働き方改革とは、日本の労働者が自身の望む働き方を選択できるような取り組みを行うことです。

働き方改革は政府主導で進められており、すでに取り組みを行っている企業は少なくありません。

しかし、どのような施策が効果的なのか、よくわからないとお悩みの企業もあるでしょう。

そこでこの記事では、働き方改革につながる具体的なアイデアと他社事例をご紹介します。この記事を参考にして、自社に適したアイデアを取り入れてください。

 

働き方改革とは?

厚生労働省によると、働き方改革とは、個々の事情に応じ、多様な働き方を選択できる社会を実現し、働く方一人ひとりがより良い将来の展望を持てるようにすることと定義されています。

 

参考:厚生労働省 「働き方改革」の実現に向けて

 

日本は少子高齢化による労働人口の減少に直面しており、さまざまな事情を抱える労働者が元気に働ける環境の実現が求められています。

働き方改革は政府主導の取り組みではありますが、事業発展のため各企業が高い意識を持って労働環境の見直しを行うことが重要です。

働き方改革に取り組めば職場の雰囲気も活発になるため、従業員だけではなく企業にとっても働き方改革の推進はメリットになります。

今後、人口減少が進むにつれ働き方改革はさらに注目されるようになります。従業員が健康に生き生きと働ける職場を作るため、積極的な取り組みを行ってください。

 

働き方改革関連法施行で必要になる対応

働き方改革関連法とは、働き方改革を進めるために整備された法律です。

働き方改革関連法では、主に「労働時間法制の見直し」と「雇用形態に関わらない公正な待遇の確保」が定められています。

ここからは働き方改革関連法の施行で企業に求められる対応について、解説します。

 

残業時間の上限規制

これまで法律上では残業時間の上限がなく、行き過ぎた残業時間が発生している業者に対しては行政指導のみの対応でした。

しかし2019年4月1日に働き方改革関連法が順次施行された後は、法律で残業時間の上限が月45時間・年360時間と定められています。

ただし、適用が猶予・除外される事業、業務もあります。

自動車運転の業務や、建設業務などは、上限規制の適用が改正後5年後まで猶予されます。また、新技術の研究開発業務については、時間外労働の上限規制が発生しません。

しかし特例による場合であっても、できる限り残業時間を上限までに抑える努力が求められます。

参照:働き方改革|残業時間の上限撤廃について

 

「勤務間インターバル」制度の導入

「勤務間インターバル」とは、1日の勤務終了後、翌日の出社までの間に、一定時間以上の休息時間(インターバル)を確保する仕組みです。

例えば、23時まで残業を行い、退勤をした際は始業時間を10時に後ろ倒しにするなど、11時間の休息時間を確保するための取り組みが必要になります。

 

年次有給休暇取得の義務付け

世界16地域の有給取得状況を比較したデータによると、日本の有給休暇取得率は60%なのに対しカナダやドイツは約90%であり、日本は有給休暇取得率が低いと読み取れます。

こうした状況を改善するため、働き方改革関連法では最低でも年5日の有給休暇取得が必要となりました。

義務化の対象となるのは、年に10日以上の有給休暇が付与されている従業員です。大企業や中小企業等の規模に関わらず、全ての法人が該当します。

また、パートやアルバイトなど非正規雇用の従業員についても、年次有給休暇の取得が義務づけられました。

ただし入社後どのくらい月日が経っているかによって付与日数が異なるため、注意してください。

参照:世界16地域 有給休暇・国際比較調査 2021 エクスペディア調べ

参照:厚生労働省|年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説

 

割増賃金率の引き上げ

月60時間を超える残業について、割増賃金率の引き上げも行われました。

これまで、月60時間を超える残業に対する割増賃金率は、大企業50%、中小企業25%と乖離していました。

しかし、今後の割増賃金率は一律50%となり、中小企業の割増賃金は引き上げとなりました。

月60時間を超える時間外労働を深夜22:00から5:00の時間帯に行わせる場合、深夜割増賃金率25%と時間外労働割増賃金率50%を足した75%が従業員に支払われることになります。

参照:厚生労働省 月60時間を超える時間外労働の割増賃金率について

 

「高度プロフェッショナル制度」の新設

「高度プロフェッショナル制度」とは、高度な技術を持った人材に対しては、労働基準法に定められた労働時間、休憩、休⽇及び深夜の割増賃⾦に関する規定を適⽤しないと定めた制度です。

高度プロフェッショナル制度により、時間ではなく成果で高度な能力を持った人材を評価できるようになるため、高度人材それぞれに適した働き方が実現されやすくなります。

 

ただし、高度プロフェッショナル制度により割増賃金なしで高度人材を長時間働かせることはできません。

高度プロフェッショナル制度の適用においては、年間104⽇以上の休⽇を確保し健康管理時間の状況に応じた健康・福祉確保措置等を講ずることが条件です。

また、労働者本人の同意も必要になります。

 

高度プロフェッショナル制度の対象となるのは、年収が「基準年間平均給与額の3倍を相当程度上回る水準」となる1075万円以上の労働者のみです。

また、制度には対象業務も定められています。対象の業務があるかどうか、厚生労働省のページで確認してください。

参照:厚生労働省 高度プロフェッショナル制度 わかりやすい解説 

参照:厚生労働省 働き方改革~一億総活躍社会の実現に向けて~

 

働き方改革が注目される背景

日本の人口は年々減少しており、2065年には総人口が9,000万人を割り込み、高齢化率は38%台の水準になると推計されています。

出典:国立社会保障・人口問題研究所 日本の将来推計人口(平成29年推計)

 

また、日本では、出産・育児を機に労働市場から撤退する女性が多く、子育て期の女性において、就業率と潜在的な労働力率の差が見られます。

一方、働く環境が整っているアメリカやスウェーデン等の欧米先進諸国においては、子育て期における就業率の大幅な低下は見られません。

微減していつつも、日本のように30~34歳で急激に下がっている傾向がないことから、子育て期でも就業を続ける人が一定いると読み取れます。

日本が置かれている社会課題に対応するには、企業改革による生産性向上が必要です。

育児中の保護者、介護をしつつ就業する従業員、外国人労働者など、日本にはさまざま事情を抱えた人材がいます。

そのような個々人の事情に応じ、多様な働き方を選択できる制度や環境を企業が整えれば、労働力の確保に繋がります。

出典:厚生労働省(参考資料)働き方改革の背景

 

 

働き方改革により得られるメリット

働き方改革に取り組むことで、従業員だけではなく、企業、社会にもメリットが伝播します。

ここからは、働き方改革に取り組むメリットを具体的に紹介します。

 

従業員の健康を保てる

働き方の見直しをしなければ従業員の長時間労働が発生し、過酷な労働環境による健康被害のリスクが高まってしまう可能性がありました。

ストレス負荷が大きい環境だと、生活が不規則になりメンタルヘルスの問題や心不全、生活習慣病などあらゆるリスクが発生します。

しかし就業環境が整いプライベートの時間をしっかり確保できるようになれば、従業員も健康を維持しやすくなります。

従業員が健康だと職場の雰囲気も良くなり、さらに働きやすい環境が生まれます。

 

求職者へのアピールにつながる

フレックス制度を取り入れる、自由に就業場所を選択できるようにするなどの取り組みを行えば、従業員だけでなく求職者を惹きつけることが可能です。

ワークライフバランスや福利厚生に強い関心を寄せている求職者は多く、働きやすい環境を整えることは効果的なアピールになります。

また、求職者だけでなく、社会への企業ブランディングにもつなげることができます。

 

生産性向上が期待できる

働きやすい環境を整えることで従業員のモチベーションが上がれば、従業員が意欲的に仕事に取り組むようになり、生産性もアップします。

また、残業時間の規制により労働時間を減らしつつこれまでの仕事をこなすことが求められるため、経営陣・従業員が積極的に業務効率化を行うようになるでしょう。

ただし、従業員の労働時間を減らすだけでは生産性低下につながる恐れがあります。働き方改革の取り組みを行う際は、業務のやり方そのものを見直す必要があります。

 

働き方改革のアイデアを出す際のポイント

ここからは、自社に合った働き方改革のアイデアを出すために必要なポイントを紹介します。

 

現場で働く従業員の声を聞く

働き方改革に関連するアイデアを自社に取り入れようと上層部が動いても、現場とのすれ違いが起きるかもしれません。

例えば定時で帰宅をするように現場に促しても、業務量が多く帰れない、と反発が起きる可能性があります。

意識や心掛けのみでは現場が疲弊してしまうため、働き方改革の推進で何が問題なのかヒアリングすることがポイントです。

まずは現場の意見を集め、把握した課題に対して寄り添いながら、自社のリソースで何ができるのか考えることが重要です。

 

運用のしやすさを考慮に入れる

定時退勤日を導入したとしても、業務や仕事の状況によっては定時退社が難しい場合も少なくありません。

また、業務効率化のシステムを導入しても、新しいツールの使い方を覚えるのが手間になり従業員に利用されない可能性があります。

働き方改革のアイデアを出すうえでは、実際に運用がしやすい制度かどうかも考慮に入れるべきです。

新しい制度やシステムは一旦小規模なチーム内でのみ導入し、どのような利用状況になるか確認するのがおすすめです。

 

アイデアの否定はなるべく避ける

従業員からのアイデアは、日頃から業務に携わり、現場を知っているからこそ出てくる大切なものです。

どのようなアイデアであっても、上層部から一概に否定するのは避けましょう。

従業員が出したアイデアから、自社の課題を紐解くこともできます。自社に合った効果的な施策を立案するためにも従業員の声を積極的に取り入れてください。

 

働き方改革を実践するためのアイデア10選

ここでは、いくつかの切り口から働き方改革につながるアイデアを紹介します。

 

不要な業務を削減する

既存の業務を効率化するため、不要な業務を削減するポイントをご紹介します。

 

会議時間を短縮

会議を行う際はあらかじめアジェンダを用意し、話す内容をシンプルにまとめましょう。

また、会議の終了時刻を決める、会議終了時にネクストアクションを決めるといった取り組みも有効です。

 

事務処理業務の効率化

事務処理が属人化していると、休暇が取りにくくなってしまいます。他の従業員でも業務をこなせるよう、マニュアルを作成してください。

また、やり直し作業が発生しないようチェックリストを作成することも有効です。

 

ITツールの導入

手作業で行っていた業務については、ITを取り入れシステム化すると効果的です。

また、どの仕事に何時間かかっているか可視化できるツールを取り入れることで、業務の無駄が把握できるようになります。

 

多様な休暇制度を取り入れる

働きやすい環境を整えるには、休暇制度が重要です。

 

全社休暇日の設定

繁忙期・閑散期のスケジュールが読みやすい場合、全社休暇日の導入がおすすめです。

一斉に休める日が制定されれば従業員のリフレッシュにつながり、モチベーション高く業務に臨むことができます。

 

夏季休暇制度の導入

夏季休暇を企業側で一方的に定めるのではなく、この期間のなかで5日間取る、などある程度休暇日を自由に選択できるよう定めることも有効です。

都合に合わせた各休暇の設定は従業員の尊重につながるため、満足感にもつながります。

 

年次有給休暇取得の推奨

有給休暇が取得しやすい日を従業員と共有すれば、有給取得への抵抗感が薄れます。

また、従業員は休みを念頭において仕事を進めるようになるため、さらに休暇が取りやすくなります。

 

新しい働き方を導入する

働き方改革では、多種多様な雇用制度に沿った制度作りも重要です。

 

フレックス制度の導入

フレックス制度を導入すれば、従業員が好きな時間に出退勤できます。

子どもの送り迎えや介護など多様な理由で利用できるため、育児や家事、介護と仕事の両立がしやすくなります。

 

子連れ出勤の導入

子連れ出勤をした従業員に対し、オフィス近くの保育園が利用できる制度を整えれば子育て中の従業員も活躍しやすくなります。

また、オフィス内に子供が遊べる場所を作れば、保育園を利用しなくても安心して勤務を続けることが可能です。

 

テレワーク制度の導入

オフィス以外での勤務が可能になれば、従業員のライフスタイルに合わせてさまざまな働き方が実現できます。

通勤時間の短縮にもつながるため、感染症予防にも役立ちます。

 

働き方改革の企業事例4選

ここからは具体的に各企業がどのような取り組みを行っているか、紹介します。

 

日プレ株式会社

参照:日プレ株式会社

日プレ株式会社は、IT活用や機械による自動化で業務効率化を行い、従業員の有休取得についても成果を出した企業です。

日プレ株式会社では、事業の都合上メーカーの開発サイクルに合わせ受注の状況が変化します。

そのため時期によって出勤日数・労働時間に波があり、働き方の不安定から離職者が生まれていました。

 

そこで日プレ株式会社は、従業員が確実に有給休暇を取得できるよう環境を改善。急な休みにも対応できるよう、多能工化に取り組みました。

担当する作業や機械のローテーションを行うことでスキルの属人化を防ぎ、作業を誰かが代理できる状況を作ったのです。

多能効果により従業員のスキルも多角的に向上し、意見やアイデアが出やすくなりました。また、従業員間のコミュニケーションも活発になり、組織の活性化に繋がりました。

参照:日プレ株式会社 IT活用や機械による自動化で業務効率化 従業員の主体性を育み、有休取得にも成果

 

鹿児島製茶株式会社

参照:鹿児島製茶株式会社

鹿児島製茶株式会社は、キャリアも私生活も守るため、働き方に関する制度改革を行った企業です。

同社では1年単位の変形労働制を採用していますが、繁忙期には休みが不規則になり、過度な連勤が続いてしまうケースが多くありました。

不安定な働き方から離職をする従業員もいましたが、ワーク・ライフ・バランスに注目。働き方を見直し休暇を取れる体制作りに着手しました。

鹿児島製茶株式会社は、最大5日間の連休が取得できる「リフレッシュ休暇」制度と、季節ごと半年に2日間、休暇を取得できる「シーズン休暇」をスタートさせました。

すると、年次有給休暇の取得が促進され、43%だった有給取得率が62%にアップしました。

女性の育児休業取得率は100%に達しており、幅広い取り組みが社外からも評価されています。

参照:鹿児島製茶株式会社 キャリアも私生活も守る”制度改革で、定着率をアップ

 

株式会社UZABASE

出典:株式会社UZABASE

株式会社UZABASEは、働く時間を自分で決めるスーパーフレックス制度を導入しています。

スーパーフレックス制度とは、企業ごとに定められている月間総労働時間を満たせば、出退勤時間を自由に設定できる制度です。

結果さえ出せば、従業員がいつ・どこで仕事をしていても問題ありません。事前申請や書類提出は必要ないため、従業員は望む働き方を実現できます。

時間や場所にとらわれず自分らしい働き方ができるスーパーフレックス制度は、仕事とプライベートの両立に役立っています。

他にも、株式会社UZABASEでは7日間の連続した休暇を年2回取得できる「ロングバケーション制度」、育児や介護がある従業員以外も取得できる「時短制度」などさまざまな制度を導入してきました。

自由な働き方をサポートする制度を取り入れることで、従業員の自主性を大切にする姿勢を示しています。

参照:株式会社UZABASE 募集要項 働き方をデザインするためのベース

 

株式会社アクシア

出典:株式会社アクシア

株式会社アクシアは、完全在宅制度を整えるため、徹底したペーパーレス化を目指しました。

同社では紙を印刷したり印鑑を押したりするため、在宅勤務が導入されても結局は出社が必要になることが問題視されていました。

状況を改善するため、株式会社アクシアは請求書や契約書処理を電子化することでペーパーレス化を行い、完全在宅勤務の実現を行いました。

完全在宅に移行したことでオフィスも廃止。賃料が無くなったことで余裕ができたため、従業員の給与アップに繋げています。

株式会社アクシアの取り組みは他団体にも評価されており、2017年にはホワイト企業アワードの労働時間削減部門で大賞を受賞しています。

参照:株式会社アクシア|オフィスを廃止して変わった5つのこと

参照:株式会社アクシア|ブラックIT企業がホワイト企業アワードを受賞するまで

 

まとめ:多様なアイデアを取り入れ働き方改革を進めよう

働き方改革に関する取り組みを行えば、従業員だけでなく企業や社会にも多様なメリットが発生します。

現場の声を大切にしながら、働き方改革につながるアイデアを積極的に出してください。自社に適した取り組みを進め、従業員がより働きやすい環境を作ることが重要です。

従業員が生き生きと働ける環境には、健康が不可欠です。

自由な働き方につながる充実した制度があっても、不健康な状態では従業員が十分な力を発揮できません。

 

従業員の健康を支える福利厚生アプリ「KIWI GO」は、行動科学に基づき従業員の運動継続をサポートする機能を備えています。

従業員同士の交流機能もあるため、従業員の運動不足、コミュニケーション不足にお悩みの企業はぜひ検討してください。