現在、多くの企業で注目されているのが、「健康経営」という経営方針です。

健康経営の中にも数多くの取り組みがあり、施策や自社の従業員への働きかけも多岐に渡りますが、その中でも特に重要な項目の一つが「禁煙対策」です。

政府が禁煙対策に乗り出していることから、たばこ料金が高騰していたり、喫煙率が下がる傾向にあることなど、社会全体が禁煙に向けて動き始めています。

しかし、そのような状況の中で、企業はどのように禁煙対策を行っていけばよいのでしょうか。

本記事では、企業の禁煙対策推進のポイントと、企業で実際に行われた禁煙対策の取り組み事例をご紹介いたします。

 

健康経営とは

健康経営とは、アメリカの臨床心理学者ロバート・ローゼン博士が提唱した理念です。

1994年2月に、自身の著書である「ヘルシー・カンパニー―人的資源の活用とストレス管理」によって提唱しました。

ヘルシーカンパニーとは、「社員の健康管理と企業経営を一体とする考え方を導入する企業」の総称です。

著書の中では、別の概念として考えられていた「経営管理」と「健康管理」を一つのものと考え運営していくことで、企業全体の業績を上げることができると考えました。

出典:NPO 法人健康経営研究会

 

経済産業省による定義

それでは、日本政府が考える健康経営の定義とは、どのようなものなのでしょうか?

経済産業省による定義によると、

 「健康経営」とは、従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践することです。

企業理念に基づき、従業員等への健康投資を行うことは、従業員の活力向上や生産性の向上等の組織の活性化をもたらし、結果的に業績向上や株価向上につながると期待されます。

健康経営は、日本再興戦略、未来投資戦略に位置づけられた「国民の健康寿命の延伸」に関する取り組みの一つです。

とあります。

 

それでは、日本政府が考える健康経営の定義とは、どのようなものなのでしょうか?

経済産業省による定義によると、

 「健康経営」とは、従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践することです。

企業理念に基づき、従業員等への健康投資を行うことは、従業員の活力向上や生産性の向上等の組織の活性化をもたらし、結果的に業績向上や株価向上につながると期待されます。

健康経営は、日本再興戦略、未来投資戦略に位置づけられた「国民の健康寿命の延伸」に関する取り組みの一つです。

とあります。

出典:経済産業省

健康経営を推進していくことによって従業員が健康になり、企業にもプラスの要素をもたらす好循環を生み出すことが期待できます。

よって、数多くの企業で健康経営の取り組みが注目されているのです。

 

健康経営を推進することによるメリット

健康経営を推進すれば、従業員と企業双方にとってプラスになります。

ここからは4点に分けて企業のメリットを詳しく解説するので、ぜひ参考にしてください。

 

従業員にかかるコスト削減が見込まれる

一つ目のメリットは、従業員にかかるコスト削減が見込まれることです。

 

企業を運営する中で、健康診断や、従業員の社会保険など、従業員にかかるコストは決して小さくないでしょう。

企業で抱える従業員が多くなれば多くなるにつれて、従業員の健康を守るためのコストは膨大になっていきます。

経済産業省 商務情報制作局から発行された「健康経営の推進に向けた取組」によると、健康経営の取り組みを行うことで、従業員一人あたり30万円の損失削減が見込まれます。

 

資料によると、健康関連リスクの低い組織は健康関連コストが1人あたり60万円なのに対し、リスクの高い組織では1人あたり90万円程度という結果が出ました。

このデータからわかる通り、健康経営が推進されていない企業では、従業員におよそ1.4倍のコストがかかります。

そのため、社員が健康になれば健康関連費用がおよそ30万円削減できるでしょう。

 

従業員のエンゲージメントの向上を見込める

二つ目のメリットは、健康経営により従業員のエンゲージメントの向上を見込めることにあります。

 

健康経営を行うと、従業員に対して、二つのエンゲージメント向上が見込まれます。

1.従業員エンゲージメント

従業員エンゲージメントとは、「組織に対する愛着心や貢献意欲」を指します。

 

従業員が自身の属する企業の理念やビジョン、働く環境などに共感していると、従業員エンゲージメントが高い状態であるといえます。

 

従業員エンゲージメントが高い会社では、自社へ貢献したい従業員が自発的に仕事へ取り組むことができるため、労働生産性が高まり企業の業績向上が期待されます。

 

2.ワークエンゲージメント

ワークエンゲージメントとは、「従業員個人の仕事に関連するポジティブで充実した心理状態」のことです。

 

従業員のワークエンゲージメントが高い状態にあると、業務における心理的苦痛が少ない状態となり、従業員のメンタルヘルスを健康に保てることが期待されます。

 

健康経営は、企業が従業員の健康管理を戦略的に行い、従業員が生き生き働きやすい環境づくりを行う経営戦略の手段です。

 

健康経営により従業員のエンゲージメントを高めることができれば、結果的に労働生産性の向上や人材定着率の向上なども見込まれ、企業に好循環を生み出すことができるでしょう。

 

企業のイメージアップに繋がる

健康経営を促進すれば、企業のイメージアップにも繋がります。

 

経済産業省では、各種顕彰制度を設けることにより、優良な健康経営を行っている法人を見える化し、優秀な法人が社会的評価を受けられる環境づくりに取り組むとしています。

 

その一環として、平成28年に制定された「健康経営優良法人」という制度があります。

 

本制度は、大規模法人部門と中小企業法人部門に分かれており、優良な健康経営を行う500社を「ホワイト500」、中小企業法人部門で優れた500社を「ブライト500」に認定します。

 

このように、健康経営が社会的に評価をされ、社会に自社の取り組みが浸透するようになれば、プラスのイメージを抱いてくれる人が社会に多く存在するようになるでしょう。

 

企業のイメージは、株価や企業業績にも直接的な影響を及ぼすほか、求職者が転職活動を行う際にも重要になります。

健康経営により企業の良いイメージを作り出すことができれば、結果的に社会からの自社のイメージアップにも繋がります。

そのため経営視点だけでなく、人材採用の面においても良い効果があるといえるでしょう。

出典:経済産業省 健康経営の推進について

 

健康経営が注目されている理由

健康経営が注目されている理由に、健康増進法の改正があります。

健康増進法とは、国民の健康維持と、現代病予防を目的として制定された法律です。

健康増進法は健康維持を国民の義務として受動喫煙や特定保健用食品などに関する条項を盛り込んだ内容となっており、平成15年5月に施行されました。

本法律が2018年7月に改正された際、受動喫煙に関する文言が追記され、2020年4月1日より全面施行されています。

この法改正により、これまで「努力義務」であった受動喫煙防止が、「従わねば罰則を設けるもの」として変化をしたのです。

このような法律の影響により、企業でも禁煙に対する関心が高まっています。

 

健康受動喫煙防止対策が追加された背景

2003年5月に施行された健康増進法。健康増進法とは、国民の健康を増進するため、定められた法律です。

それでは、健康増進法に健康受動喫煙防止対策が追加された理由とはどのような理由なのでしょうか。下記でその背景を解説します。

 

日本のたばこ対策に対する評価の低さ

健康増進法改正前、WHOからの日本のたばこ対策に関する評価の低さは、最低レベルでした。

海外ではたばこに対する関心が日本よりも高く、特に禁煙環境が最高レベルと評されているイギリス、ロシア、トルコ、カナダでは、日本よりも厳しい禁煙対策が設けられています。

これらの禁煙環境に対する評価は、WHOによって、医療機関、学校、行政機関、事業所、飲食店、バー、公共機関の8箇所でレベル付けがなされています。

この評価では禁煙義務の法律があるかを調査しており、8箇所すべてに法律がある国を最高レベルと評価していました。

そこで、日本政府は健康志向を世界各国水準と同等のものとし、評価が最低レベルから抜け出すべく、受動喫煙防止対策改正へ動き始めたのです。

 

東京オリンピック・パラリンピックの誘致

2020年、東京オリンピック・パラリンピックの開催にあたって、喫煙マナーの徹底を図りたいという政府の考えが、法改正の背景にあったと考えられています。

国際オリンピック委員会(IOC)も、「たばこのないオリンピック」をWHOと共同で推進するという意向を発表しており、近年の大会では禁煙に沿った運営をするのが一般的です。

出典:健康局健康課

そのため、東京でのオリンピック・パラリンピック誘致が決定した際、日本も各国の考え方に沿って祭典を開催できるよう、法整備を進める意図があったと言えるでしょう。

 

健康志向の高まり

近年、少子高齢化により、一人ひとりに対する医療費の負担が増加していることから、健康志向が高まっていると考えられています。

病気に罹患しながら生きていくよりも、健康寿命を伸ばして長く生き生きと過ごした方が良いと考える方が増えていると推測できます。

健康に過ごすための身近な取り組みとして、まずは禁煙対策があります。

 

たばこは、本人の健康に害を及ぼすだけでなく、副流煙によって身近な他者の健康にも影響を与えるものです。

国民の健康志向が高まったことで、政府も禁煙対策に積極的に乗り出していると考えられるでしょう。

 

禁煙における健康受動喫煙防止のルール

健康増進法に健康受動喫煙防止対策が追加されたことにより、健康に関心が集まっています。

多くの人が健康に過ごせるよう制定された健康受動喫煙防止の制度。健康受動喫煙防止対策で定められた具体的なルールとは、一体どのようなものでしょうか。

ここからは受動喫煙防止に関する基本的なルールを説明するので、ぜひ参考にしてください。

 

屋内の原則禁煙

多くの人がいる施設、鉄道、飲食店などの屋内で喫煙する際には、原則禁煙です。禁煙エリアで喫煙した人には、個人的に罰則が設けられることもあります。

子どもや健康への影響が大きい患者がいる学校や病院などの施設は敷地内全域が禁煙となり、喫煙室を設けることもできません。

ただし、屋外に受動喫煙を防止するために必要な措置が取られた場所に限り、喫煙場所を設置可能となっています。

 

屋内では喫煙室設置

屋内での喫煙を認める場合には、室外にたばこの煙が流出しないよう、定められた基準にしたがって、喫煙室を設置する必要があります。

 

<たばこの煙の流出防止にかかる技術的基準>

  • 出入口において室外から室内に流入する空気の気流が0.2m毎秒以上であること
  • たばこの煙が室内から室外に流出しないよう、壁、天井等によって区画されていること
  • たばこの煙が屋外又は外部に排気されていること

出典:東京都福祉保健局

 

<脱煙機能付き喫煙ブースを設置する場合の基準>

  • 総揮発性有機化合物の除去率が95%以上であること
  • 当該装置により浄化され、喫煙室外に排気される空気における浮遊粉じんの量が0.015mg/立方メートル以下であること

出典:東京都福祉保健局

上記に従い、屋内に喫煙室を設置する場合は就業する人から距離を保ち、喫煙室を設置する必要があります。

標識掲示義務

施設の中に喫煙室がある場合、施設の出入口や喫煙室の出入口に、喫煙室の種類に応じたステッカー、もしくはプレートなどで喫煙スペースがあることを示さなくてはなりません。

 

標識の種類には、「喫煙可能室」、「加熱式たばこ専用喫煙室」、「禁煙標識」などの種類があるため、適切なものを掲示する必要があります。

20歳未満喫煙エリア立入禁止

20歳未満の人は、喫煙を目的としない場合でも、喫煙エリアへの立ち入りができません。

従業員であっても、喫煙エリアに立ち入ることはできないため、注意が必要です。

出典:政府広報オンライン

 

禁煙対策で企業が取るべき流れとポイント

ここまで、禁煙対策が注目されている背景や、ルールを読み解いてきました。

それでは、企業はどのように禁煙対策を行っていくべきなのでしょうか?

企業内で制度を整えるための流れとポイントを、下記にて解説します。

 

職場の喫煙状況を把握する

全従業員に対して、喫煙率調査のアンケートを取ったり、非喫煙者が感じている喫煙に対する不満・改善案などを現場へヒアリングしたりして、喫煙に対する状況を把握しましょう。

ここでポイントとなるのは、喫煙者と非喫煙者双方の意見を対等に聞くということです。

どちらかにバイアスがかかっている意見の偏重は制度を構築した際の不平不満に繋がってしまうため、あくまで実態調査という名目でヒアリングを行いましょう。

 

状況に応じて何を行うのか社内で検討する

現在の状況を従業員にヒアリングし、把握することができたら、次は課題や行うべき方針を社内で検討しましょう。状況に応じて、何を行うのか社内で検討することが必要です。

前項で述べた通り、受動喫煙を防止する観点で、喫煙室の設置や屋外喫煙所の移動など、設備投資が別途必要となる場合があります。

ポイントは、「禁煙対策は、投資である」という考え方です。

従業員に寄り添い、法令に遵守しながら対策を進めていくことによって、喫煙者も非喫煙者もいきいきと働きやすい環境作りができるようになります。

喫煙者にも非喫煙者にも快適な環境づくりを意識し、社内検討を行いましょう。

 

従業員への認知を促進する

ここまで完了したら、従業員への認知促進を進めていきましょう。

受動喫煙対策は、対策を講じるだけでなく、従業員へ健康への関心を高め、禁煙の必要性を理解してもらうことが効果的です。

 

禁煙による健康経営を推進していくために、「なぜ自社が禁煙に向けて策を講じているのか」など、施策を行う背景を従業員に理解してもらうことが効果的といえるでしょう。

 

このような考え方を認知・促進するために、従業員参加型のセミナーを開いたり、社内広報を行うなど、全社での協力が必要不可欠です。

 

健康経営で禁煙対策を行う他社の取り組み事例

ここまで、健康経営におけるメリットや、行う中のポイントをお伝えしましたが、自社で運用するとなると、どのように取り組めばいいか分からない方も多いのではないでしょうか。

 

そこで、下記で、健康経営のために禁煙対策を行っている他社の事例をご紹介します。

具体的な施策をまとめたので、ぜひご確認ください。

アクサ生命の取り組み事例

出典:アクサ生命保険株式会社

一つ目は、アクサ生命の取り組み事例です。

現在、「健康系遺影優良法人・大規模法人部門」にて、ホワイト500に選定されているアクサ生命。当初は役員の喫煙率も高く、喫煙率が高く推移していたようです。

健康経営において、どのような施策を講じているのでしょうか。

禁煙のサポート施策を整える

アクサ生命は、禁煙のサポートを行うため、最初にニコチンガムやパッチを使用した一般的な禁煙サポートを行いました

その上で、禁煙したい従業員一人で頑張るのではなく、周囲の社員が禁煙を見守る応援制度を制定。

周囲の協力を仰ぎながら、会社全体で禁煙のサポートができるような制度を構築しました。

 

内服薬を使用した「禁煙プログラム」を導入

前述したサポート体制で参加者が伸び悩んだのもあり、アクサ生命は内服薬を使用した禁煙プログラムを導入しました。

 

一人の費用56,000円を健保組合が期間限定で無償提供を行うことで、禁煙にチャレンジする従業員数を増やすことに成功しています。

 

全社で禁煙への意識を高める

アクサ生命は産業医監修のもと、禁煙のリスクを啓蒙する内容のメールマガジンを社内展開したり、社内広報を行うことにより、全社での禁煙への周知を行いました。

 

また、部長以上が集まる会議にて、喫煙=身体に悪影響を及ぼすという認知付けを行い、社員の卒煙を促しました。

このように、社内で禁煙を推進を進めていく部署だけでなく、全従業員が意識を高めたことによって、従業員が自ら取り組もうという意識を醸成することが可能となったのです。

 

中外製薬の取り組み事例

出典:中外製薬株式会社

二つ目は、中外製薬の取り組み事例です。

将来目標として、喫煙率ゼロを掲げ、全社を挙げて禁煙推進に取り組んでいる中外製薬。どのように社内に周知、浸透を行い、禁煙を推進しているのでしょうか?

「中外製薬グループ禁煙宣言」を発信

中外製薬は2019年9月に、グループ禁煙宣言を行いました。

 

従業員一人ひとりが心身共に健康で働きがいとやりがいを持ちながら仕事に取り組める環境づくりこそが成長の基盤であると考えている中外製薬。

 

全社の方針として、禁煙宣言を行うことによって、社会へ禁煙に対する理解がある会社だということをアピールしました。

取り組み方針を定める

中外製薬では、下記の取り組み方針を定め、禁煙推進を図っています。

 

  • 目標時期を明確にした喫煙対策を段階的に実施する
  • 喫煙者の採用は行わない方針とする(国内グループ)
  • 個別事情を考慮し、各事業所の具体策は事業所で策定する
  • 喫煙に関するヘルスリテラシーの向上を図る
  • 禁煙サポートによる脱喫煙を進める

 

このように、中外製薬は全社で禁煙に取り組んでいることを社会にアピールすることによって、企業イメージの向上を図っています。


また、それだけでなく、禁煙対策に取り組むことで健康的な社会づくりに寄与することをアピールしています。

 

まとめ:禁煙対策で健康経営を進めよう

ここまで、健康経営を行うメリット、禁煙対策が注目されている背景に着目しました。

社会全体で禁煙対策が進められていく現在、企業での禁煙対策は必要不可欠です。

従業員が生き生き過ごし、健康に働くことができるようになれば、従業員の活力が向上することが見込まれ企業の生産性や従業員エンゲージメントは高まるでしょう。

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