従業員満足度を向上させると、従業員がいきいきと働ける環境が生まれます。

従業員満足度向上のための要素を知り、ポイントを押さえ働きやすい環境を作りましょう。

この記事では従業員満足度の基本知識とその調査方法、従業員満足度の上げ方を記載しています。

導入する際の参考として実際の企業事例も紹介しているので、ぜひ参考にしてください。

 

従業員満足度とは

従業員満足度はEmployee Satisfaction(ES)とも言われており、企業で働く従業員の満足度を表した指標です。

給料や役職だけでなく、仕事のやりがいや職場環境、福利厚生などが従業員にとって十分なものであるかどうかを表しています。

調査は主にアンケートによって実施され、従業員の満足度が低い項目は改善すべき課題として明確になります。

定期的に実施することで、課題が改善され、従業員満足度の高い環境を作ることが可能です。

 

従業員満足度の中心となる5つの要素

従業員満足度を向上させるには、従業員満足度の構成要素を知ることが重要です。

 

共感できる企業ビジョン

企業が掲げているビジョンが明確であり、従業員が共感できるものであれば従業員満足度が高まります。

もしもビジョンに共感できない場合、従業員は「会社にやらされている」「会社の指示にしたがっているだけ」と感じ、ストレスが溜まってしまいます。

一方、従業員が企業のビジョンに共感できれば企業への信頼が高まり、方針に従った的確な判断をしようとします。

 

上司による適切な評価

上司と良好な関係が築けており、上司からの評価に対して「適正だ」と感じれば従業員満足度は高まる傾向にあります。

適切な評価は、仕事への満足感や安心感を生み、モチベーションを保つ大きな要因になります。

 

仕事への適正とやりがい

自身の特性と仕事が合っており、「仕事が上手くいっている」と感じる従業員はモチベーションが高く、自己投資に意欲的に取り組みます。

企業が適切な箇所に人員を配置することで、満足度はさらに高まります。

 

良好な人間関係

従業員は1日の大半を職場で過ごすため、上司だけでなく、先輩や同僚、部下などさまざまな人との関係が良好であることは、従業員の満足感に繋がります。従ってコミュニケーションが取りやすい環境づくりや、積極的に従業員同士の交流のきっかけを作るなど、相互理解を促すことが重要です。

 

充実した職場環境

ワークライフバランスや業務量が従業員にとって適切であれば、満足度は高まります。

快適な職場環境作りを進めるために参考となるのが、厚生労働省の「快適職場指針」です。

快適職場指針では次の4つの視点で施策を考えることが望ましいとされます。

  • 作業環境:不快に感じない空気の汚れ・臭い・温度などを適切に維持
  • 作業方法:心身の負担を軽減するため、治から作業について作業方法を改善
  • 疲労回復支援施設:効果的に疲労・ストレスを癒せる設備を設置
  • 職場生活支援施設:洗面所・トイレなどを清潔に保つ

出典:厚生労働省 職場の安全サイト 労働安全衛生法(安衛法)における快適職場づくり

従業員の不満を減らすため、まずはこの4つの視点をもとに現状の問題点を洗い出すのが良いでしょう。

 

従業員満足度が注目される背景

従業員満足度が注目される背景には、生産年齢人口の減少と人材の流動化が挙げられます。

厚生労働省の「日本の人口・就業状況と労働生産性、新技術の導入状況等について」によると生産活動に従事することの多い15~64歳の割合は、減少傾向にあります。

出典:厚生労働省「日本の人口・就業状況と労働生産性、新技術の導入状況等について」

 

少子高齢化が進めば、今まで通り人材を確保するのは困難です。

そして、総務省統計局の調査によると、2017年から転職者比率(就業者に占める転職者の割合)の推移は上昇しています。

出典:総務省統計局「増加傾向が続く転職者の状況 ~ 2019 年の転職者数は過去最多 ~」

 

そして転職者について、前職の離職理由を「より良い条件の仕事を探すため」としている人は2012年から増加しています。

出典:総務省統計局「増加傾向が続く転職者の状況 ~ 2019 年の転職者数は過去最多 ~」

 

現役世代の減少、転職者の増加により、今後企業の人材確保はさらに困難になります。

この状況を打破するため企業は従業員満足度を上げ、労働者にとって魅力的な環境を作る必要があるのです。

 

従業員満足度調査とは

Enployee Satisfaction調査の略称であり、従業員の満足度をアンケートやインタビューなどで評価することを従業員満足度調査(ES調査)といいます。

アンケートを活用し調査を行う企業が多いですが、調査方法に決まりはありません。

ES調査をすることで、現状の課題点が明確になります。

アンケートによるES調査の場合、例として次のような質問に対し回答をいただきます。

  • 経営層の評価:企業の組織や風土、企業理念は浸透しているか
  • 制度の評価:評価は適当か、成長の機会は与えられているか
  • 仕事への満足度:やりがいはあるか、業務量は適切か、成長の実感はあるか
  • 上司の評価:相談しやすいか、評価についてどう感じているか
  • 職場の状態:人間関係は良好か、職場の決まりに不満はないか、コミュニケーションはちゃんととれているか
  • 福利厚生の充足度:現状の福利厚生に満足しているか

自社に最適な質問項目を設け、取り組むべき問題点を抽出します。

 

従業員満足度調査を行うメリット

ES調査を行うことで、今まで表面に出てこなかった社内の課題を把握できます。

普段の働く姿や上司からの評価だけでは、従業員が内心抱えている不満やモチベーションの状態を明確にできません。

従業員の気持ちを汲み取ることができない状態だと、働きにくい環境が続いてしまい、離職や休職につながる可能性もあります。

また、不満以外に「もっとこうすれば良くなるのに」といった有効なアイデアを持っている従業員もいます。

現場から出たアイデアは非常に貴重で有用であるため、従業員満足度向上のための取り組みに生かすことが大切です。

従業員の不満やアイデアを拾い上げるには、アンケートやインタビューでES調査を行うことが大切です。従業員の実態がわかれば、適切なアプローチで労働環境を見直せます。

 

アンケートで行う従業員満足度調査の手順

多数の従業員の意見を聞く際は、アンケートで調査を行うのが標準的です。ここからは、アンケートで従業員満足度調査を行う手順を紹介します。

 

1.目的の説明と周知

アンケートを有意義なものにするためには、従業員たちから理解を得なければなりません。

はじめにアンケートを実施する目的を十分に説明し、社内に周知させましょう。

アンケートを実施する前に、社内報やポスター、メールなどを使いアンケートを行う旨や日時、アンケートの目的を伝えてください。

仕事の都合上アンケートに参加できない社員がいることも考え、実施日程にはある程度幅を持たせておくのがおすすめです。

 

2.質問項目の作成

次に、質問項目を作成します。

調査にあたって多くのデータを集めようと考える企業は多いですが、質問数が多すぎると回答時間が長くなり従業員の負担になります

質問数はなるべく減らし、わかりやすく答えやすい内容にしてください。

現状を正しく把握するため、従業員の気持ちに寄り添ってアンケートを作成することがポイントです。

仕事満足度調査における質問の例は、次のとおりです。

  • 今の業務にやりがいを感じますか
  • 今の業務で自身の成長を感じますか
  • 1日の業務量は適切ですか

ES調査は具体的な課題を抽出することが目的のため、回答数よりも回答率を重視します。

1度ですべてを評価しようとせず、複数回実施することを想定して作成してください。

 

3.結果の分析

アンケート結果の集計と分析を行い、現状の環境で十分な項目と不十分な項目に分類します。

分析結果から、課題を解決するために必要な施策を検討してください。どのような課題があるか明確に示すことで、経営層が納得できる施策を立案できます。

翌年以降もデータを蓄積できるよう、正しく記録・管理することも重要です。

 

従業員満足度の向上要因と低下要因

従業員満足度を向上させる考え方として、ハーズバーグの二要因理論があります。

二要因理論は、従業員満足度には「向上させる動機付け要因」と「低下させる衛生要因」の2種類があるとする考え方です。

動機付け要因とは、「達成」や「承認」といった仕事のやりがいや満足度に関する要素です。

そして衛生要因とは、「仕事と家庭の両立」「福利厚生」「人間関係」など、環境に関する要素になります。

動機付け要因が高いと仕事への満足度が高くなります。しかし、低いからといってすぐに不満が出るものではありません。

一方、衛生要因が達成されないと仕事への不満が溜まります。しかし、満たされたからといって仕事への満足度が上がる原因にはなりません。

現状の環境を見直したあと、従業員自身がやりがいを持てるようサポートすることでモチベーションが上がり、従業員満足度も向上します。

 

従業員満足度が低いと起こること

従業員満足度が低下すると、さまざまなマイナスの影響が発生します。従業員満足度が低下した時に起こることを把握しておくことはとても大切です。

 

従業員の視野が狭くなる

満足度が低下した状態の従業員は自身の業務以外に関心を示さなくなり、視野が狭くなります。

この状態で企業が改善をしても、一時的な業務の圧迫にばかり注意が向いてしまい、負担が増したと不満を持ちやすくなります

従業員の視野が狭いと感じた場合は、まず職場環境を見直しましょう。

 

仕事のモチベーションが下がる

従業員満足度が低い従業員は、積極的に働かなくなります。また、惰性で働きがちなので、改善できる業務があっても行動に移せない傾向にあります。

従業員のモチベーションが低いと感じた場合、無理して従業員に変化を望むのではなく、企業から従業員へ寄り添いましょう。

 

ネガティブ思考が広がる

満足度の低い労働環境で働いていると、従業員は仕事に対してネガティブな感情を抱きます。

ネガティブな感情が部署全体に蔓延してしまうと、コミュニケーションが減り職場の活気はますますなくなります。

まずは従業員の負担を減らせるようなサポートを行い、コミュニケーション活性化に向けた施策を導入しましょう。

 

従業員満足度アップで得られるメリット

従業員満足度が低下するとネガティブでコミュニケーションの少ない職場になってしまう可能性があるため、従業員満足度を向上させることは重要です。

ここからは、従業員満足度を上げるメリットについて、紹介します。

 

モチベーションが向上する

従業員満足度が高い従業員は仕事にやりがいを感じており、生き生きと働けています。

従業員のモチベーションが高いと、従業員は業務に対して自主的に働く傾向があり、課題の解決やアイデアの提案を自ら行うようになります。

モチベーションの高い従業員が増えれば職場の雰囲気も良くなり、働きやすい環境が作られます。

 

優秀な人材が定着する

満足度の高い職場環境で働く従業員は「長くこの会社で働きたい」と感じるため、人材の定着にもつながります。

従業員が会社に不満を持ったまま言い出せない状態では、突然の退職や休職に繋がります。従業員の不満を洗い出し最適な対策を取ることで、人材の流出を防ぐことができます。

 

サービスの品質が向上する

職場に満足し長く働く従業員は企業への帰属意識が高く、自社のサービスや商品に愛着を持ちやすくなります。

その気持ちが業務姿勢に反映されることで質の高いサービスを顧客に提供できるようになるため、顧客の満足度も向上します。

 

従業員満足度を向上させる取り組み

従業員満足度が向上すれば企業にも従業員にも、大きなメリットがあります。満足度の高い状態を作る取り組みの例は、次のとおりです。

 

企業が掲げるビジョンの共有

企業が掲げるビジョンに共感できれば、同じゴールを見つめて仕事ができます。次のような施策で企業のビジョンを従業員に伝えてください。

  • 社内報などで定期的にビジョンを広める
  • 企業のSNSなどコミュニケーションツールを活用した情報発信をする

企業が発信していき社内にビジョンが浸透すれば、当事者意識をもって積極的に働く従業員が増え仕事へのモチベーションが高まります。

 

職場環境の整備

職場環境を整備することで従業員満足度は高まります。環境整備には、次のような施策が効果的です。

  • テレワークなどの導入で働き方を多様化させる
  • 資料のデジタル化により業務負担を軽減させる
  • コーヒーマシンの設置などリラックスできる環境設定でストレスを軽減させる

業務効率化、労働時間の削減に取り組めば、従業員にとって働きやすい職場環境に近づけます。

 

福利厚生の充実

従業員が仕事にやりがいを感じていても、福利厚生が充実していないと不満が溜まります。次のような福利厚生を導入し、制度の充実を図りましょう。

  • 育児支援・介助支援の充実
  • 健康診断助成
  • カフェテリアプランで自由にサービスを利用

働きやすく、モチベーションがあがる制度を整えることで、従業員はいきいきと働いてくれます。

 

コミュニケーションの促進

従業員同士のコミュニケーションが活性化すれば、社内の雰囲気が良くなり従業員のストレスが軽減されます。コミュニケーションの促進には、次のような施策がおすすめです。

  • 社内イベントを開催
  • コミュニケーションツールを活用した情報共有や情報発信
  • 部活動を作り趣味を通じた交流

他にもミーティングでは前向きな発言をするようにルールを設けたり、社内SNSなどを導入してコミュニケーションを促したりする仕組みを作ることも有効です。

 

ワークライフバランスの両立

ワークライフバランスを充実させ仕事以外の時間も大事にできる状況だと、満足度は向上します。

さまざまな働き方が実現できるよう、次のような制度を導入することで従業員が生き生きと働けるようになります。

  • フレックスタイム制度の導入
  • アドレスフリーの導入
  • ノー残業デーの設置

職場に合った制度の導入で、働きやすい環境を作りましょう。

 

従業員満足度を向上させた企業の成功事例

従業員満足度向上に成功した企業の取り組みを知り、自社の施策に反映させることで適切なアプローチができます。ここからは、実際の企業の取り組みを5つ紹介します。

 

アルメック株式会社

出典:アルメック株式会社ホームページ

 

リサイクル事業をするアルメック株式会社は「物心両面の充足と幸せ」を目標に健康経営やジョブローテーション、学習の場の提供といった複数の施策を実施しました。

そして縦割り意識改善として、期間限定で他部署の業務を経験するジョブローテーションを実施。部署の垣根を越えた取り組みに励んでいます。

出典:アルメック株式会社ホームページ「50期経営品質取り組みレポート」

取り組みの結果、従業員満足度は36%から85.7%に増加しました。

 

株式会社ルミネ

出典:株式会社ルミネホームページ

不動産賃貸業やショッピングセンターなど幅広く展開している株式会社ルミネは、人手不足の解消のため従業員満足度向上の施策を実施しました。

  • 12日間の新人研修
  • 先輩のサポートがあるペア勤務制度
  • 英語研修

多様な研修制度は、やる気のある従業員のモチベーションをさらに高めるのに効果的です。

参考:株式会社ルミネホームページ「コンシェルジュ職のキャリア」

 

株式会社ディー・エヌ・エー

出典:株式会社DeNAホームページ

ゲーム事業やスポーツ事業をしている株式会社ディー・エヌ・エーは「社員が熱意をもって働ける環境作り」を目的に、以下6つの人事プロジェクト「フルスイング」に取り組んでいます。

  • シェイクハンズ制度:従業員本人と他部署の本部長が合意で異動できる
  • クロスジョブ制度:希望すれば業務時間の最大30%まで他部署の仕事を兼務できる
  • 副業制度:キャリア形成の機会をサポートする目的で社外副業ができる
  • フィードバックプログラム:記名性でマネージャーも従業員からフィードバックを受けられる
  • キャリア相談室:事業部経験と人事キャリアを持つアドバイザーによる仕事の悩み相談ができる
  • キャリアマネジメントアンケート:現在の仕事のやりがいなどを毎月調査する

このような試みを継続した結果、「キャリアマネジメントアンケート」では仕事に対してやりがいを感じている従業員が71.2%となりました。

参考:HR NOTE「DeNAが仕掛ける人事プロジェクト「フルスイング」とは|その具体的施策や事例をご紹介!」

また、能力を活かせていると感じている従業員も84.2%と多く、職場満足度が高いことが分かります。

 

株式会社サイボウズ

出典:株式会社サイボウズホームページ

株式会社サイボウズはIT企業でグループウェアビジネスを展開しています。

株式会社サイボウズは人の長所を上手く組み合わせた組織作りを目標に、従業員一人一人が一番企業にとって貢献できる働き方ができるよう「働き方宣言制度」を導入しました。

出典:株式会社サイボウズホームページ「ワークスタイル」

 

「働き方宣言制度」は、勤務時間や勤務日数などが変則的な従業員でも希望したシフトで働くことができる制度です。

一例ですが、「働き方宣言制度」では次のようなシフト希望を出すことが可能です。

  • 基本的に9時から17時まで出勤
  • 日によっては18時退社にしても大丈夫
  • 月に3日ほど、在宅勤務となる可能性がある

「働き方宣言制度」では柔軟に従業員が働く時間や場所を決められるため、プライベートと仕事の両立がしやすくなり従業員の負担は減ります。

参考:株式会社サイボウズホームページ サイボウズ式「自由すぎる……! サイボウズが最近はじめた新しい「働き方制度」について聞いてみた」

 

取り組みの結果、離職率は急激に減少し3~5%になりました。

参考:株式会社サイボウズホームページ「ワークスタイル」

 

マクドナルド社(カナダ)

出典:McDonald’s Canadaホームページ

ファーストフード店として有名なマクドナルド社(カナダ)では、シフト調整やメンバーとの連絡ができるツールとして、従業員とアルバイト向けにスマートフォンアプリを導入しました。

導入したきっかけは、食品の安全性問題。アプリの導入を通し問題が発生しても従業員を大切にするといったポジティブなメッセージを発信し、従業員たちから共感を獲得しています。

 

まとめ:従業員の声を聞き従業員満足度向上に向けた取り組みを始めよう

従業員満足度を向上させるためには、アンケートなどで従業員の本音に耳を傾けることが重要です。

回答しやすいアンケートを作るだけでなく、普段から従業員が意見を出せるよう風通しのいい職場環境を作りましょう。

社内コミュニケーションについて課題を感じているなら、アプリサービス「KIWI GO」の導入も検討してください。

共通の趣味で従業員同士がつながるKIWI GOのギルド機能を使えば、世代や部署を越えた交流のきっかけが作れます。

コミュニケーションを活性化し、従業員満足度を向上させましょう。