健康経営の効果を上げるため、社内イベントを実施する企業は少なくありません。しかし、必ずしも上手くいくとは限らず、中には「参加率が低く効果を実感できない」「どうすれば参加率が上がるのか」と悩んでいる企業は多いでしょう。

そこでこの記事では、従業員が社内イベントに参加しない理由やイベントを成功させる方法について解説します。具体的な導入事例も紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。

健康経営とは

ここではまず、健康経営の概要や推進することで得られるメリットを紹介します。

健康経営の意味と概要

健康経営は企業が従業員の健康と働きやすい環境を重視し、健康課題に戦略的に取り組む経営手法です。具体的には従業員が健康的かつ活力を持って、仕事に専念できるような環境づくりを行うことを意味します。

健康経営は経済産業省が推進する「日本再興戦略」や「未来投資戦略」における、「国民の健康寿命の延伸」に関する取り組みのひとつです。

従業員の健康問題に対して企業が一丸となって取り組み、予防や管理を展開することで、「長期的に働ける従業員が増加する」「生産性が向上する」といった副次的な恩恵を享受できる可能性もあります。

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健康経営を推進する効果

健康経営の顕彰制度は、経済産業省が設計し日本健康会議が認定している制度です。健康経営が望ましい状態にあると判断された企業は、「健康経営優良法人」に認定されます。健康経営優良法人の種類は、以下の通りです。

  • 大規模法人部門(内TOP500がホワイト500)
  • 中小規模法人部門(内TOP500がブライト500)

特に望ましい健康経営が見られた企業のうちトップ500社には、「ホワイト500」あるいは「ブライト500」の称号が贈られます。

なお、優良法人に認定された場合に受けられる主なメリットは、以下の通りです。

  • 企業イメージが向上する
  • 優秀な人材が集まりやすくなる
  • 離職率の低下が期待できる

健康経営に取り組む企業には自治体や金融機関等においてさまざまなインセンティブが設けられているため、熱心に取り組めば制度面でも恩恵を享受できます。

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健康経営に社内イベントが効果的な理由

健康経営の推進には、社内イベントが有効です。近年、働き方改革や新型コロナウイルス感染症の影響により、テレワークやフレックスタイム制を導入する企業が増加しました。しかしリモート施策が拡充するにつれて、従業員のコミュニケーション課題が浮き彫りになっています。

総務省が発表した「令和3年版 情報通信白書」によると、2021年3月時点で企業のテレワーク実施率は平均38.4%。大企業では69.2%です。一方、HR総研が実施した「社内コミュニケーションに関するアンケート調査 結果報告」では、コミュニケーションに課題を感じている従業員が8割にのぼることが明らかになりました。

社内イベントは従業員間の結束力や信頼感を醸成し、コミュニケーションの強化に寄与します。チームビルディングや情報共有を促進するためにも、社内イベントを導入し従業員間の交流を活性化させてください。

参考:総務省 令和3年版情報通信白書
参考:HR総研 社内コミュニケーションに関するアンケート調査結果報告

社内イベントがもたらす3つのリット

ここからは社内イベントによって得られるメリットを紹介します。

従業員が健康的になる

健康経営を導入する企業が増えた昨今、公益財団法人が2021年に発表した調査において「最近3年間における『心の病』」が「増加傾向」と回答した企業は22.9%となり、過去最低を記録しました。

ただし、メンタルヘルスに対する課題が全てクリアになったわけではありません。コロナ禍の影響を受け、精神的な健康状態が「悪くなった」「やや悪くなった」と回答した者の割合は約4割を占めています。具体的な要因として挙げられたのは「コミュニケーションの変化」です。

社内イベントは従業員同士のコミュニケーションを自然と促進できます。人間関係が良好になればストレスが緩和されるため、心身の健康維持に役立ちます。

参考:公益財団法人 第10回「メンタルヘルスの取り組み」に関する企業アンケート調査結果

働きやすい環境に変化する

厚生労働省が発表した「令和2年雇用動向調査の概況」では、社内コミュニケーションと離職率に関連性があることが明らかになっています。

令和2年の1年間において、転職入職者が前職を辞めた理由のトップ5は以下の通りです。

男性の離職理由 女性の離職理由
その他の理由(出向等を含む)27.4% その他の理由(出向等を含む)26.6%
定年・契約期間の満了16.0% 人間関係が悪かった14.8%
労働条件が悪かった11.2% 労働条件が悪かった12.5%
人間関係が悪かった9.3% 期間満了10.7%
給料が少なかった8.7% 給料が少なかった9.4 %

調査の結果から、「職場の人間関係が好ましくなかった」という理由が女性の第2位、男性の第4位にランクインしています。そのためイベントを通じて人間関係が良好になれば、働きやすい職場環境が整い人材流出リスクが下がるといえます。また離職率が低下することで企業イメージが向上し、より優秀な人材が集まりやすくなるという副次的な効果も期待できます。

参考:厚生労働省 令和2年雇用動向調査結果の概況

帰属意識や愛着心が高まる

健康経営によって企業イメージが向上すると、従業員の帰属意識や愛着心が高まります。

HR総研が実施したアンケートによれば、9割以上の従業員がコミュニケーション不足を業務の障害と認識しており、特に「経営層と従業員」の関係性に課題を感じていることが明らかになりました。

問題点としては、「目指す方向への認識の統一」が最多の45%、「迅速な情報共有」が40%、「業務へのモチベーション維持向上」が37%となっています。そのため調査より、コミュニケーション不足を解消することで、従業員と経営陣が共通認識を持って働けるようになるといえます。

帰属意識をさらに高めるには、個人のコミュニケーション能力だけでなく、組織のチームワーク力も必要となるような社内イベントの導入が重要です。従業員の帰属意識や労働意欲が向上し、「離職したい」と考える従業員が減れば、安定した人材確保も可能となります。

参考:HR総研 社内コミュニケーションに関するアンケート2022結果報告1

社内イベントの参加率が低くなりがちな理由

社内イベントは従業員の健康やコミュニケーション機会の確保において非常に重要です。しかし社内イベントに参加したくないと感じている従業員は少なくありません。

実際に株式会社キャリアデザインセンターが働く女性453名を対象に「忘年会」についてアンケートを実施した結果、約6割が「職場の忘年会には参加したくない」と回答しています。参加したくない理由として回答率が高かったものは、以下の通りです。

  • 面倒だから:57.4%
  • お金がかかるから:39.3%
  • 楽しくないから::38.1%

上記調査では、「面倒だから」という理由が最多です。忘年会を「面倒」と感じる理由には、次のものが考えられます。

  • 特別なメリットを感じられない
  • 準備が大変だからやりたくない
  • そもそも何をするのかよく分からない

社内イベントの参加率を向上させるためには、従業員のこのような悩みを一つひとつ解決することが大切です。

参考:株式会社キャリアデザインセンター 女の転職type

社内イベントを成功させるポイント

ここからは社内イベントに参加したくない理由を元にして、従業員が自発的に参加したいと思える環境を作る方法や、社内イベントの参加率を高めるポイントを紹介します。

自社課題に即したイベントを設定する

従業員が「イベントが自分の興味やニーズと合致しない」または、「自社の課題と関連が薄い」と感じている場合、参加しなくてもよいと考える傾向があります。そのためなるべく従業員ニーズに合った内容のイベントや、自社の問題解決に繋がるようなイベントを開催することが大切です。

例えば、リモート勤務者が増加したことでコミュニケーションが希薄になったと感じている従業員が多い場合、オンライン上で交流できるイベントを立ち上げるといった方法があります。

また企業規模が大きくなかなか交流できる機会がないケースでは、部署ごとではなく全社を挙げて大規模なイベントを開催しても楽しめます。

そこでまずは、従業員が「誰と」「どのような」コミュニケーションが不足していると感じているか調査することが重要です。アンケートを実施したり面談で聞き取り調査をしたりと、しっかりと情報収集し分析することで、問題点や従業員ニーズが明らかになります。

気軽に楽しめる内容にする

参加までのハードルが高い場合や参加すること自体がストレスになるようなケース、過度にフォーマルなもの、準備が大変なイベントなどは従業員に大きな負担がかかります。できるだけ、従業員が気軽に楽しめるような内容のものに変更してください。

一言に「イベント」と言っても、「オンラインイベント」や「運動会」「飲み会」「旅行」などさまざまな種類があります。

途中参加OKにしたり、リモート参加できたり、家族を招けたりするようなイベントは気軽に参加しやすくなるためおすすめです。例えば、「家族を招いた観光イベント」や「リモート運動会」などがよいでしょう。

参加を強制するのではなく、従業員が自発的に「参加したい」と思える内容のイベントにすることを心がけてください。

従業員にとってのメリットを周知する

イベントのメリットが不明確で特別な価値が見出せない場合、参加への動機づけが弱くなる傾向があります。従業員がイベントに参加することで得られる利益について、できるだけ具体的に解説し周知させてください。イベント参加のメリットは、次のとおりです。

  • コミュニケーション能力が上がる
  • リフレッシュの機会になる
  • 社内ネットワーキングを強化できる
  • チームワーク力が高まり働きやすくなる

ほかにも、インセンティブをもらえる、景品が出るといったように「モノ」を利用するのも方法のひとつです。メールなどで呼びかけるほか、ミーティングの際に告知したりポスターを掲載したりしながら、社内イベントに参加するメリットを広めてください。

また本来休みである日や勤務外の時間にイベントをしている場合、従業員の負担やストレスの元となっている可能性があります。イベントは可能な限り勤務時間内に行う、あるいは振替休日を設定するなどして、従業員にとって「デメリット」となる部分を排除することが大切です。

参加率を上げるヒントに!社内イベントの実施事例3選

ここからは社内イベントを実施した企業における、成功事例を3つ紹介します。

凸版印刷株式会社

出典:凸版印刷株式会社

凸版印刷株式会社は印刷業を営む企業です。1900年の創業以来、「人間尊重」の基本理念に基づき健康経営に取り組んできました。具体的な施策内容は以下の通りです。

  • デスクワークが中心な本社において、「本気のラジオ体操オンライン」企画を実施
  • 健保組合に依頼し、ラジオ体操指導員によるレクチャー動画を作成
  • 強化期間を設け、期間内は事務局より毎日メールを配信

オンラインでも参加可能なラジオ体操イベントを導入した結果、参加者のうち5割強の従業員が「在宅でもラジオ体操を始めるきっかけとなった」と回答。フィジカルチェックでは、回答者のうち約3割が「改善した」と回答しています。

また8割強が「今後もラジオ体操を継続する」と回答しており、運動習慣の定着が見られました。

参考:健康長寿産業連合会 健康経営先進企業事例集

AGC株式会社

出典:AGC株式会社

AGC株式会社は三菱グループに属するガラスメーカーです。AGC110周年を記念して、全社を巻き込んだファミリーイベント『Aフェス』(社内運動会)を開催しました。具体的なイベント内容は以下の通りです。

  • 参加者全員をAチーム、Gチーム、Cチームのいずれかのチームに分配
  • 会場内は5つのエリアに分かれており、エリアごとに多様なコンテンツ(フットサル、玉入れ、ドッチビーなどの競技)を設置
  • チーム対抗で得点を競い合う

従業員の家族も参加できる内容にしたことで、年齢や性別の垣根を超えたコミュニケーションが生まれました。またB級グルメを中心としたキッチンカーが出展した点に、従業員満足度の向上効果が見られています。

参加者からは「一体感が得られた」「こんなイベントに挑戦できた自分の会社が誇らしい」という声が聞かれ、従業員の帰属意識が高まるイベントとなりました。

参考:ZEROIN AGC110周年プロジェクトの最後を飾る、家族参加型の周年イベント『Aフェス』

本多通信工業株式会社

出典:本多通信工業株式会社

本多通信工業株式会社は、コネクタの製造や販売を営む企業です。社長と全社員との対話集会で社内コミュニケーションの活性化を望む声が多く寄せられたことから、労働組合結成50周年を記念して船上パーティーを実施しました。具体的なイベントの内容は以下の通りです。

  • 東京湾から見る東京の景観観光
  • 遠方からの参加者には帰路に浅草観光を実施
  • 家族が参加できるようにして、イベント当日は料理の提供やクイズコーナーを実施

イベントに参加した従業員からは、「仕事とは違う一面をお互いに見ることができた」「イベント後に参加者同士の会話が増えた」といった意見が聞かれました。また家族からは「いい会社だね」という声が上がったようです。結果として従業員同士だけでなく、会社や家族全体の一体感に繋がるイベントとなりました。

参考:NEWSBASE 労働組合結成50周年を記念した 家族も参加できる社内イベント

まとめ:社内イベントの参加率を上げるには気軽さと楽しさが必要

健康経営を推進する際は、定着率の向上や企業イメージ向上に繋がる社内イベントの開催がおすすめです。しかし社内イベントの立ち上げ方次第では、逆に従業員の負担を増大させる可能性があるため注意してください。

社内イベントを成功させるためには、従業員が気軽に楽しく参加できるようなイベントを取り入れることが重要です。

アンケートやフィードバックを通じて従業員の意見を取り入れながら、ニーズに関する理解を深め、企業課題に基づいた企画を立ててください。

従業員のコミュニケーション強化には、「KIWI GO」アプリが効果的です。KIWI GOでは歩数に応じてポイントが貯まる仕組みになっており、ゲーム感覚で楽しみながら運動を習慣化できます。

さらにKIWI GOには、ウォーキングイベント開催、従業員同士のチャットに役立つ機能もあります。アプリ内で簡単に交流できるため、従業員のコミュニケーション促進に役立ちます。健康経営に取り組む企業は、ぜひKIWI GOをご活用ください。