近年、働き方改革の一環でテレワークを導入する企業が増加し、さらに新型コロナウイルスの流行によってその動きは加速しました。

テレワークとは、ICT(情報通信技術)を利用し、時間や場所を有効に活用できる柔軟な働き方のことであり、これまでの環境を大きく変える取り組みとして注目されています。

本記事では、働き方改革においてテレワークを導入するメリットについて、日本の労働市場の変化に着目しながら解説します。

 

テレワークの意味とは

 

テレワークは、「離れた」を意味する「Tele」と、「仕事」を意味する「Work」という言葉から成り立っており、在宅勤務やモバイルワークなどを指します。

テレワークの種類には、自宅で勤務する在宅勤務、異動中や移動の間に行うモバイルワーク、通常勤務するオフィスとは別のオフィスへ出勤をするサテライトオフィスなどがあります。

 

テレワークは政府が推し進める働き方改革の一つ

現在、政府が推し進めている働き方改革とは、働く人がそれぞれの事情に応じた多様で柔軟な働き方を自分で「選択」できるようになるための動きです。

テレワークでは働く場所や時間を個人の都合に合わせて調整できるため、柔軟な働き方を実現するのに有効です。

テレワークの実施率は新型コロナウイルスをきっかけに加速しており、東京都では2021年10月時点で55.2%の企業がテレワークを実施していることが明らかになっています。

出典:内閣府 第4回 新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査

 

テレワークの導入が注目されている理由とは

テレワークは政府による働き方改革の推進と新型コロナウイルスの影響によって注目されるようになりました。それぞれについて詳しく解説していきます。

 

働き方改革が政府で推進されているから

2019年4月より、政府から労働基準法の改正などを含めた、「働き方改革関連法」が施行されました

働き方改革とは、政府が推進する「一億総活躍社会」を実現するための改革であり、多様な働き方を押し進める法案です。

日本では少子高齢化が加速しており、労働人口は年々減少傾向にあります。

各企業がこの課題を乗り越えるためには、働き手を確保すること、限られた人員でより効率的に業務を行い生産性を高めることが重要です。

そのような状況の中で、テレワークは特に働き手の確保に大きく寄与します。

 

例えば、従来であれば育児や介護のため働きたくても働くことができなかった人が、テレワークを導入することで、柔軟に働くことができるようになります。

企業が働き方改革としてテレワークを取り入れ、従業員の事情に応じて就業場所を変化させれば多くの従業員が柔軟に就業することが可能となり、働き手の確保、業務活性化につながります。

参照:首相官邸「働き方改革の実現」

 

新型コロナウイルスの影響で非対面型での対応が必要となったから

新型コロナウイルスの流行によって、働き方を変化させることが必要となりました。

満員の通勤電車や従業員同士の会話などは感染の可能性を高めるとして指摘されるようになり、接触機会を減らすためテレワークが推し進められたのです。

また、新型コロナウイルスの流行で一度テレワークが広まったことで、通勤時間が削減できること、場所を問わず働けることなどテレワークの利便性が注目されました。

 

働き方改革においてテレワークを導入するメリット

テレワークを導入することによって、企業や従業員、ひいては社会全体にメリットがあります。本章では企業側と従業員側の双方のメリットについて解説します。

 

企業側のメリット

まず、テレワークを導入することによる企業側のメリットは以下の内容が挙げられます。

 

従業員エンゲージメントの向上

従業員のなかには、育児や介護を行いながら就業をしている方などもいます。

従業員によって置かれている環境も異なるなかで、介護や育児の時間を取りたいと考える従業員や、仕事と両立をしながら別の時間を取りたいと考える従業員も多いです。

テレワークを企業制度として導入し、従業員に浸透することができれば、様々なところで仕事ができるため、従業員の働く環境の選択肢が広がります。

働き方が選択できるようになれば従業員の満足度も高まり、企業への貢献度を示す従業員エンゲージメントも向上します。

 

コストの削減

テレワーク導入に関わるICT環境の整備などによって、初期の段階では設備投資費用の負担が重くなることもあります。

しかし、テレワークが浸透すれば通勤交通費が削減できるほか、場合によっては営業拠点を統合したり、オフィスの賃貸費用を軽減したりすることも可能です。

その結果長期的な目線で見ればコスト削減に繋がります。

また、近年、従業員が外出をしている間の無駄なスペースを減らすため、社内の席を固定しないフリーアドレス制を取り入れる企業も増えてきました。

フリーアドレス制によって、空いている座席を従業員が自由に使用できるようにすれば、企業側は人数分の席を用意する必要がなくなります。

このように、テレワークの継続により、賃貸料や従業員の移動費、照明・空調コストを削減することが可能です。

 

優秀な人材の確保

テレワークを導入することは従業員が働きやすい環境を作ることにつながります。

従業員が働きやすい環境を提供することができれば人材の流出を防ぐこともできますし、優秀な人材の確保にもつながります。

これまでは優秀な従業員であっても、育児や介護を理由にフルタイムで働くことができず、休職や退職をしてしまうことがあったかもしれません。

しかし、テレワークを導入することで、そのような事情を抱えた優秀な従業員も柔軟に働くことが可能です。

 

従業員側のメリット

テレワークの導入によって従業員には、以下のようなメリットがもたらされます。

 

育児・家事・介護の両立

従業員によって置かれている立場や状況は様々であり、子育てや介護を行わねばならない従業員などもいます。

テレワークを利用すれば、本来通勤にかかる時間などを育児・家事・介護に充てることができます。そのため、さまざまな事情を抱える従業員も仕事を両立しやすくなります。

 

通勤時間の削減

テレワークが導入されるとオフィスへの移動時間が削減され、効率的に仕事を進められるようになります。

例えば一日に1時間移動時間に費やしている場合、月20営業日で換算をすると従業員1人あたり20時間が移動時間に取られているのです。

しかしテレワークを活用すれば、今まで移動に使われていた時間を仕事に使ったり、余暇に使ったりできるため従業員の選択の幅が広がります。

 

テレワークを最大限活用するポイント4つ

テレワークで得られるメリットを最大限受容するために、企業側が意識したいポイントを、下記にてご紹介します。

 

従業員の生活状況に合わせて活用するか選択できるようにする

従業員によって置かれている環境は様々であり、家事育児や介護などの時間と業務を両立したいと考える従業員も多いです。

また、通勤時間などの無駄な時間を削れば、業務以外に打ち込める時間も必然的に増やすことができます。

そのような従業員の生活状況によって、オフィス出社かテレワークかを選択できるようにすれば、従業員の選択肢を増やすことができます。

 

複数箇所でテレワークの環境を整える

複数箇所で就業できる制度を整えれば、従業員の働きやすさの向上に繋がります。

テレワークを導入すれば自宅での就業が可能ですが、子どもがいて静かな環境を作れない従業員や、インターネット環境がない従業員、業務を行うための設備が整っていない従業員もいます。

そのため、自宅以外の就業場所を会社が確保することは、従業員の働く環境改善に繋がります。

複数箇所で業務を行うなら、フレキシブルオフィスを追加することも有効な手段の一つです。

フレキシブルオフィスは、一般的なオフィスとは違い、企業働く従業員だけでなくフリーランスの方使用できる共有オフィスのことをいい、複数箇所で利用できます。

従業員が最適な環境を選べるよう、オフィスの選択肢を増やすことは重要です。

 

コミュニケーションが取りやすい環境を整える

テレワークでは、直接顔を合わせてコミュニケーションを取ることができません。

オフィスの同じ空間にいれば、ちょっとした雑談なども発生し、コミュニケーションが取りやすいのですが、テレワークでは他のメンバーと会話をする機会を積極的に作る必要があります。

コミュニケーションの機会確保には、コミュニケーションのためのツールやシステムの導入がおすすめです。

例えば、チャットツールを導入し、リアルタイムで何の業務をしているか双方が確認をできる状況を作る、オンラインミーティング用のツールなどを使い、決まった時間に顔を合わせて会話をするなどの工夫が大切です。

 

従業員の健康状況を確認できるようにする

テレワークによって「従業員の健康状態が把握できない」「従業員が運動不足になった」などの健康課題が明らかになっています

テレワークには、通勤時間の削減などのメリットがある一方で、テレワークによって生活習慣病に罹患するリスクが上がる、他者と話さないことでメンタル面が不調になってしまうなどの事態が懸念されます。

出社の場合は、通勤時間によって、ある程度身体を動かす状況を作り出せていた従業員も、テレワークの導入によって一切体を動かさなくなったというケースが見受けられます。

そのため、従業員自らが進んで運動できるような環境を整えねばなりません。

最近では、従業員の健康増進を進めるツールや、日々の健康状態を一括で管理できるツールが増えてきています。

例えば、個人の運動モチベーションを維持して、習慣化するまでの仕組みが整えられているKIWI GOなどのツール導入もおすすめです。

参考:KIWIGO公式サイト

必要なツールを導入し、従業員の健康状態を把握してください。

 

必要に応じてICTを導入する

コスト削減などが期待できるテレワークですが、従業員のリモート環境の整備や、ペーパーレス化のためのツール、従業員の出退勤管理の難しさなどの課題もあります。

テレワークを推進するなかで発生する課題を解決し、業務を円滑に進めるためには、ICTの導入が有効です。

例えば、オフィスにあるパソコンから遠隔でテレワーク用のパソコンを操作できるようにする、インターネット経由でクラウド上にあるアプリにアクセスし業務を行うなどのICT施策は、リモート環境の整備に有効です。

また、請求書や契約書など紙で発生する業務に関しては、クラウドサービスなどを導入し、ペーパーレス化を進めましょう。

 

テレワークを導入し働き方改革に成功した企業の事例

テレワークは多くの企業で導入されています。

実際にテレワークを導入している企業はどのような施策を行っているか、解説します。

 

日本マイクロソフト

参照:日本マイクロソフト株式会社

日本マイクロソフト株式会社は2007年に在宅勤務制度を開始して以降、働き方改革に取り組み、長年に渡ってオフィスデザイン、勤務制度、ICT ツールなどの改革に注力しています。

日本マイクロソフト株式会社では、コロナ渦で業務のほぼすべてをリモートワークとしましたが、物理的にコミュニケーションが取れないことで、業務効率やエンゲージメントが低下してしまいました。

そこで、ハイブリッドワーク対応の会議室を作成し、会議相手とどこでも繋がることができるようにTeams、1on1ミーティングや電話に最適な電話ブースなどを設置しました。

ハイブリッドワークとは、従来のようにオフィスに出勤するオフィスワークとテレワークを組み合わせた働き方です。

オフィスに本物のグリーンを取り入れたり、効果的なディスカッションを行うために昇降式デスクを活用した結果、働きやすい環境を作る施策として脚光を浴びました。

また、従業員のスキルアップのため、AIやディープラーニングの学習機会を提供したり、社会貢献や地域活動を通じプログラミング教育事業を推進する活動なども行っています。

参考:大きな期待: ハイブリッドワークを成功させるには

 

花王株式会社

参照:花王株式会社

花王株式会社は2021年、本社に勤務する従業員を対象に、積極的な休息と休憩を推進する「休み休みWork Style」を取り入れました。

テレワークが導入され働く場所が自宅になったことで、上司などの目が届かず無制限に働いてしまう従業員は大きな問題です。

花王株式会社でもそうした従業員が問題になり、適切に休むよう伝えることの重要さが再確認されました。

そこで、花王株式会社は「休み休みWork Style」の中で「リフレッシュタイム」などを取り入れ、自社の製品を配布しながら休息を積極的に推進しています。

また、会議時間を前倒しして終了させる「思いやりタイム」により、従業員が一息つける時間の作成を行っています。

これらの取り組みを実践した従業員からは「集中力が上がった」「リラックスして業務に取り組めた」など好意的な意見があがっています。

参考:花王、社員の「休み休みWork Style」応援企画を実施

 

ブラザー工業株式会社

出典:ブラザー工業株式会社

ブラザー工業株式会社は、新型コロナウイルス流行前から在宅勤務制度を取り入れており、2015年には育児や介護等を行う勤続3年以上の社員を対象とし、週2日までの在宅勤務制度をスタートさせました。

育児や介護を行う従業員に向けて、能力発揮の機会選択を広げ、早期の復職を促すこと、また復職後のキャリアの停滞を避けることを目的としています。

また、2019年には、これまで週2日までが最大だったテレワーク可能日数を週4日までにし、終日在宅のほかに一部在宅制度も設けられました。

男性も在宅勤務を行ってもらうことで、家事や介護、育児等に参加しやすい環境づくりが実現されています。

参考:厚生労働省 働き方・休み方改善ポータルサイト

 

まとめ:テレワークを導入し社員が働きやすい環境作りに取り組もう

テレワークを導入すれば、コスト削減や業務効率化を進めることが可能です。

また、従業員の働き方の選択肢を広げることができるため、エンゲージメントを向上させることができます。

ただし、テレワーク導入により運動の機会やコミュニケーションが減少するなど、新たな課題が生まれる可能性もあります。

テレワークでは従業員同士が密に連絡を取れる環境を整え、従業員が健康に働けているか随時確認することが大切です。

KIWI GOは、従業員の運動継続と従業員間の交流を目的としたツールです。

KIWI GOの導入で従業員同士の親交を深めつつ、健康も維持できるため、テレワーク下の健康とコミュニケーションに課題を感じている企業は、ぜひ検討してください。