近年、企業が従業員の健康や生きがいを支援する動きが強まっています。

肉体的な健康だけでなく、精神的な健康、社会的な健康を支えることは、企業として非常に重要です。

企業が継続的に成長するには、福利厚生を活用し従業員が健康に働ける環境づくりを促進する必要があります。

本記事では、従業員の健康を支える法定外福利厚生について、種類や導入のポイントを紹介します。

他社事例についても詳しく紹介するので、どのような法定外福利厚生を導入すべきか迷っている企業はぜひ参考にしてください。

 

福利厚生とは

福利厚生は給料や賞与以外で従業員に与える利益のことです。法律で定められている法定福利厚生と、法的義務のない法定外福利厚生があります。

福利厚生の主な目的は、以下の3項目です。

  • 従業員の生活の安定
  • 安心して働ける労働環境を整えること
  • 従業員とその家族の福祉向上

福利厚生は基本的に全従業員が対象であり、雇用形態によって差をつけてはいけません。

厚生労働省のパートタイム・有期雇用労働法にも下記のように明記されています。

『職務の内容、職務の内容・配置の変更の範囲(人材活用の仕組みや運用など)が通常の労働者と同一のパートタイム・有期雇用労働者については、パートタイム・有期雇用労働者であることを理由として、基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、差別的取扱いをしてはならない。』

引用:厚生労働省 パートタイム・有期雇用労働法の概要

福利厚生導入の際は、平等な待遇となっているか確認する必要があります。

 

法定外福利厚生とは

法定外福利厚生は企業が独自に設ける福利厚生のことです。法定福利厚生以外のものすべてを指しており、企業によって法定外福利厚生の内容はさまざまです。

ここでは、法定外福利厚生の種類や費用について解説します。

法定外福利厚生の種類

法定外福利厚生には、「財産形成、食事、健康管理、両立支援、休暇制度、自己啓発、慶弔災害、住宅、余暇活動、働き方、高齢者」の11カテゴリがあります。

具体的な施策は48種類あります。

出典:独立行政法人労働政策研究・研修機構 企業における福利厚生施策の実態に関する調査

現在はこれまで主流だった「財産形成、食事、住宅」以外に、「健康管理、休暇制度、働き方、両立支援、自己啓発」に力を入れる企業が増えています。

 

法定外福利厚生の費用

日本経済団体連合会が発表したデータによると、従業員1人当たり/月の法定外福利厚生費は、全産業平均で24,125円です

参考:一般社団法人日本経済団体連合会 第64回福利厚生費調査結果報告

法定外福利費の構成比率は住宅関連が最も多く、次いでライフサポート、医療・健康、文化・体育・レクリエーションとなっています。

出典:一般社団法人日本経済団体連合会 第64回福利厚生費調査結果報告(P10)

法定外福利厚生費の推移においては、次の項目が増加傾向です。

  • 医療・保健衛生施設運営
  • ヘルスケアサポート
  • 文化・体育・レクリエーションにおける活動への補助

調査から、健康維持や従業員同士の活動へのサポートを重要視する企業が増えているといえます。

 

法定外福利厚生の重要性

労働人口が低下する中、優秀な人材を獲得し定着させることが企業にとっての大きな課題です。

採用・定着に課題を感じる企業は多く、従業員の採用・確保について「困難」「やや困難」の回答は71.6%です。

さらに従業員の定着状況について「非常に問題視している」「やや問題視している」が57.3%です。

出典:独立行政法人労働政策研究・研修機構 企業における福利厚生施策の実態に関する調査

従業員においては、会社の福利厚生制度に満足している人ほど勤め続けたいと回答する割合が高いです。長く働く優秀な人材を確保するため、企業ごとに個性を出せる法定外福利厚生に力を入れることは非常に重要です。

 

法定外福利厚生の導入による効果

法定外福利厚生を導入すると従業員の意欲が上がり、生産性向上に期待できます。従業員の意欲が高まれば、会社全体に活気が出て企業のイメージも上がります。

イメージの良さは採用の面でも有利になり、優秀な人材確保につながるでしょう。

また健康に関連する法定外福利厚生を導入することで、従業員が生き生きと働けるようになります。

肉体的にも精神的にも元気な状態であれば、仕事のモチベーションも上がり病気による休職・退職も防げます。

 

法定外福利厚生の具体例と非課税の基準

福利厚生費は基本的に非課税です。しかし法定外福利厚生の場合、内容によっては課税対象となることもあります。

従業員全員が平等に受け取れるか、社会通念上妥当なものであるか確認したうえで制度を検討してください。ここでは、法定外福利厚生の具体例と非課税の基準について解説します。

 

住宅に関する福利厚生

家賃補助、社員寮の提供、社宅の提供、住宅ローン補助などが住宅に関する福利厚生です。

社宅を提供する場合、次の3つを合計額以上を従業員から毎月受け取ることが非課税の条件です。

(1)(その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×0.2パーセント

(2)12円×(その建物の総床面積(平方メートル)/3.3(平方メートル))

(3)(その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×0.22パーセント

参考:国税庁 No.2597 使用人に社宅や寮などを貸したとき

従業員に直接お金を渡す場合、住宅手当、住宅ローン補助といった名目であっても給与と見なされます。給与は課税対象となるため、他の方法で支援して欲しいと考える従業員は少なくありません。

 

食事に関する福利厚生

社員食堂の整備、お弁当の配送など、食に関する福利厚生を導入する企業も多くあります。

食事提供についての非課税基準は、次の2つを満たすことです。

(1)役員や使用人が食事の価額の半分以上を負担していること。

(2)次の金額が1か月当たり3,500円(消費税および地方消費税の額を除きます。)以下であること。

(食事の価額)-(役員や使用人が負担している金額)

現金の支給をする場合、夜勤勤務者に1食300円以下の現金を支給する場合を除き課税の対象となります。

参考:国税庁 No.2594 食事を支給したとき

 

健康管理に関する福利厚生

健康診断・人間ドックの実施、仮眠室の設置、カウンセラーの配属、ジム・スポーツ活動における各種補助などが健康に関する福利厚生です。

人間ドックに関しては、一定年齢以上の希望者が全員受診可能な状況であり、かつ企業が健診を受けたすべての従業員の費用負担をする場合には非課税です。

従業員の健康管理の必要性から、一般的な健康診断についても非課税とされています。

参考:国税庁 人間ドックの費用負担

参考:カフェテリアプランによる医療費等の補助を受けた場合

 

慶弔災害に関する福利厚生

結婚祝い金、出産祝い金、遺族年金、災害見舞、従業員や家族の死亡時弔慰金などは、慶弔災害に関する福利厚生です。

社内の行事に支出される下記のようなものは、福利厚生費として計上が可能です。

従業員、またはその親族等のお祝いやご不幸など際に、一定額支給される費用(結婚祝、出産祝、香典、病気見舞いなど)

創業記念などの記念品については、社会一般的に考えて記念品にふさわしく、1万円以下であることなどが条件です。

参考:国税庁 No.5261 交際費等と福利厚生費との区分

参考:国税庁 No.2591 創業記念品や永年勤続表彰記念品の支給をしたとき

 

自己啓発に関する福利厚生

資格取得支援、eラーニングや通信教育の提供および補助、海外研修・経験制度などが自己啓発に関する福利厚生です。

仕事に関係のある技術や知識を習得する費用は、適正なものであれば非課税として認められます。

参考:国税庁 No.2601 職務に必要な技術などを習得する費用を支出したとき

 

余暇活動に関する福利厚生

各種サークル活動の補助、運動施設利用の割引・補助、保養施設利用の割引・補助、社員旅行などは余暇活動に関連する福利厚生に分類されます。社員旅行に関して、非課税の基準は以下の通りです。

1.旅行期間が4泊5日以内である(海外旅行の場合には、外国での滞在日数が4泊5日以内)

2.参加人数が全体の50%以上

3.自己都合で参加しなかった人へ現金支給をしない

4.対象が役員だけではない

5.取引先に対する接待が目的ではない

保養所などについては従業員の保養を目的とする場合を除き、業務用施設として扱われます。業務用施設は課税対象となるため、研修所や会議室を兼ねている施設は注意が必要です。

参考:国税庁 No.2603 従業員レクリエーション旅行や研修旅行

参考:八王子市 資産割について(非課税)

 

人気のある法定外福利厚生

企業において、福利厚生制度で取り入れている割合の高いものは下記の5つです。

  • 慶弔休暇制度
  • 慶弔見舞金制度
  • 病気休職制度
  • 永年勤続表彰
  • 人間ドッグ受診の補助

対して、従業員が必要性が高いと感じている福利厚生制度は下記5つです。

  • 人間ドッグ受診の補助
  • 慶弔休暇制度
  • 家賃補助や住宅手当の支給
  • 病気休暇制度
  • 病気休職制度

参考:独立行政法人労働政策研究・研修機構 企業における福利厚生施策の実態に関する調査

健康管理や休暇に関して、充実した制度を必要としている従業員は多いといえますまたユニークな法定外福利厚生として、次のような施策を取り入れる企業もあります。

  • 遠方への親の介護における費用を負担する、親孝行支援制度(大和ハウス工業株式会社)
  • 帰省時の費用を負担する、ゴーホーム制度(Chatwork株式会社)

その他、温泉旅館内にサテライトオフィスを設置する「温泉オフィス」や、休暇中のテレワークを許可し有給休暇の取得を促進する「福利厚生型ワーケーション」などもあります。

従業員のニーズを踏まえ、自社のカルチャーや理念に沿う制度を導入してください。

 

法定外福利厚生の導入におけるポイント

整備が必須の法定福利厚生と異なり、法定外福利厚生の自由度は高いです。そのため制度内容や導入方法について、どう決めていけばよいか迷う企業は少なくありません。

ここからは、法定外福利厚生の導入における4つのポイントを紹介します。

1.従業員のニーズを把握すること

ニーズのない福利厚生では従業員も活用できず、効果が薄くなります。アンケートを行い、従業員の希望をもとに導入を検討してください。

またメンタルヘルス不調が増えた、離職率が高い、若年層の転職が多いなどの課題を把握し、状況に適した施策を見つけることが重要です。

ストレスチェックの効果的な実施方法については、こちらを参考にしてください。

あわせて読みたい:ストレスチェックの目的は?実施による効果アップの秘訣も解説!

 

2.適切な費用設定を行うこと

法定外福利厚生を導入する際には、導入費用だけでなく運営費用についても検討し、適切な範囲におさめてください。

人的・時間的なコストや、施設の整備コストなども含めて計画を立てることが重要です。また従業員から一定の金額を受け取ることで非課税となる制度もあります。

従業員からいくらもらうのが適切なのか、税理士も含めて話し合ってください。

 

3.公平性を保つこと

全従業員に利用の機会が与えられることは、法定外福利厚生において欠かせない条件です。役職や雇用形態に関係なく、平等に利用できるものを検討してください。

ただし家庭の状況や好みによって、利用率に偏りが出る可能性もあります。なるべく差が出ないよう、利用率をチェックしながら適宜対策していくことも重要です。

 

4.定期的な見直しを行うこと

従業員のニーズはライフステージの変化などによって変わります。ニーズを適宜把握し、定期的な見直しを行ってください。

法定外福利厚生は、導入してすぐに効果が出るものではありません。

従業員や組織の変化に伴い、長期的な目線で柔軟に対応することが大切です。

 

法定外福利厚生の導入方法

法定外福利厚生を効果的に運用するには、アウトソーシングを含めて導入方法を総合的に検討する必要があります。

 

自社導入とアウトソーシングの違い

法定外福利厚生には、自社のみでも導入できるものとそうでないものがあります。

住宅手当、家賃補助、交通費、家族手当の支給など金銭的補助は自社のみで導入できますが、設備の購入や整備が必要な場合はアウトソーシングも検討してください

福利厚生の外部サービスを利用することで、満足度の高い福利厚生を手軽に導入できます。また福利厚生の導入を専門家に頼むことで、手続きや運用も効率よく進められます。

 

アウトソーシングの種類

ここからは福利厚生におけるアウトソーシングの種類について、2つ紹介します。

パッケージプラン

パッケージプランは、利用料を支払うことであらかじめセットされた福利厚生制度を導入できるプランです。手軽に始められて運営も簡単ですが、内容のカスタマイズが難しく不要な制度まで取り入れてしまう恐れもあります。

 

カフェテリアプラン

カフェテリアプランとは、ポイントに応じて従業員が自由に福利厚生制度を選択できるプランです。

カフェテリアプランなら個人の好みを尊重できますが、ポイントを使いきれず制度を活かせない従業員が出てくる可能性もあります。またカフェテリアプランを導入している企業のうち、8割は大企業です。

人数の少ない中小企業ではスケールメリットを活かしにくく、コスト面の負担が大きくなる恐れもあります。

参考一般社団法人日本経済団体連合会 第64回福利厚生費調査結果報告

 

独自の福利厚生を導入するメリット

法定外福利厚生の導入は企業の任意であるため、他社との差別化につながります。

他社との制度面での違いが求職者へのアピールポイントとなり、意欲の高い人材の確保につながります。また自社の従業員に適した独自の制度を用意することで、働きやすい環境を効率的に作れます。

パフォーマンス向上にも期待できるため、独自の福利厚生を充実させることは企業の成長にもつながるといえます。

 

独自の法定外福利厚生の事例

ここでは、参考として独自の法定福利厚生を取り入れている企業の事例を3つ紹介します。

 

GMOインターネットグループ株式会社

出典:GMOインターネットグループ株式会社

GMOインターネットグループ株式会社では、健康で活動的な生活をさまざまなプログラムで支援しています。

お昼寝スペースを完備して食後の昼寝を推奨する、リラクゼーションルームを設置するなどして、疲れを癒せる環境を整えています。

運動については、下記のような取り組みを実施しています。

  • 無料で利用できるフィットネスジム「GMO OLYMPIA」をオフィス内に設置
  • スポーツクラブへの入会金の補助
  • 健康推進と親睦を深めるイベントの開催費用を補助

GMO OLYMPIAについては今後も定期的に利用したいと評価している従業員も多く、運動意識の向上につながっています。

また産業医による面談の機会を月に4回以上設けており、病気の予防やメンタルケアにも力を入れています。

参考:GMOインターネットグループ株式会社 健康支援

参考:GMOインターネットグループ株式会社 GMOインターネットグループ、完全無料のフィットネスジム「GMO OLYMPIAオリンピア」を第2本社(渋谷フクラス)オフィス内にオープン

 

サイボウズ株式会社

出典:サイボウズ株式会社

サイボウズ株式会社では従業員のニーズを捉えながら柔軟な働き方を取り入れることで、離職率を28%から3~5%程度に抑えることに成功しました。

多様な働き方を実現するための制度の一つは、「働き方宣言制度」です。

「働き方宣言制度」ではライフステージに合わせて働き方を宣言できるため、個人の事情に合わせて、勤務時間や勤務場所を選べます。

また社内コミュニケーション活性化のため、お世話になった人に感謝を伝えるイベント「サイボウズオブザイヤー」も実施しています。

部活動やイベントに対しても積極的に補助金を出しており、社内コミュニケーションの活性化に取り組んでいます。

参考:サイボウズ株式会社 ワークスタイル

 

株式会社はてな

出典:株式会社はてな

在宅勤務とオフィスワークを柔軟に選択できる株式会社はてなでは、約9割の従業員が在宅勤務を行っています。

毎週金曜日には全従業員が参加できるイベントを開催するなどして、在宅勤務を推奨しつつも従業員同士の交流機会を確保しています。

健康と運動に関しては、次の取り組みで自転車通勤を推奨しています。

  • 自転車通勤者に対し、一律毎月2万円の自転車通勤手当を支給
  • 駐輪場の整備
  • ミストサウナ付きバスルームの導入

毎朝すがすがしく通勤できると評価する従業員の声もあり、満足度の向上につながっています。

参考:株式会社はてな ENVIRONMENT 働く環境

参考:はてな広報ブログ 自転車通勤を促進するはてなの取り組みを紹介します 〜雑誌『Forza Vita』(技術評論社)掲載記事より転載〜

 

まとめ:法定外福利厚生の充実により従業員の健康と意欲が高まる

法定外福利厚生の整備により従業員の意欲を高めることは、非常に重要です。従業員の満足度が高まれば定着率向上につながり、採用課題の解決にも期待できます。

まずは従業員のニーズを把握し、自社に合った施策を見つけてください。

従業員の健康に課題意識を持っているなら、楽しく気軽に導入できるツールで運動習慣を促すのがおすすめです。

福利厚生アプリ「KIWI GO」ならアプリを入れるだけで簡単に始められるうえ、歩数に応じて貯まるコインはごほうびと交換できるため楽しんで運動を継続できます。

イベント開催も簡単にできるため、運動習慣の構築に対して前向きな気持ちを持てるでしょう。従業員の健康を維持・増進することで、満足度を高めてください。