。

宣言の際にはすでに健康経営を推進している他社事例を参照し、自社の方針を検討してください。

 

他社事例としては、次のようなものがあります。

リンナイ株式会社:年24回以上のセミナー実施で全社総休職日数が28%減

東京海上ホールディングス株式会社:保健師からの情報提供や社長表彰で高血圧該当者の8割に改善傾向

企業文化に合わせ、取り組みに工夫をしてください。

出典:経済産業省『健康経営優良法人認定制度』

全国健康保険協会『東京支部 「健康企業宣言」募集中!』

経済産業省『選定企業紹介レポート 2018健康経営銘柄』P20:リンナイ P29:東京海上

 

②健康経営オフィスの実施組織体制を作る

全社を巻き込んで取り組みを実現するには、部署横断的な実施組織作りが重要です

人事部に加えオフィス構築を担当する総務部・ファシリティ部門、実際にオフィスを使用する管理職や一般社員など、多様なメンバーに参画してもらってください。産業医や安全衛生委員会の協力も必要です。

商工会議所や健康保険組合連合会、地域の産業保健総合センターなど、外部の専門家を活用するのもおすすめです。

参考:健保連東京連合会『【健康経営】令和4年度専門家派遣制度のご案内』

独立行政法人 労働者健康安全機構『産業保健総合支援センター(さんぽセンター)』

 

③課題を把握する

課題の洗い出しには、健康経営オフィスレポート記載の簡易チェックシートを活用してください。

一度に全ての課題に取り組むのではなく、緊急性や費用対効果などの観点から優先度をつけてください。

参考:経済産業省 健康経営オフィスレポート P18

 

④具体的な取り組みを計画する

いきなり大きな取り組みを実施するのではなく、スモールステップで成功体験を積むことが大切です。目標を立てる際は次のように具体的な数値を盛り込み、達成度が測れるようにします。

  • 〇年度の健康診断において有所見率〇%ダウン
  • 〇年〇月までに月平均残業時間を〇時間から〇時間に削減
  • 〇年〇月までにメンタルヘルス不調による休職者を半減

毎年の健康診断や、衛生委員会のイベントなどとの調整も意識してください。

オフィスの改装など大がかりな取り組みが必要な場合、予算確保やスケジュール調整を早めに行ってください。

⑤実際に取り組みを行う

作成した計画内容に沿って、具体的にアクションを起こします。

従業員が受け身な姿勢にならないよう、推進組織メンバーが積極的な声掛けをしたり、活動の様子を社内報で知らせるなど、全社で盛り上げる工夫が大切です。

 

⑥取り組みの評価・反省をする

取り組んだ内容を評価し、次のアクションに反映させます。

期待した効果がみられたのか、その原因や改善点を洗い出します。アンケート結果や計測した数値を活用すると、効果や改善点等が見えやすくなります。

反省から得られた改善点を社内にフィードバックすれば、継続的に活動が盛り上がります。

長期的な視点で反省点を活かし、健康経営オフィスの構築に向けて着実に改善を繰り返しましょう。



まとめ:健康経営オフィスの構築は現状把握から!小さな取り組みから始めよう

健康経営オフィスの構築は、すぐに実現できるものではありません。小さな取り組みから、全社を巻き込んだ大きな流れにつなげていくことが大切です。

まずは現状の課題を把握し、優先度の高い課題から1つずつ対処してください。

実際に健康経営オフィス実現に向けて取り組む際には、外部の便利なツールを活用すると効果的です。

従業員の運動機会や社内コミュニケーションを増やしたいなら、福利厚生アプリKIWI GOがピッタリです。

KIWI GOは運動イベントの開催や、趣味を通じたコミュニティづくりを手軽にサポートするアプリです。

歩数がごほうびにつながる機能もあるため、オフィス外でもウォーキングのモチベーションが続きます。楽しみながら健康経営オフィスを構築するツールとして、ぜひご活用ください。