昨今、ウェルビーイングが多くの企業で重要視されています。
すでにウェルビーイングに注目しているという場合でも、適切な測定ができているか確認することが大切です。より自社のウェルビーイングを向上させるため、継続的に適切な測定と改善を繰り返しましょう。
本記事では、具体的なウェルビーイングの測定方法からウェルビーイング向上の方法を解説します。
従業員が幸福に働ける環境のため、自社に合った測定方法で取り組みの効果を高めてください。
目次
ウェルビーイングとは
ウェルビーイングとは広い意味で示すと、身体・精神・社会との関わりが持続的に良好で健康を感じられる状態のことです。
身体的な健康だけでなく精神的な幸福、社会的な幸福も重要視されることから、より包括的な取り組みが必要です。
ウェルビーイングの意味について詳しくは次の記事でも解説しているので、ぜひ参考にしてください。
あわせて読みたい:ウェルビーイングとは?経営における重要キーワードの意味と対策を解説
ウェルビーイングが注目されている理由
ウェルビーイングは時代のニーズの変化により、注目されるようになりました。
現在は多様性やSDGsなどが話題になっており、働き方を見直す企業が増えています。
また社会や世界全体が環境問題や貧困などに注目しており、働き方以外でも世界全体で幸福についての関心が高まっている状態です。
日本では厚生労働省を中心として、ワークライフバランスや個人の生活の多様性を重視する流れが作られています。
またダボス会議やWEFでは生産性重視の仕組み自体を見直す動きがでており、物質面から精神面への転換は今後も進むと考えられます。
参考:WEF世界経済フォーラム
企業におけるウェルビーイングの重要性
企業において、ウェルビーイングに関する取り組みが重要な理由は次のとおりです。
- 定年退職の年齢延長
- 感染症の流行
- 労働人口の減少
現在は労働人口減少に伴い、定年退職の年齢が延長されています。
長く健康で働くためには適切な職場環境がより重要となるため、心身の幸福や健康を重視するウェルビーイングの考え方は必須です。
また昨今の新型コロナウイルス流行により、個人の幸福や健康に関心が集まりウェルビーイングの概念が一般の方にまで深く浸透しました。
精神的にも身体的にも幸福であるような職場環境を作ることで、人材の流出も予防できます。
経済産業省のデータによると、就活生や親が就職先を選ぶ際には従業員の働き方や健康が重視されていると明らかになりました。
ウェルビーイングを重視した取り組みで人材をしっかりと確保することは、企業の発展にも必須です。
ウェルビーイングにおいては一時的な幸福ではなく、持続的な幸福が重要です。
従業員が長く健康に勤められるよう、長く継続して取り組みと測定を繰り返してください。
ウェルビーイング測定に役立つ指標
ウェルビーイングにつながる効果的な施策を導入するには、現状の正しい評価が必要です。
ここからはウェルビーイングの測定に関わる指標を紹介するため、何を基準としてウェルビーイングを測るか悩んでいる方は参考にしてください。
ポジティブ心理学における5つの指標
ポジティブ心理学とは、ペンシルバニア大学のマーティン・セリグマン教授が提唱している学問です。
ウェルビーイングの指標として多く取り入れられており、アンケート調査などを実施する際に有効とされています。
ポジティブ心理学における5つの指標は、次のとおりです。
- ポジティブな感情
- 没入・没頭
- ポジティブな人間関係
- 意味
- 成功・達成感
上記5つの心理が満たされると、人は幸福を感じます。
従業員が上記の心理を満たした状態となっているか、意識してチェックしてください。
ポジティブな感情(positiveemotion)
愛・喜び・笑い・感謝といったポジティブな感情は幸福な生活において重要です。
ここで得られるポジティブな感情は、単純に睡眠や食事などで得るものではなく、目標を達成した時のような充実感のことを指します。
また悲しみや悔しさなどのネガティブな感情も、その後の前向きな行動力につながる場合はポジティブな感情として捉えます。
没入・没頭(engagement)
物事に没頭して取り組んでいるときには、ネガティブな感情は生まれにくいとされます。
前向きに没頭できる時間があれば、幸福感を維持できます。
ポジティブな人間関係(positiverelationship)
家族や友人、職場の同僚や上司などと信頼関係を築けているかどうかは、楽しい毎日を送るうえで重要です。
ポジティブ心理学では、愛情を感じられるようなポジティブな関係が構築できているか、親しい人と関わりを持てているかどうかを評価します。
意味(meaning)
人生の意味を自覚しているかどうかは、幸福度に大きく関連します。
自分の人生において何が大切で何が優先されるべきなのかを理解していれば、前向きに行動できます。
また仕事において自分の役割を認識していればモチベーションを高く保てるようになり、幸福度は高くなります。
成功・達成感(achievementまたはaccomplishment)
成功体験が積み重なると達成感につながり、幸福度が上がります。
価値のある目標を持って取り組み、達成することで、さらに前向きに活動するエネルギーが生まれます。
国連による「世界幸福度ランキング」指標
国連による「世界幸福度ランキング」は、国レベルでウェルビーイングの状況を知るのに役立ちます。
世界幸福度ランキングはギャラップ社の基準をもとに算定されており、Web上で誰でもランキングを確認できます。
ギャラップ社が定義するウェルビーイング5つの要素については次の記事で詳しく解説しているため、合わせてチェックしてください。
あわせて読みたい:ウェルビーイングを構成する5つの要素とは?世界の動きと日本の現状
世界幸福度ランキングでは以下の要素をポイントで数値化し、総合的に幸福度を判断します。
- 国民性1人当たりのGDP
- 社会的サポートの享受
- 健康寿命の長さ
- 人生の自由度
- 寛容であるか
- 国内で汚職や政治の腐敗が生じているか
ここからは各項目を簡単に解説します。
国民1人当たりのGDP
まず国民1人当たりのGDP(国内総生産)をチェックし、国の経済的な幸福度を判断します。
GDPが高いと経済的に成長しており、物質的に豊かだと考えられます。
また生活が安定しているため、食べ物がない、寝るところがないといった理由でネガティブな感情を持つことが少ないと考えられます。
社会的サポートの享受
社会的サポートとは、困った時に頼れる人がいる環境です。
家族や友人などに助けを求められる状況であれば社会的な支援がしっかりあり、幸福度が高いと考えられます。
一方、社会的に取り残され、孤立している人がいると国全体の幸福度は下がります。
健康寿命の長さ
健康寿命が長いと、食料や衛生面で困ることがなく適切な医療を受けられる状態にあると考えられます。
平均寿命ではなく健康寿命に焦点を当て、病気などで生活が制限されず自分らしく生活できる期間を評価します。
人生の自由度
人生の自由度では、宗教や思想、社会的背景において選択肢が与えられているかどうかを評価します。
自由な選択肢が多ければ多いほど、自分らしい選択ができるため幸福度が高い状況といえます。
寛容であるか
寛容さとは、「気前の良さはあるか、他者への施しを行っているか」という点で行われる評価です。
欧米においては、他者への施しなどの慈善行為ができると本人の幸福度が高まるとされます。
実際の調査では、寄付の金額などを参考に数値として寛容さを算出します。
国内で汚職や政治の腐敗が生じているか
政治や国のトップが清廉潔白であれば、国民の幸福度は高くなるといえます。
国内の汚職や政治の腐敗については、国民にアンケートを行うことで数値化します。
OECDによる「より良い暮らし指標」
OECD(経済協力機構)の「よりよい暮らし指数」でも、ウェルビーイングを測定できます。
「よりよい暮らし指数」では、以下の2つの項目で指数を評価します。
- 物質的生活状況
- 生活の質
参考:内閣府 第2章 2.4.1 人口全体のウェル・ビーイング指標
自社のみでなく全国的にウェルビーイングの状況を知りたいときに確認してください。
物質的生活状況
物質的生活状況は、以下の3点により評価されます。
- 住宅
- 所得と富
- 雇用と収入
住宅については、衛生に関する項目や家にかかる経費、一人あたりの部屋数を具体的な指標とします。
所得と富は、家計収入と資産が指標です。
雇用と収入については、労働市場や就業率、長期的失業、所得で判断します。
物質的生活状況では、数値や目に見えるもので暮らしている人の幸福度をはかります。
生活の質
生活の質は、以下の項目で評価します。
- 環境の質
- 市民生活とガバナンス
- 健康状態
- 主観的幸福感
- 個人の安全
- 仕事と生活のバランス
市民生活とガバナンスについては、有権者に占める投票者数が指標です。
また主観的幸福感とは、生活全般について主観的にどのくらい幸福を感じているか評価した平均値です。
個人の安全では、夜間の安心感や殺人の発生率について調べ、治安の維持がどのくらいされているかを調査します。
このように生活の質については、主観的な評価も含めて数値だけでは表せない項目の調査を行います。
ウェルビーイングを簡単に測定するツール
ウェルビーイングに関する指標は複数あり、何を基準として測定すればよいのか迷う方は少なくありません。
自社で評価・測定の雛形を作るのが難しい場合、外部サービスの利用も検討しましょう。
ここからはおすすめの測定ツールを2種類紹介します。
MEASUREMENT幸福度計測
MEASUREMENT幸福度計測は、アンケートをするだけで回答者の幸福度がわかるサービスです。
アンケートはブラウザ上で実施するので手軽に行えます。
また、測定結果をもとにして、幸福度を向上させるためのガイドを確認できます。
それぞれの従業員の状況に合わせた改善策が提示されるので、適切なセルフケアの推進が可能です。
MEASUREMENT幸福度計測を定期的に利用すれば、幸福度の変化を追えるため長期的な利用がおすすめです。
参考:一般社団法人ウェルビーイングデザイン MEASUREMENT 幸福度計測
WELL-BEING CHECK Plus
WELL-BEING CHECK Plusも、アンケートによってウェルビーイング測定を行うサービスです。
アンケートは20分程度で実施できるため、業務に追われる従業員も回答しやすいといえます。
また、WELL-BEING CHECK Plusでは、アンケート回答者が何に幸福を求めるのかタイプ別に判断可能です。
どのような形で幸福を追求すればよいのかわかるため、従業員自身が自分の幸福についてより深く理解できます。
またカウンセリングやワークショップなどの改善プログラムも用意されており、測定から改善までをひとつのサービスで完結したい場合におすすめです。
指標をもとにしたアンケートの実施もおすすめ
自社独自で行うウェルビーイングの測定方法としては、従業員アンケートがおすすめです。
各ウェルビーイングの指標を踏まえて自社にあわせたアンケート作成をすることで、より具体的な改善点を発見できます。
アンケート作成のポイントは、私生活も含めた質問項目を作ることです。
仕事と私生活両方の観点から、現在の幸福度がどのくらいあるか可視化しましょう。
下記は富山県で暮らしている方を対象としたアンケートです。
自社なりにアレンジして、活用してみてください。
ウェルビーイング測定の結果の活かし方
ウェルビーイングを測定しただけでは、実際の取り組みにつながりません。測定の結果をもとに、具体的な行動に移してください。まずは幸福につながる要素のうち、達成できていないものを挙げます。
自社の課題を把握したら、ウェルビーイング向上のための具体的な取り組みを始めてください。
実際の取り組みの例は次のとおりです。
- 労働環境の改善
- 福利厚生の見直し・拡充
- コミュニケーション機会の確保
- 生活習慣を整えるためのサポート
より具体的な取り組みについては次の記事で紹介しているため、参考にしてください。
あわせて読みたい:WHOの定義から見たウェルビーイングとビジネスでの活用法を解説
そして自社に必要なものから、優先して少しずつ取り入れてください。取り組みを実施する際は、従業員の意識も重要です。目的と具体的な施策を従業員にしっかりと提示し、ウェルビーイングを重視する姿勢を見せてください。
改善策を講じたら、同じ指標をもとにしてウェルビーイング測定を定期的に行います。
中長期的に評価と改善を繰り返すことで、持続的な幸福が実現されます。
まとめ:ウェルビーイング実現のためには定期的な測定と改善を繰り返すことが大切
ウェルビーイングを構成する要素は多様であり、それぞれの特徴を捉えて包括的に測定を行うことが重要です。一定の基準で測定を継続し、中長期的な目線で改善を続けてください。
ウェルビーイング向上につながる効果的な取り組みには、運動の習慣化があります。
しかし運動をしようと周知するだけでは従業員に実行してもらえず、悩んでいる方は多いでしょう。
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運動を促進し、他者とのポジティブなつながりを増やすことでウェルビーイング向上に役立ててください。