健康経営を推進するには、ウォーキングや運動会などの社内イベントの実施が効果的です。
企業がイベントを主催すれば、仕事や家庭事情で忙しい従業員に運動の機会を提供できるなど多くのメリットがあります。
しかし「何から始めたら良いのかわからない」「従業員が積極的に参加してくれるかどうか不安」と悩む企業担当者は多いでしょう。
そこで本記事では、健康経営に関するイベント事例や実施方法などを解説します。
リモートワークによる運動不足を解消し、職場の活性化に繋げるためにもぜひ参考にしてください。
目次
健康経営が企業にとって欠かせない理由
ここではまず、健康経営の推進が企業に求められている理由を解説します。
従業員の健康寿命を延伸させるため
経済産業省の資料によると、日本では運動不足による死亡者が毎年5万人程度発生しています。また男女ともに平均寿命と健康寿命の差が10歳程度あることも明確です。
運動不足を原因とする死亡者数の減少、健康寿命延伸のためには、適度な運動やスポーツの習慣化が必要です。
働き手不足を解消するため
企業においては働き手不足の問題が深刻化しています。そのため健康経営によりエンゲージメントや定着率の向上を図るなど、従業員に長く働いてもらうための対策は急務です。
また「健康経営は就職活動の決め手になる」と答えた学生が72.2%にのぼることから、健康経営には労働市場での差別化効果も期待できます。
出典:経済産業省 平成 28 年度健康寿命延伸産業創出推進事業 (健康経営・健康投資普及推進等事業) 調査報告書
従業員の健康増進は企業成長に繋がるため、重要な経営課題として据える必要があります。
あわせて読みたい:健康経営は離職率低下に効果的!具体的な企業施策も解説
健康経営推進イベントを実施するメリット
従業員に健康への意識を高めてもらい、健康経営の重要性を共有するならイベントの実施がおすすめです。
ここでは企業主体のイベント実施にどのようなメリットがあるのか解説します。
運動の機会を提供できる
スポーツ庁による令和4年度の調査結果において、20歳以上の男女が週1日以上運動・スポーツを実施する確率は52.3%です。
さらに週1日以上運動・スポーツを実施する確率はすべての年代層で前年度を下回っており、特に20〜50代の働く世代で低い傾向が続いています。
調査のなかで、運動できない主な理由は「仕事や家事が忙しいから」「面倒くさいから」が上位を占めていました。
出典:スポーツ庁 令和4年度「スポーツの実施状況等に関する世論調査」の概要
運動したい気持ちがあっても、取り組む時間やきっかけがない従業員は少なくありません。
企業がイベントを実施することで、従業員に運動の機会を提供してください。
当事者意識が芽生える
健康に無関心な従業員が当事者意識を持つのは困難であるため、健康問題を自分事として考えてもらうチャンスとしてのイベント開催は重要です。
例えば健康セミナーを実施する場合、罹患した人から体験談を話してもらうなど、情報の伝え方を工夫することで当事者意識を形成できます。
またイベントで実際に体を動かしてもらい、運動不足への気づきを促すことも効果的です。従業員が健康に関する行動意欲を高められるようなイベントを作ってください。
参考:厚生労働省 健康づくりの知恵袋 – スマート・ライフ・プロジェクト
楽しみながら健康増進できる
健康に関心があっても、運動したり生活習慣を変えたりするのはつらくハードルが高いと感じる方は少なくありません。運動を習慣化するためには、無理なく気軽に体を動かす意識が大切です。
軽いレクリエーションやゲームなど、運動に抵抗がある人でも興味を持てるようなイベントの実施がおすすめです。
人と一緒に楽しく体を動かせる清々しさを体験できれば、健康増進のきっかけになります。さらにイベントの評価が社内に広がり、参加率の向上も期待できます。
コミュニケーションが促進される
イベントは共同作業を必要とするため、コミュニケーションの促進にも効果的です。相談や作戦会議などを通じて自然に会話が発生すれば、風通しのいい職場の実現に繋がります。
さらに経営層の積極的なイベント参加により健康経営に取り組む企業の本気度が従業員に伝わるほか、上下関係を問わない良好な交流体験が作れます。
部署を超えた繋がりが実現されることで、部門横断的なプロジェクトや活動を円滑に行えるきっかけにもなります。
あわせて読みたい:健康経営とコミュニケーションの関係とは?効果的な施策例まで紹介
健康経営を推進するイベント事例
ここからは健康経営推進を目的とした具体的なイベント事例を紹介します。運動系からセミナー系まで幅広く解説するため、自社で実施するためのヒントにしてください。
ウォーキング
手軽な健康増進や生活習慣病予防として人気を集めるのがウォーキングです。ウォーキングは肥満解消や血中の中性脂肪の減少、血圧や血糖値の改善などに効果があります。
さらに有酸素運動にはネガティブな気分の発散や睡眠リズムの調整作用もあり、メンタルケアにも有効です。
膝や腰の疾患を抱えている人でも障害のリスクが少なく、ジョギングよりも始めやすいため多くの企業で実施できます。
ごみ拾いやボランティアなどの社会貢献活動とかけ合わせれば、地域に恩返しできる喜びも得られるためおすすめです。
また大会参加を促すことも、従業員のモチベーションに繋がります。例えば「さつきラン&ウォーク」は、5月1か月間の歩数や距離をアプリ上で競う企業対抗型のオンラインイベントです。他にも多くの保険者や自治体がウォーキングイベントを開催しているため、発信情報を確認してみてください。
参考:厚生労働省 ウォーキング|e-ヘルスネット
参考:厚生労働省 体を動かす|こころと体のセルフケア|ストレスとこころ
参考:さつきラン&ウォーク2024企業対抗戦
ヨガ
瞑想的な要素と身体的な要素の両方を含むヨガは、心身の健康を促進する方法として普及しました。ヨガには腰痛や頸部痛を和らげるほか、禁煙を助ける効果もあります。
さらにストレス緩和や睡眠の質向上にも作用し、良好な健康習慣をサポートする役割を果たします。
ただしヨガは資格のあるインストラクターの下で適切に実施する必要があるため、社内イベントを行う際には講師派遣料を考慮してください。
参考:厚生労働省 eJIM|ヨガ[各種施術・療法 – 一般]
健康セミナー
健康教育には、セミナー開催が効果的です。自身の健康状態を見つめ直し、改善に向けた自主的な行動を促す内容にしてください。
ただし座学だけでは受け身になるため、ディスカッションやクイズを取り入れるなど工夫が必要です。
RIZAPグループ株式会社の企業向けサービス「RIZAPウェルネスプログラム」では、企業の目的や環境に合わせた健康経営推進プログラムを提案しています。
また無料で講師派遣を行う保険者や自治体も少なくありません。外部サービスの利用が難しい場合は検討してみてください。
参考:RIZAPグループ株式会社 RIZAP ウェルネスプログラム
運動会・スポーツフェス
ある程度の参加者が見込まれ、本格的なスポーツイベントを実施したい場合は運動会・スポーツフェスがおすすめです。ファミリーでの参加を募れば楽しく健康意識を高められるほか、従業員同士の理解を深められます。
ミズノ株式会社は一般、企業問わずさまざまな団体に向けイベント・セミナー企画を行っています。外部サービスを利用しながら、オーダーメイドのイベントを開催してください。
体験型ゲーム
スポーツに抵抗を感じる従業員が多い場合は、ゲーム感覚のレクリエーションがおすすめです。例えば謎解きゲームは若い世代からの人気・知名度ともに高く、参加の呼びかけにも好意的な反応が期待できるためおすすめです。
株式会社タカラッシュは、宝探し・謎解きゲームを健康増進や従業員交流に活用するユニークな企画サービスを行っています。ウォーキングとゲームの複合型イベントで、運動系企画のワンパターン化を防ぐ工夫が施されています。
チームで役割を決め相談・協力しながら進められる体験型ゲームなら、従業員の帰属意識を高めることが可能です。
参考:株式会社タカラッシュ 社員向け健康増進イベントでリアル宝探し!
体力測定
レクリエーション系の企画が難しい場合は、従業員に現在の体力状態を知ってもらうことから始めてください。従業員の体力測定日を設け、現状把握の機会を提供することで運動習慣化のスタート地点に立ってもらえます。
株式会社ヒューマンハートでは、体力測定キットのレンタルサービスを行っています。測定方法の説明動画が添付されるため、専門スタッフ不在でも手軽に開催可能です。
リラクゼーション・マッサージ
リラクゼーションやマッサージに行く時間のない従業員のためには、企業による休養イベントの企画も重要です。株式会社イーヤスでは、プロの施術師による定期的な出張訪問サービスや、一日限りの健康増進イベントプランを実施しています。
仕事のパフォーマンス向上と休養との関連性を、従業員に実感してもらいましょう。
参考:株式会社イーヤス 参加率と満足感の高い社内イベントプラン 【リラクゼーションDAY】
健康経営推進イベントを成功させるポイント
ここでは健康経営推進のためにイベントを実施する際、気をつけるべきポイントを解説します。
経営トップから発信する
イベントを効果的に実施するには、健康経営に注力する思いを経営トップから発信する必要があります。従業員がイベントの目的を理解し、納得できなければ参加率の向上は見込めません。
企業にとって従業員の健康は資本である点、業績や生産性とも繋がっている点を共有することが大切です。
従業員の悩みやニーズを把握する
イベント参加率や満足度を上げるためには、従業員の悩みやニーズを把握し自社に合致したイベントを企画する必要があります。アンケートや面談の結果を分析し、改善すべき健康課題を明確に設定してください。
例えば喫煙者が多い場合、禁煙イベントの実施は従業員からの理解を得られやすいです。
またデスクワークを主とする職場や立ち作業の多い現場など、部署によって生じやすい健康問題は異なります。ターゲットを意識して、従業員のニーズに適したイベントを考えてください。
あわせて読みたい:【健康経営】喫煙対策にはどう取り組む?注意点や事例などを紹介
従業員の主体性を尊重する
従業員がイベント参加をためらう背景には、時間的な理由の他に「面倒だから」といった後ろ向きな姿勢も関係しています。
前向きな姿勢で取り組んでもらうためには、従業員が主体的に参加できるような仕組みを整えることが大切です。
どのような内容なら参加したいと思えるのか、従業員から提案してもらうなど企画段階から話を聞いてください。
企業からの押しつけではなく、従業員の多様な価値観や個性をできる限り活かすよう心がけることが重要です。
健康診断の日に実施する
いつ実施すればいいのかわからない、業務多忙でなかなか日程が決められないという場合は、健康診断の日にイベントを実施するのがおすすめです。
年に一度の健康診断で従業員全員が集まるのを機に、健康増進の流れでスポーツイベントを行う企業事例もあります。
参考:経済産業省 健康経営優良法人2023(認定法人-取り組み事例集)
また健康について学び考える日として、セミナーや運動実践などをまとめて行えば従業員の負担も少なく済みます。
健康診断でなくても、研修や社内試験など従業員が集まりやすい日をイベント実施日とするのも効果的です。
あわせて読みたい:健康診断を健康経営に活かすには?受診率を上げ結果を施策に繋げるポイント
インセンティブを与える
健康増進の効果はすぐに出るものではないため、モチベーションが保ちにくく前向きなイベント企画が難しいと悩む企業は少なくありません。
継続のためには、イベント参加でポイントが貯まるなどのインセンティブを与える仕組みが有効です。
例えばチーム対抗にして、上位者に景品を贈呈する工夫もできます。また部署ごとでチームを編成したり、従業員同士で自由にチームを作ったりするなど多様な実施方法を認めれば、考える幅も広がり楽しみが生まれます。
さらに景品やポイントの使いみちを健康関連のものにすることで、健康増進行動への実感がわきモチベーションの向上に繋がります。
イベント名を工夫する
魅力的なイベントを毎年企画するのは難しく、外部委託をするにしても費用がかかります。
少しでも独自性を出したい場合は、ネーミングを工夫してみてください。例えば社名や看板商品に関連づけて「○○ウォーキング」「○○チャレンジ」「○○運動」などと名づけるのがおすすめです。
親しみやすいイベント名は従業員同士の会話のきっかけになり、周知効果が期待できます。
さらに外部への公表により、他企業との差別化要素にもなるためおすすめです。
健康経営推進イベントの実施ステップ
初めはイベント開催に不慣れでも、PDCAを回し続けることで長期的な効果を発揮できます。
ここではイベントを健康経営の推進に繋げるためのステップを、4つにわけて解説します。
ステップ①:計画
まずはイベント内容の詳細な計画を立てます。主に以下の項目について決定してください。
- 費用
- 外部サービスの利用有無
- 準備する道具
- 実施頻度
- 開催日
- 役割分担 など
イベント内容の決定には、健康に関する従業員の意識段階(無関心、少し気になるなど)の調査が必要です。
従業員のニーズを正しく把握し、自社にとって効果的なイベントとは何かを十分に議論してください。
あわせて読みたい:健康無関心層の心に刺さる施策とは?行動を変えるポイントを解説!
ステップ②:社内連絡・周知
イベント計画が決定したら、社内連絡を行います。年度初めに健康経営の方針やイベント開催の目的を伝え、実施日の約2〜3か月前になったら詳細な情報を周知してください。
当日の拘束時間や服装、持ち物など不備のないように連絡することが大切です。
イベントの周知には朝礼や社内メール、ポスター掲示などを利用します。誰でも気軽に参加してもらえるよう、継続的に呼びかける必要があります。
なお外部サービスを利用する場合は、当日の参加予定人数など必要事項の打ち合わせを忘れずに実施してください。
ステップ③:実施・広報
イベント当日を迎えたら、実施風景の撮影と録画を行います。
終了後はレポートを作成し、社内で共有してください。参加できなかった従業員に「次回は参加したい」と思ってもらうことが重要です。
レポートは公式サイトや企業用SNSにも掲載し、健康経営への取り組みをステークホルダーに示します。
従業員からの感想や改善策も社内共有し、意見を細かく汲み取ってください。
ステップ④:改善・継続
健康経営は長期的視野で取り組むものであり、継続が欠かせません。イベント実施の手ごたえが薄かったとしても、次に繋がるよう改善点を議論してください。
イベントの見直しポイントは、次のとおりです。
課題 | 改善点 |
参加率が低かった | どのようなイベントなら参加してもらえるか |
段取りが悪かった | 準備に不足はなかったか当日の実施体制に問題はなかったか |
コストパフォーマンスが低かった | より低予算でできるイベントはないか |
さらにイベント実施後には、従業員の健康意識や健康診断の結果がどのように変化したか観察します。少しの成果でも社内外に公表し、可視化することで従業員の行動意欲も高まります。
健康経営推進イベントが実施できない場合の対策
大規模イベントが難しい場合、日常的な健康づくりから少しずつアプローチしていくだけでも効果があります。始業時のラジオ体操やメールマガジン配信、社内部活動の創設などできることから始めてください。
以下に国が公開している情報をまとめています。手軽な取り組みや従業員に向けた配信の参考にしてみてください。
公開機関および名称 | 内容 |
スポーツ庁 スポーツエールカンパニー2023認定企業一覧 | スポーツエールカンパニー認定企業(従業員の健康増進を目的としたスポーツ実施に積極的な企業)の取り組み事例 |
スポーツ庁 Myスポーツプログラム | 女性のための運動プログラム |
スポーツ庁 室伏長官が考案・実演する身体診断「セルフチェック」動画 | スポーツ庁長官による実演動画 |
厚生労働省 スマート・ライフ・プロジェクト | 健康に関するさまざまな知識が得られるコンテンツ |
無関心層の割合低下など、まずは小さな成果を目標に取り組むことが大切です。
参考:スポーツ庁 スポーツエールカンパニー2023認定企業一覧
参考:スポーツ庁 Myスポーツプログラム
参考:スポーツ庁 室伏長官が考案・実演する身体診断「セルフチェック」動画
参考:厚生労働省 スマート・ライフ・プロジェクト
まとめ:健康経営推進のきっかけとしてイベントは重要
健康経営は企業の重点課題であり、従業員が健康増進に関心を持つきっかけとしてイベント実施には大きな効果があります。
運動やセミナー、レクリエーションなど形にとらわれない複合的な企画を実施し、楽しんで参加してもらいましょう。
イベントの企画には、運動習慣化アプリKIWI GOがおすすめです。ダウンロードするだけで運動を始められるため手軽に導入できるうえ、貯めたコインでごほうびと交換できます。
チーム対抗のウォーキングイベントなども開催できるため、従業員同士で交流しながら健康増進に繋げることが可能です。気軽に導入