昨今、うつ病やパニック障害などの精神疾患患者は増加しており、職場でのメンタルヘルスケアが重要視されています。
しかしどのようにメンタルヘルスケアを進めればよいかわからない、とお悩みの企業は多いでしょう。
メンタルヘルスケアは、予防の段階から始めることが重要です。またメンタルヘルス不調者が出た場合、休職や離職を防ぐため他の従業員や組織のトップが適切な対応を取ることも大切です。
本記事では予防から職場復帰までの一連のメンタルヘルスケアについて、詳しく解説しています。
自社の環境改善に役立ててください。
目次
職場におけるメンタルヘルスとは
メンタルヘルスケアとは、心の健康状態を維持する取り組みのことです。ここからは職場におけるメンタルヘルスの基本情報について、紹介します。
メンタルヘルスとは
メンタルヘルスとは、「こころの健康状態」のことです。こころが穏やかでやる気が湧いてくるような状態なら、こころが健康だといえます。
逆に気分の落ち込みが続くと、こころの健康が崩れてしまいメンタルヘルス不調の状態となります。
従業員のこころの健康づくりを企業全体の問題として対策することが、企業におけるメンタルヘルスケアです。
メンタルヘルスケアとは、「すべての働く人が健やかに生き生きと働けるような気配りと援助をすること、およびそのような活動が円滑に実践されるような仕組みを作り、実践すること」です。
引用:厚生労働省ポータルサイト こころの耳 3 メンタルヘルスケアとその実践の意義
ここで大切なことは、すべての働く人が対象とされる点です。どのような状況の従業員に対しても、企業側はケアしなければいけません。
従業員のメンタルが健康になり意欲的に仕事に取り組めれば、会社も活性化し生き生きとした職場を作れます。
メンタルヘルス不調の現状
メンタルヘルス不調の従業員が増えると、従業員の休職や退職が増え業務に支障が出てしまいます。
厚生労働省の調査によると、メンタルヘルス不調で1か月以上休職をした従業員がいる事業所は、全体の約10%です。
精神疾患になると労働災害と認定され、安全配慮義務違反になる可能性もあるため、会社としてのダメージは大きいです。
従業員にとっても企業にとっても、メンタルヘルスケアの実践は非常に重要です。
メンタルヘルスケア3つの段階
メンタルヘルスケアは全従業員を対象にしているため、取りこぼさない包括的なケアが不可欠です。
こころの健康を維持するため、3段階で予防のポイントを紹介します。
一次予防
健康状態の維持や増進を目的として、メンタルが健康な従業員に行うのが一次予防です。
従業員は自身の、組織のトップは部下や従業員のメンタルヘルスに注目し、よい状態が維持できているか日頃から観察します。
健康な状態だと、なかなかメンタルの状態を意識するのは難しいです。
ストレスチェックなどを用いて、ストレスの状況を数値化してください。
二次予防
二次予防は、すでに精神疾患の発症が疑わしい、もしくはハイリスクな従業員に対して行うケアです。
メンタルヘルス不調の早期発見と重症化予防を目的としています。
不調に気づいた際、産業医との面談をすぐに実施できる環境を用意してください。
従業員自身で認識できる不調の例は次のとおりです。
- 倦怠感などの身体症状
- 人に会いたくないなどの意欲低下
- 不眠・不安・抑うつなどの精神症状
周囲(家族や同僚・上司など)が気づける不調の例は次のとおりです。
- なんとなく元気がない
- 簡単なミスが増えた
- 遅刻や欠勤が増えた
- 以前と雰囲気が違う
周囲の人たちが小さな変化を放置していると、メンタルヘルス不調は悪化します。
少しでも違和感があれば、相談窓口や産業医につなげて支援することが大切です。
三次予防
三次予防とは、実際に精神疾患を発症してしまった従業員に対して行います。合併症や重症化の予防に加え、治癒した場合は再発予防が目的です。
三次予防では、主治医や家族など社外の人との関わりも含めた対策が重要です。主治医を中心として状況を評価し、足並みを揃えたケアを行ってください。
企業としては職場復帰する際の環境整備、就業する上での配慮を検討しましょう。
しかしシステム上の機械的な変更のみでは、ケアとして不十分です。
職場内ではメンタルヘルス不調を抱えた従業員に対して、次のような意識で関わる必要があります。
- 暖かく迎え入れる
- 余裕を持って見守る
- 相談できる信頼関係を構築する
精神疾患の有無に関わらず、暖かい雰囲気や相談できる環境などは全従業員の働きやすさにも関わります。
また復帰直後は、以前よりパフォーマンスが落ちることも少なくありません。急かさずゆっくりと見守る姿勢を取ることが大切です。
心の健康づくり計画とは
メンタルヘルスケアについて重要視すべきポイントには、厚労省が打ち出している「職場における心の健康づくり」があります。
心の健康づくり計画に盛り込むべき事項は、以下の7つです。
- 事業者がメンタルヘルスケアを積極的に推進する表明
- 事業場の心の健康づくりの体制づくり
- 事業場の問題点の把握及びメンタルヘルスケアの実施
- メンタルヘルスケアに要する人材確保及び事業所外の資源の活用
- 労働者の健康情報の保護
- 心の健康づくりの実施状況ほ評価および見直し
- その他必要な措置
メンタルヘルスケアでは、施策の定期的な見直しが必須です。問題点を把握し、適宜制度を洗い直してください。
また心の健康づくり計画では、事業者が従業員の意見を聞きながら、実態に即した取り組みを実践することが大切です。
どのような取り組み方が自社に適しているか分析するため、「心の健康づくり推進計画書」を作成してください。心の健康づくり推進計画書では、次のポイントが重要です。
- 目的や目標を明確にする
- 職場の実態を踏まえて計画作成する
- 無理なくできるところから始める
- 定期的に見直す
- 文書化して誰でも閲覧可能にする
- 全体の計画だけでなく部門ごとに具体的な内容も検討する
計画のフォーマットは次のとおりです。
参考:厚生労働省 岩手労働局 盛岡労働基準監督署 心の健康づくり計画
自社の状況にあわせて作成してください。
計画に必要な4つのメンタルヘルスケア
4つのケアは、厚労省が推進しているメンタルヘルスケア方法です。心の健康づくり計画を策定したのち、4つのケアを継続的かつ計画的に実施することが推奨されています。
ここからはそれぞれのケア方法について、解説します。
セルフケア
セルフケアとは、従業員個人が自分自身に行うケアのことです。定期的にセルフケアを行ってもらうことで、大きなメンタルヘルス不調を防げます。
しかしメンタルヘルス不調についてあまり理解していない従業員もいるため、ケアを従業員にすべて任せるのは危険です。必要な情報は企業側が積極的に提供し、セルフケアのサポートをしてください。
メンタルヘルス不調の予防においては、ストレスチェックも有効です。メンタルの不調は気づかれにくく、従業員自身でも把握できないケースが多いです。
どのくらいストレスを受けているか知るため、定期的にストレスチェックを実施してください。現在は、ストレスチェックは常時50名以上を雇用する事務所で義務化されています。
従業員50名未満の小規模な事業所であってもストレスチェックの導入は有効であるため、積極的に実施し、セルフケアにつなげてください。
本格的なストレスチェックの導入が難しい場合、手軽にできる「5分でできる職場のストレスチェック」もあります。簡易的であっても、自身のメンタルの状況について知れるきっかけとなります。
セルフケアで重要なのは、次の「3つのR」です。
- rest(休息)
- recreation(レクリエーション)
- relax(リラックス)
休息をとりつつ余暇活動を楽しみ、ストレッチや娯楽で癒されることで精神的な疲労が緩和されます。
参考:厚生労働省 こころの耳 第4回 「ストレスの対処」ってどんなこと?
ラインケア
ラインケアは、上司が部下のために行うケアです。部下の変化に気づき、適切な対応を取ることでメンタル不調の重症化を防ぎます。
具体的に下記の不調が部下に見られたら、上司を含めた管理者は対応を検討してください。
- 遅刻や早退が増えた
- 仕事量に対しての残業や休日出勤が多い
- ミスが目立つ
- 清潔感がなくなった
- 表情が冴えない(もしくは不自然に明るい)
- 会話が減る(もしくは不自然に増える)
従業員の精神的な健康のため、上司などの管理者が取れる対策は次のとおりです。
- 調子の優れない部下から話を聞く
- 産業医に相談するよう促す
- 職場環境を改善する
ただし日頃から関係が良好でなければ、上司のアドバイスを受け入れない従業員は少なくありません。普段から部下の意見を尊重し、傾聴する姿勢が重要です。ラインケアやセルフケアをより効果的にするには、メンタルヘルス研修の導入も必要です。
研修を通じて、社内全体でメンタルヘルス不調への理解を深めてください。
事業場内産業保健スタッフによるケア
事業場内産業保健スタッフは、セルフケアおよびラインケアが十分に機能しているかどうか判断して必要なサポートを行います。事業場内産業保健スタッフに当てはまる職種は、次のとおりです。
- 産業医
- 衛生管理者
- 保健師
- 人事労務担当者
- 事業場内メンタルヘルス推進担当者
必要であればすぐに事業場内産業保健スタッフへ相談できる環境を作り、積極的にアドバイスを受けてください。
外部の専門機関(事業場外資源)によるケア
外部サービスを利用することで、より包括的なケアが可能です。特に自社内で事業場内産業保健スタッフが十分確保できない場合は、積極的に活用してください。
外部サービスを利用する利点は、次のとおりです。
- 自社内で相談しにくい問題についても話せる
- 第三者からの指摘で自社の課題に気づける
特に職場の人間関係に関する問題では、自社内のスタッフや上司に相談できない従業員が多いです。外部の相談機関を用意し、悩みを素直に話してもらうことが大切です。
外部の専門機関(事業場外資源)の例は次のとおりです。
- 地域産業保健センター
- 健康保険組合
- 労働者健康保持推進サービス
- 労働衛生コンサルタント
- 産業カウンセラー
- 心療内科等の医療機関
- 地域保健機関
- 医師会
日頃から外部機関と連携し、円滑なメンタルヘルスケアを実施してください。
会社としてメンタルヘルス不調者に行うべき配慮
心の健康は見た目や数値で測りにくいため、メンタルヘルス不調者への対応は難しいです。いざというときに適切な対応ができるよう、社内一丸となって事前に正しい知識を学んでおくことが大切です。
ここからは企業として、メンタルヘルス不調者に行うべき配慮の例を紹介します。
療養に専念できる環境を作る
メンタルヘルス不調者が療養中の場合、以下のことを療養初期に取り決めてください。
- 連絡の頻度と手段
- 連絡担当者
精神的に不安な時期は、職場の方と連絡を取るのも大きな負担です。連絡は月1〜2回にとどめ、必要以上のやり取りは避けてください。
また連絡の担当者が毎回変わると、安心して話せません。メンタルヘルス不調者が安心して話せる担当者を決めて、連絡窓口を一本化してください。
そして休職時には、収入や社会復帰についての不安が大きくなります。傷病手当金の受け取り方法、復職時の対応についてしっかりと伝え、安心して休息に専念してもらうことが大切です。
業務量や業務内容を慎重に調整する
職場復帰の際、最初から休職前と同じ環境で働いてもらうのは避けてください。ストレスの要因を分析し、勤務形態や業務量を必要に応じて見直してください。
特に交代制の勤務や深夜業、時間外勤務などは負担が大きくなるため慎重な検討が必要です。
本人がもとの仕事に戻りたいと希望しており、症状も落ち着いている場合は少しずつ元の勤務形態や業務量に近づけます。
職場復帰の可否については、以下の基準を参考にしてください。
- 本人に働く意欲が十分にある
- 通勤時間帯に一人で安全に通勤できる
- 決まった勤務日・時間に継続して働ける
- 業務に必要な作業ができる
- その日の疲労が翌日までに十分回復する
- 睡眠リズムが正常で、昼間の眠気がない
- 業務遂行に必要な注意力や集中力が十分にある
参考:4 管理監督者及び事業場内産業保健スタッフ等の役割 6ページ
上記に該当しており働けそうな状態であれば、短期間だけ出勤して様子を見る「お試し出勤制度」を検討してください。
ただしうまくいかなかった場合にどうするか、あらかじめ労使間で話し合う必要があります。職場復帰後に体調が悪化する可能性を踏まえ、人目につかない相談スペース、信頼できる担当者を準備してください。
職場内でメンタルヘルス不調への理解を深める
一度精神的に落ち込んだ状態になると、普段通り仕事をこなすのが難しくなります。
そのため職場復帰のあと、不調になる前の本人や周りの同僚と仕事の面で比較するのは辞めてください。
またメンタルヘルス不調には浮き沈みがあります。調子のよい日があっても、継続してその後も同じパフォーマンスが出せるとは限りません。
メンタルヘルス不調者の特徴や事情を、職場のスタッフ全員が理解することが大切です。
職場での理解を深めるためには、次の施策が有効です。
- セミナーを開催する
- チャットツールを利用し必要な情報を周知する
従業員全体に周知徹底できる方法で伝えるようにしましょう。
職場環境を改善する
オフィス環境は、メンタルヘルス不調を引き起こす原因の一つです。職場の照明の明るさや作業場所の狭さなどが、従業員の心理的ストレスになる可能性もあります。
オフィスがどのような状態なのか把握するには、従業員へのアンケートが有効です。アンケート結果をもとにして、環境改善を徹底してください。
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リモートワークで社内コミュニケーションの機会が減り、メンタルヘルス不調を感じる従業員は少なくありません。
会話が減ると信頼できる相談相手が見つからず孤独を感じやすくなり、メンタルヘルス不調につながります。
ある程度のメンタルヘルス不調であれば、ウォーキングなどの適度な運動が効果的です。
しかし在宅勤務だと運動不足になりやすいため、企業が積極的に介入し運動を促すとよいでしょう。
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社内コミュニケーションと運動機会の促進には、福利厚生アプリKIWI GOがおすすめです。
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ゲーム感覚でウォーキングを継続できるため、在宅勤務が中心の従業員でも運動機会を確保できます。
またギルド機能では、同じ趣味を持つ従業員同士がつながることでコミュニケーションを促進します。リモートワーク導入により従業員の健康に不安を感じている企業は、ぜひKIWI GOを検討してください。
まとめ:職場のメンタルヘルスケアでは予防の観点が大切
職場のメンタルヘルスケアにおいて、予防は最も大切です。
しかしリモートワーク中心の企業は特にコミュニケーション機会が少なく、従業員の状態を把握しにくい状態です。
意識的に交流の機会を増やし、メンタルヘルス不調をより早い段階で改善してください。
KIWI GOがあれば、従業員同士でイベントを楽しみながら自然と交流できます。
またインセンティブで運動習慣作りを促進するため、メンタルヘルスケアに効果的です。
職場環境を見直しつつ、便利なツールを活かして積極的な対策を実施してください。