健康経営銘柄は、日本再興戦略に位置づけられた「国民の健康寿命の延伸」に関する取り組みの一つです。

健康経営銘柄の選定を受けるには、健康経営により企業価値が向上し、取り組みにおけるモデル企業であると経産省と東京証券取引所から認定される必要があります。

現在、行政は健康経営により投資の観点で企業価値が上がることを示しており、健康経営銘柄によるモデル企業を作ることで健康経営の促進を目指しています

健康経営銘柄に選定されているか否かは、長期的な企業価値の向上を重視する投資家にとって、重要な判断基準のひとつです。

長期的に成長する企業として健康経営銘柄の認定を目指し、価値を高めてください。

本記事では、健康経営銘柄の概要や判定基準について詳しく解説します。

認定された場合のメリットや具体的な導入事例なども解説するので、ぜひ参考にしてみてください。

健康経営銘柄とは

まずは健康経営や健康経営銘柄の概要について解説します。

健康経営の概要

健康経営とは、会社を支えている従業員が健康的に働けるよう、戦略的に従業員の健康を管理することです。

2013年6月、健康経営は「日本再興戦略」にて国民の健康寿命の延伸に関する取り組みの一つとして取り上げられました。

参考:経済産業省 健康経営

健康経営が推進される背景には、人口減少による働き手不足があります。

人口が減っている現在、生産性を保って長く従業員に働いてもらうには、企業側が責任を持って従業員の健康状態を維持・増進することが重要です。

なお、健康経営において管理会計の概念を取り入れ、投資対効果を算出しようとする取り組みが経済産業省の「健康投資管理会計ガイドライン」です。

健康投資管理会計ガイドラインの詳細や利用方法については、次の記事で解説しているためぜひ参考にしてください。

あわせて読みたい:健康投資管理会計とは?ガイドラインを使った実施の流れも解説!

健康経営銘柄の概要

健康経営銘柄とは、東京証券取引所に登録されている上場企業の中でも、特に優れた健康経営を実施している企業に与えられる顕彰制度です。

参考:経済産業省 健康経営銘柄

長期的な企業価値の向上を重視する投資家に魅力ある企業を紹介し、健康経営を促進するために定められました。

健康経営銘柄の選定においては、経済産業省と東京証券取引所が「健康経営度調査」により取り組み状況を調査し、分析・評価の結果を銘柄選定の判断資料として利用しています。

なお、2023年度は49社が選定を受けています。

健康経営銘柄への認定を目指し健康経営に積極的に取り組めば、従業員のモチベーションや生産性、業績が向上し、株価上昇にも繋がるでしょう。

健康経営優良法人認定との違い

健康経営に関しては、「健康経営優良法人」という顕彰制度も存在します。

健康経営優良法人とは、健康経営に取り組む法人の中から、優良な取り組みが見られた法人をピックアップして認定を与える制度です。

参考:経済産業省 健康経営優良法人

健康経営銘柄と健康経営優良法人認定の主な違いは、顕彰・選定を受ける企業の対象範囲です。

健康経営銘柄の対象は東京証券取引所の上場企業のみですが、健康経営優良法人認定には制限がなく、申請条件に当てはまる企業であれば申請できます。

また、健康経営に関する調査方法にも違いがあります。

健康経営優良法人認定では健康経営度調査に回答すれば認定審査に進めますが、健康経営銘柄の調査にはいくつかの段階があります。

1.健康経営度調査の実施

2.健康経営度が上位20%の上場企業を候補として選定

3.東京証券取引所にて財務指標スクリーニングを実施

4.経済産業省及び東京証券取引所が共同で選定

健康経営銘柄では健康経営優良法人認定に比べて選定対象の範囲が狭く、審査の回数が多いため非常に狭き門であるといえます。

厳正な調査を経て健康経営銘柄に選定された企業は、健康経営をけん引する重要な存在として社外へ広くアピールできます。

健康経営銘柄の選定を受けるための条件

ここからは健康経営銘柄の選定を受ける際の判断基準・条件について解説します。

申請法人の上位500位以内に入ること

健康経営銘柄の選定を受ける一つ目の条件は、健康経営優良法人(大規模法人部門)申請法人のうち上位500社以内に入ることです。

500社と聞くと多いように感じられますが、健康経営度調査の回答企業数は年々増加傾向にあり、500社以内に入るのは簡単ではありません。

年度

健康経営優良法人(大規模)認定数

健康経営度調査回答数

2016年度

235

726

2017年度

539

1,239

2018年度

813

1,800

2019年度

1,473

2,328

2020年度

1,801

2,523

2021年度

2,299

2,869

2022年度

3,168

参考:経済産業省 健康・医療新産業協議会 第7回健康投資WG 事務局説明資料①

認定を受ける企業、健康経営度調査に回答する企業は年々増加しています。

なお、健康経営銘柄は原則東京証券取引所の上場企業に与えられるものの、「TOKYO PRO Market」の上場企業は対象外となる点にも注意してください。

健康経営度調査の項目を満たすこと

健康経営銘柄の選定を受ける際は、健康経営度調査の項目基準を満たす必要があります。

健康経営度調査の大項目は以下の5つです。

1.経営理念・方針

2.組織体制

3.制度・施策実行

4.評価・改善

5.法令遵守・リスクマネジメント

大項目の中には中項目と小項目、評価項目が設定されています。

例えば、「1.経営理念・方針」においては、以下の2項目への取り組みが必要とされています。

  • 健康経営の方針等の社内外への発信
  • トップランナーとしての健康経営の普及

健康経営銘柄の選定においては、「3.制度・施策実行」以外全てが必須項目です。

「3.制度・施策実行」では13項目以上を達成しなければいけません。

評価項目の基準を満たせない場合、健康経営銘柄の対象外となります。

あわせて読みたい:健康経営度調査の内容は?評価方法や参加するメリットも徹底解説!

直近3年間の平均ROE(自己資本利益率)が0%以上であること

ROEとは、企業が投資により得た資本をどの程度効率的に運用できているかを数値化した指標です。

健康経営銘柄では、ROEの直近3年間の平均が0%以上、あるいは直近3年連続で下降していない企業が対象です。

ROEの数値は「当期純利益÷自己資本」の計算式で求められるため、一度自社の数値を計算してください。

なお、ROEが高い企業や、前年度も健康経営度調査に回答している企業、社内外へ情報を開示している企業は一定の加点を受けられます。

健康経営銘柄の選定を受ける3つのメリット

ここからは、健康経営銘柄に選定された場合のメリットを3つ紹介します。

従業員が生き生きと働ける

健康経営銘柄の選定を目指し健康経営に積極的に取り組めば、従業員がより一層生き生きと働けるようになります。

厚生労働省の調査では、回答者のうち53.3%の方が「仕事や職業生活に関する強い不安やストレスを感じる事柄がある」と回答しています。

【強いストレスの内容(上位3つ)】

  • 仕事の量:43.2%
  • 仕事の失敗、責任の発生等:33.7%
  • 仕事の質:33.6%

参考:厚生労働省 令和3年労働安全衛生調査(実態調査)の概況

健康経営を促進して働きやすい環境を整備すれば、精神的にも肉体的にもストレスが軽減されます。

また一人ひとりが生き生きと働く職場では従業員の健康状態がよくなり、仕事へのモチベーションが向上します。

さらにモチベーションの高い従業員が互いによい影響を与え合うことで、さらなる生産性向上に繋がります。

投資家へのアピールになる

健康経営銘柄は、東京証券取引所の上場企業のうち特に優れた取り組みが見られた企業のみに与えられるものです。

そのため、健康経営銘柄に選定されたことを公式サイトなどに記載すれば、経済産業省や東京証券取引所から認められた企業であることを社内外にアピールできます。

健康経営銘柄として選定されているかどうかは、企業価値を重視する投資家にとって大きな判断基準の一つです。

「企業経営の安定性が見込める」と判断する投資家が増えれば、より多くの資金を獲得できる可能性が高まります。

企業イメージが向上する

健康経営銘柄に選定されれば、企業イメージの向上に繋がります。

就活生や就職を控えた学生を持つ保護者に対して経済産業省が実施した調査では、就職先に期待する条件について次の回答が集まりました。

【Q就職先に望む勤務条件】

回答(上位を抜粋)

就活生

保護者

福利厚が充実している

44.2%

18%

従業員の健康や働き方に配慮している

43.8%

49.6%

雇用が安定している

24.2%

44.5%

参考:経済産業省 健康経営の推進について

上記調査により、就活生の4割以上は「福利厚生の充実度」「従業員の健康や働き方への配慮」を重視していることがわかります。

また、4割以上の保護者が「従業員の健康や働き方への配慮」「雇用の安定」を重んじています。

健康経営によって働きやすい職場環境が整えば、企業としてのイメージが向上し、「この会社で働きたい」と感じる求職者が増える可能性は高いです。

健康経営銘柄の申請手順・流れ

ここでは健康経営銘柄の選定に参加する流れを紹介します。

1.東京証券取引所上場企業の認定を受ける

健康経営銘柄に申請できるのは、東京証券取引所上場企業のみです。

上場企業の審査基準は、以下のように設定されています。

1

企業の継続性及び収益性

継続的に事業を営み、安定的かつ優れた収益基盤を有していること

2

企業経営の健全性

事業を公正かつ忠実に遂行していること

3

企業のコーポレート・ガバナンス及び内部管理体制の有効性

コーポレート・ガバナンス及び内部管理体制が適切に整備され、機能していること

4

企業内容等の開示の適正性

企業内容等の開示を適正に行うことができる状況にあること

5

その他公益又は投資者保護の観点から東証が必要と認める事項

参考:日本取引所グループ 上場審査基準

条件や基準を確認しながら、上場企業への承認を目指し準備を進めてください。

2.健康経営銘柄に申請をする

対象企業として条件を満たせたら、「ACTION!健康経営」ポータルサイトの申請申し込みページから健康経営銘柄への申請を済ませてください。

参考:株式会社 日本経済新聞社 「ACTION!健康経営」ポータルサイト

「新規ID発行サイト」ボタンをクリックし、申請用IDと必要事項を記入します。

登録後届くメールから、健康経営度調査票をダウンロードしてください

3.健康経営度調査に回答する

健康経営度調査に回答し、専用ページに健康経営度調査票をアップロードすれば申請完了です。

申請後は請求書が届くため、申請料を支払ってください。支払いが終わると審査に進みます。

健康経営銘柄の発表時期は、例年3月頃です。スケジュールの例は次のとおりです。

時期

大規模法人部門

中小規模法人部門

5月

健康経営度調査・認定基準の検討

健康経営度調査・認定基準の検討

7月

健康投資WG

健康投資WG

9月

健康経営度調査

審査受付

11月

フィードバックシート送付

2月

内定

内定

3月

健康経営優良法人の発表

健康経営優良法人の発表

参考:経済産業省 健康経営優良法人の申請について

手続きの流れや認定の日時は年により異なる可能性があります。

詳しい情報は、経済産業省のホームページから確認してください。

健康経営銘柄の選定を目指す際のポイント

健康経営銘柄の選定を受けるためにやっておきたいこと、重要となるポイントを3つ紹介します。

現状を正確に把握する

健康経営をやみくもに実施しても、思うような効果は得られません。

健康経営の効果を実感するためには、健康経営の状態や従業員の意見などを把握し、企業課題を明確にすることが大切です。

自社の状態に合った施策を導入して課題を一つひとつクリアしていくことで、健康経営銘柄に近づけます。

まずは従業員との面談の時間を作ったり、従業員サーベイを実施したりしながら、自社の実態や従業員が負担に感じているポイントを明らかにしてください。

健康経営に取り組むことを社内外に公言する

健康経営を推進することは、社内外に公言して広く知らせてください。

会社が積極的に健康経営を推進していることが周知されれば、従業員の健康意識が高まり、取り組みの効果も向上するでしょう。

また社外においては、企業イメージの向上効果を見込めます。

トップマネジメントを絡めて公言できると、全社的な取り組みとしての本気度が従業員に伝わりやすくなります。

社内メールやミーティング、ホームページなどで健康経営に取り組んでいることを社内外にアピールしてください。

取り組み状況の分析・改善を実施する

従業員の感じるストレスや働きにくさは時によって変化します。

そのため健康経営を実践するうえでは、定期的に状況を分析し、適切な取り組みを導入する必要があります。

少なくとも1年に1回は取り組み内容を見直し、状況の改善を目指してください。

また健康経営銘柄の選定を目指す専門の運営チームを作ることも重要です。

専門的な知識や経験を持つ人材が的確に状況を分析することで、スムーズに施策を導入できます。

健康経営銘柄に選定された企業事例5選

実際の認定に向け、健康経営銘柄に選定された企業の施策内容や導入後の効果を紹介します。

株式会社ニッスイ

出典:株式会社ニッスイ

株式会社ニッスイは、水産物に特化した加工食品を販売する食品メーカーです。

「従業員がもっとも重要な財産である」との企業理念を掲げ積極的に施策を導入しており、これまでに5度、健康経営銘柄の選定を受けています。

具体的な施策内容の例は、次の通りです。

  • 禁煙デーの追加
  • 長時間労働削減
  • テレワーク制度導入
  • 喫煙所の閉鎖・縮小
  • 運動促進による肥満対策

株式会社ニッスイでは、水産物由来の機能性成分に着目した施策を導入している点が特徴です。

自社製品を活用して魚食増進を目指すことで、従業員エンゲージメントを高めています。

株式会社ニッスイでは健康経営に取り組んだ結果、喫煙率が5年間で6.9ポイント減少、特定保健指導の割合も減少するといった効果が出ています。

参考:経済産業省 健康経営銘柄2023選定企業紹介レポート

参考:株式会社ニッスイ 健康経営

 

日本国土開発株式会社

出典:日本国土開発株式会社

日本国土開発株式会社は「土木事業」「建築事業」「エネルギーや不動産などの関連事業」の3分野を展開する企業です。

健康経営においては経営トップが健康管理最高責任者となり、トップダウン型で施策を積極的に実施してきました。具体的な施策内容の例は、次の通りです。

  • 介護相談窓口の設置
  • 従業員エンゲージメント調査
  • 現場作業員における週休2日の推進
  • ダイバーシティ&インクルージョンの推進
  • ワークライフバランス研修やキャリア支援会議などの開催

上記の施策に加え、ウォーキングイベントやサークル活動といった「運動を楽しむイベント」も多数開催しています。

イベントを通して「運動を楽しむ」輪が広がったことで、日本国土開発株式会社では運動習慣者比率が前年度比で3.5%上昇しています。

参考:経済産業省 健康経営銘柄2023選定企業紹介レポート

参考:日本国土開発株式会社 健康経営

 

出光興産株式会社

出典:出光興産株式会社

出光興産株式会社は、石油の輸入や販売、ガス開発などのエネルギー業を営む企業です。

「人が中心の経営」という信条のもと、人間尊重の職場風土を醸成しています。

出光興産株式会社では、健康経営の一環として「出光ヘルスアクション」を実施しています。

出光ヘルスアクションの内容は以下の通りです。

  • 毎日体重を測る
  • 毎日朝食を食べる
  • 野菜を1日350g以上食べる
  • 毎日しっかり歩く
  • 煙草を吸わない
  • 週2日以上休肝日をつくる
  • 毎日6時間以上睡眠をとる

上記取り組みの結果、北海道製油所では3年連続で「スポーツエールカンパニー」に認定を受けています。

また食堂メニューは「スマートミール」の2つ星に認証されており、美味しさと健康の面で高く評価されています。

参考:経済産業省 健康経営銘柄2023選定企業紹介レポート

参考:出光興産株式会社 健康経営

 

株式会社SUMCO

出典:株式会社SUMCO

株式会社SUMCOは、半導体用シリコンウエハーの製造・販売を行うメーカーです。

特に「メンタルヘルス」「禁煙」「生活習慣病」の3つに着目して取り組みを実施しており、効果を出している点が特徴です。

具体的な施策の例は、次の通りです。

  • 保健指導の実施
  • 禁煙教室の開催
  • 禁煙補助制度の導入
  • ウォーキングラリーの実施
  • メンタルヘルス研修の実施

株式会社SUMCOではデスクワークで発生する眼の負担を軽減するため、外付けモニターの取りつけも推進しています。

この結果、「目が乾く」「物がぼやける」「目が疲れる」といった症状スコアが下がり、VTD症候群予防の一助となりました。

参考:経済産業省 健康経営銘柄2023選定企業紹介レポート

参考:株式会社SUMCO 健康経営への取り組み

 

キヤノン株式会社

出典:キヤノン株式会社

キヤノン株式会社は、映像機器や半導体などを製造・販売する精密機器メーカーです。

創業当初から導入されている行動方針「健康第一主義」を基盤として、さまざまな取り組みを実施しています。具体的な施策事例は、以下の通りです。

  • 特定保健指導の実施
  • 睡眠セミナーの実施
  • 健康支援アプリの導入
  • 健康診断後のフォロー
  • 敷地内禁煙制度の導入
  • スポーツイベントの開催

上記のような働きかけにより、従業員アンケートでは「睡眠による休養感」のポイントが2007年と比較して16.5ポイント上昇しました。

またストレスチェック受診率は96%と高い記録を出しています。

参考:経済産業省 健康経営銘柄2023選定企業紹介レポート

参考:キヤノン株式会社 健康経営

参考:キヤノン株式会社 キヤノンの健康支援

 

まとめ:健康経営銘柄に選定されるためには働きやすい職場作りが必要

健康経営銘柄は、健康経営優良法人認定を受けた上位500社以内の企業の中で、特に優れた上場企業にのみ与えられる顕彰です。

厳しい選定を突破した企業は、健康経営をリードする企業として社内外に広くアピールできるでしょう。また選定を受ければ、長期的な投資に適した企業かどうかを投資家が見極める際の判断材料にもなります。

健康経営銘柄の選定を受けるため、まずは職場環境を整えてください。

働きやすい職場作りを進めたいと考えている企業には、「KIWI GO」アプリの導入がおすすめです。

KIWI GOを利用すればゲーム感覚で楽しく運動の習慣が身につきます。

従業員同士のイベント開催も手軽にできるため、健康増進やコミュニケーション機会の増加に繋がります。健康経営の施策にお悩みの際は、ぜひKIWI GOを活用してください。