従業員間のコミュニケーションを活性化させれば、業務の効率化、定着率向上につながる可能性は高いといえます。しかし、「具体的にどのような施策を導入すればよいか分からない」「そもそも活性化させる必要があるのか」などと、疑問に思っている経営陣の方は多いでしょう。
そこでこの記事では、社内コミュニケーション活性化の必要性や得られるメリットを解説します。施策アイデアや導入時のポイントなども紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
社内コミュニケーション活性化に悩む企業は多い
社内コミュニケーションに問題意識を持っている企業は少なくありません。
HR総研の「社内コミュニケーションに関するアンケート調査結果報告」では、約8割の企業が社内コミュニケーションに悩んでいることが明らかになっています。
具体的には、「社員間のコミュニケーション不足が業務の障害になるか」という問いに対し、「大いにそう思う」と回答した企業が72%、「ややそう思う」が23%でした。
また、社内コミュニケーション不足による業務障害の内容」の問いでは、次の結果が出ています。
回答内容 |
割合 |
部門間・事業所間の連携 |
73% |
迅速な情報共有 |
66% |
目指す方向への認識の統一 |
51% |
毎日常に関わりを持つ人材との連携が難しくなれば、日々の業務に支障が出るといえます。
なお、コミュニケーションの希薄化の要因として考えられているのは、テレワークの普及です。総務省が発表した「令和3年版 情報通信白書」によると、2021年3月時点で企業のテレワーク実施率は平均38.4%、大企業では69.2%でした。
各自が別の場所で個々に仕事をするようになったことで、より一層人間関係の構築が難しくなっています。
参考:
HR総研「社内コミュニケーション」に関するアンケート調査 結果報告
総務省 テレワークの実施状況
社内コミュニケーションを活性化させる3つのメリット
ここでは従業員間のコミュニケーションが活性化した場合の、効果・メリットについて解説します。
健康的に働ける環境が整う
公益財団法人 日本生産性本部が発表した「第10回メンタルヘルスの取り組みに関する企業アンケート調査結果」では、メンタルヘルスに対するコロナ禍の影響について「悪くなった」「やや悪くなった」の合計が約4割を占め、具体的な要因として「コミュニケーションの変化」と回答した企業が約9割となりました。
これはコロナ禍によってテレワークや時差出勤が導入され、人間関係が希薄になったことが原因です。
また、労働政策研究・研修機構が21〜33歳を対象にした調査「若年者の離職状況と離職後のキャリア形成」では、3割近くの若者が人間関係を理由に退職していることが明らかになりました。
従業員間のコミュニケーションを活性化させることで心身が健康的になれば、より一層生き生きと働けるようになるといえます。
参考:
公益財団法人日本生産性本部 第10回メンタルヘルスの取り組みに関する企業アンケート調査結果
労働政策研究・研修機構 若年者の離職状況と離職後のキャリア形成
モチベーションや生産性が向上する
第一次世界大戦後の好景気に沸く1920年代のアメリカで行われた実験「ホーソン実験」では、4つの実験によって、人間関係が生産性に影響を及ぼすことが明らかになりました。
【ホーソン実験の内容と結果】
実験名 |
調査目的 |
結果 |
照明実験 |
明るい照明の下では生産性が向上するかどうかを調査するため |
照明の明るさと生産性に相関性は見られなかった |
組み立て実験 |
労働条件(就業時間や給料)によって生産性が変わるかを調査するため |
労働条件と生産性に相関性は見られなかった |
バンク配線作業実験 |
従業員間の機能や役割を調べるため |
個人間の関係性が生産性の向上効果に影響を及ぼすことが明らかになった |
面談実験 |
管理者の在り方における質の良さによって生産性が変わるかを調べるため |
従業員の労働意欲が人間関係に左右されることが明らかになった |
従業員間の人間関係が良化すれば帰属意識や仕事へのモチベーションが高まり、副次的に生産性も向上する可能性があります。
離職率の低下につながる
厚生労働省が発表した「令和2年雇用動向調査の概況」では、社内コミュニケーションと離職率の関連性が記されました。
具体的には、令和2年の1年間で転職入職者が前職を辞めた理由を調査した結果、「定年・契約期間の満了」「その他の理由(出向等を含む)」を除き、「職場の人間関係が好ましくなかった」との回答が女性で最多、男性で第2位の要因でした。
また、日本労働調査組合が行った「仕事の退職動機に関するアンケート調査」の調査結果でも、人間関係を理由に辞めた方の割合は4割近くに達しています。
【調査の内容】
質問:「仕事を辞めたいと考えている理由を教えてください」
回答内容 |
回答率 |
職場の人間関係 |
38.6% |
評価、待遇に不満 |
38.6% |
仕事の進行が非効率的 |
26.5% |
他にやりたいことがある |
24.3% |
仕事の量が多い |
22.2% |
人間関係が良好になると、仕事の進め方や休暇の取得などについて相談しやすくなります。「辞めたい」「辛い」と思う機会が減れば、離職率は低下するといえます。
さらに離職率が低くなると企業イメージが向上するため、優秀な人材が集まりやすくなるという副次的な効果も期待できます。
参考:
厚生労働省 令和2年雇用動向調査の概況
日本労働調査組合 仕事の退職動機に関するアンケート調査
社内コミュニケーションを活性化させる施策アイデア
コミュニケーションの活性化方法は複数ありますが、その中でも特に効果を期待できる施策アイデアを6つ紹介します。
リフレッシュスペースを設置する
食事をしたり休憩を取ったりできるリフレッシュスペースを設けることで、従業員同士の自由なかかわりが増加します。普段から定期的に座席を移動させることが少ない場合や、人材の交流が限定的になっているような企業はぜひ検討してください。業務と離れた空間を作れば、プライベートの話がしやすく自然と会話が弾みます。
なお、リフレッシュスペースが空いているときは、ミーティングに活用したり、イベントで使用したりできます。
フリーアドレス制を導入する
フリーアドレス制度とは、座席を固定せず、毎日好きな席を選んで作業をするワークスタイルです。その時々で関わる人を柔軟に変更できるため、交流を広めやすくなります。また業務に必要な人材と近くの席にすれば、仕事がはかどるというのもメリットのひとつです。
フリーアドレス制は費用をかけずにできるため、コストを抑えたい企業に適しています。
バーチャルオフィスを開設する
バーチャルオフィスとは、オンライン上の仮想オフィスです。企業に出社する必要がなく、いつでもどこでも集合できます。リモート勤務者が多いケースや、現場が複数あり従業員が集まりにくい職種に適しています。
業務上必要な情報を共有する際に活用できるため、個別にやり取りをする手間も省けます。メールや電話の返信を忘れてしまうリスクも軽減可能です。
社内イベントを実施する
運動会や社員旅行などの社内イベントを導入するのも有効な方法のひとつです。従業員間でかかわりを持つ機会が増えれば、自然と会話が増えます。協調性が求められるようなイベントなら、チームワーク力の向上や帰属意識の向上といった効果も期待できます。
また、従業員の家族も参加できるようなイベントにすれば、より一層お互いのことを理解しやすくなるでしょう。業務から解放された空間の中で、お互いの新しい一面も発見できます。会社に対する家族からの評価が上がる可能性もあり、従業員の仕事に対するモチベーション向上につながります。
社員食堂を設置する
社内食堂もコミュニケーションの活性化に有効です。食事をとりながら会話を楽しめるため、自然と会話が弾む上に「美味しいですね」「今日のメニューは珍しいですね」などと、何気ない会話も生まれやすくなります。
また、食事を摂ると血糖値が上がることでセロトニンの分泌が促進され、ストレス発散にもつながります。
福利厚生が充実すれば、従業員の満足度も向上するでしょう。食事内容を事前に決められるため健康管理にも最適です。
コミュニケーションツールを活用する
コミュニケーションツールを利用すると、外回りの営業業務や現場作業の多い職種でもパソコンやスマホで自社内の情報を収集できます。
スタンプや「いいね」を送るだけで反応を示せるため、メールのようにメッセージを打ち込む手間がなく気軽に交流できます。
運動を促進できるもの、健康管理が可能なものなど、コミュニケーションの活性化以外の目的で活用できるものもあり、バリエーションは多種多様です。自社の状況を事前によく分析し、課題に即したツールを導入してください。
社内コミュニケーション活性化につながる施策の導入ポイント
有効な施策の導入には、従業員の声を聞きながら自社の問題点を明確にすることが重要です。面談やサーベイなどを実施しながら、着実に情報を収集してください。
会社全体で取り組む必要があるため、経営陣や担当者だけでなく従業員にも広く行うことが大切です。
また、これまでの慣習や社風を捨てて、新しいことに挑戦するのもコツです。今までの施策ではなかなか効果が出ない、職場内の雰囲気が良くないなどの傾向がある企業では、古い考えに従業員が納得できていない可能性があります。やり方を一新させることで従業員意識も変化するといえます。
若手社員や各方面の意見を柔軟に取り入れながら、変化することを恐れずに積極的に施策を導入してください。
なお、施策導入後は定期的に情報を収集・分析しながら中長期的な視点で施策を展開する必要があるます。企業課題は日々変化するため、状況に即した施策を取り入れてください。
社内コミュニケーション活性化に成功した企業の事例3選
ここからは施策の導入により、社内コミュニケーションの活性化に成功した事例を3つ紹介します。
矢作建設工業株式会社
出典:矢作建設工業株式会社
矢作建設工業株式会は、名古屋市に本社を置く総合建設会社(ゼネコン)です。OFFICE DE YASAI(オフィスでの野菜販売)というツールを導入するとともに、リフレッシュスペースを改装し、コミュニケーションの活性化を促しています。
リフレッシュスペースの充実により、今までスペースを利用していなかった従業員も出入りするようになり、従業員間の交流が活発になりました。
また、野菜販売ツールを運営する企業によるインタビューでは、「社内で野菜を販売することで、健康経営への意識づけにもつながった」と回答しています。
株式会社トータテハウジング
建設・工事業を営む株式会社トータテハウジングは、コミュニケーションに関して、以前は以下のような課題を抱えていました。
・会議であまり意見が出ない
・社内調整に時間がかかる
・上司に声をかけたり意見を言いづらい
・他部署との連携が悪い
上記の状況を改善すべくオフィスを新構築する際に家具やレイアウトを変更し、心機一転を測りました。また、ワークスタイル(働き方)の改革も推進しており、リフレッシュスペースの確保やフリーアドレスの導入を実施しています。
リニューアル後の従業員アンケートでは、職場環境が快適になったと回答した割合が80%に到達し、「会話が増えた」は50%、「ICT活用できている」は75%、「資料共有がしやすくなった」は60%と満足度が向上しています。
株式会社トレンディ茨城
出典:株式会社トレンディ茨城
株式会社トレンディ茨城は、道路貨物運送業を営む企業です。運送業は個々の仕事が多く、従業員同士の繋がりが希薄になりやすい傾向があります。そのため、株式会社トレンディ茨城では、以下のような施策を導入しました。
・チーム制の採用
・業務マニュアルの作成
・ICTシステムの導入
チーム制を導入してコミュニケーションを強化した結果、従業員間の横の繋がりが強くなり、業務への意識と責任感が芽生えました。
またジョブローテーションの採用や社員の健康面への配慮など、働きやすい環境作りにも積極的に取り組んでおり、年次有給休暇取得率は2017年16%から2019年80%へと向上。離職率が低下するとともに、平均勤続年数が伸長しました。
まとめ:社内コミュニケーションを活性化させるにはツールの導入が必要
社内コミュニケーションを活性化させることで従業員のモチベーションが向上し、健康的に働けるようになります。しかし、近年はリモートワークや時差勤務の普及によって、コミュニケーションの希薄化が進んでいるのが現状です。
コミュニケーションの活性化に適した施策は多数あるため、自社の状況を分析しながら課題に即したものを導入してください。
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