働き方改革を実行するうえでは、ワークライフバランスへの意識が大切です。

しかし「取り組みを実行してもうまく進まない」「ワークライフバランス実現につながる取り組みがわからない」と悩む企業は多いです。

そこでこの記事では、働き方改革を進め、ワークライフバランスを実現するために必要なことを紹介します。

ワークライフバランス実現のために必要な取り組み内容や事例も紹介するため、当記事を参考にして働き方改革を促進させましょう。

 

働き方改革とは

働き方改革とは働く人それぞれの事情に応じ、生活と仕事の両方が充実した職場環境を作ることです。

現在の日本は、「少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少」「育児や介護との両立など働く方のニーズの多様化」などの課題に直面しています。

課題を解決するため、厚生労働省を中心に以下の取り組みが進められています。

  • 長時間労働の是正
  • 雇用形態に関わらない公正な待遇の確保
  • 柔軟な働き方がしやすい環境
  • ダイバーシティの推進
  • 賃金の引き上げ、労働生産性向上
  • 再就職支援、人材育成
  • ハラスメント防止対策
  • 法律の改正

多様な人材が働くうえで、今後も働き方改革は重要です。本格的な取り組みがまだの企業にも、積極的な行動が求められます。

 

ワークライフバランスとは

ワークライフバランスとは、働くすべての人が仕事と生活(育児・介護・学習・地域活動など)の両方を充実させることです。充実した仕事は生活面に心のゆとりを与え、生活の充実は仕事のパフォーマンスを向上させます。ワークライフバランスの向上は、会社と従業員に良い循環を生み出します。

 

ワークライフバランスの憲章とは

国が定めるワークライフバランスの憲章において、ワークライフバランスは「仕事と生活の調和が実現した社会」と定義されています。

 

憲章のなかでは、ワークライフバランス実現のため以下の条件が必要と示されています。

1)就労による経済的自立が可能な社会

  • 若者が学校から職業に円滑に移行できること。
  • 若者や母子家庭の母等が、就業を通じて経済的自立を図ることができること。
  • 意欲と能力に応じ、非正規雇用から正規雇用へ移行できること。
  • 就業形態に関わらず、公正な処遇や能力開発機会が確保されること。

2)健康で豊かな生活のための時間が確保できる社会

  • 企業や社会において、健康で豊かな生活ができるための時間を確保することの重要性が認識されていること。
  • 労働時間関係法令が遵守されていること。
  • 健康を害するような長時間労働がなく、希望する労働者が年次有給休暇を取得できるよう取組が促進されていること。
  • メリハリのきいた業務の進め方などにより時間当たり生産性も向上していること。
  • 取引先との契約や消費など職場以外のあらゆる場面で仕事と生活の調和が考慮されていること。

3)多様な働き方・生き方が選択できる社会

  • 子育て中の親、働く意欲のある女性や高齢者などが、子育て期、中高年期といった人生の各段階に応じて多様で柔軟な働き方が可能となる制度があり、実際に利用できること。
  • 多様な働き方に対応した育児、介護、地域活動、職業能力の形成等を支える社会的基盤が整備されていること。
  • 就業形態に関わらず、公正な処遇や能力開発機会が確保されること。

引用元:内閣府 仕事と生活の調和推進のための行動指針

憲章のなかでは、ワークライフバランスを実現するために必要な事項が述べられています。ワークライフバランスの取り組みを成功させるための参考にしましょう。

 

ワークライフバランスに関するありがちな誤解

ワークライフバランスは、仕事と生活の比率だけを考えるものではありません。ワークライフバランスは、生活と仕事を充実させることでさらなる好循環を促すものです。

単に仕事の時間を減らすのではなく、社員の仕事とプライベートを両方充実させる、といった意識で取り組みを行うことが大切です。

 

働き方改革とワークライフバランスの関連性

少子高齢化で生産人口が減ってきている問題から、当初、働き方改革は業務の効率化、女性・高齢者の活躍推進を主な目的として推進されてきました。

しかし近年では、健康経営やワークライフバランスなどの要素がより注目されています。

働く社員が健康な状態でプライベートを充実させながら働くことができれば、従業員の意欲がアップし、よりクリエイティブな仕事にも集中できます。

働き方改革は特定の従業員のためのものではなく、従業員全体の満足度アップにつながる重要な要素です。

健康経営、ワークライフバランスといった言葉にも注目し、必要な対策を行うことが従業員全体にポジティブな影響をもたらします。

 

ワークライフバランス向上で得られる企業のメリット

ここからは、ワークライフバランス向上への取り組みが企業に与えるメリットについて見ていきましょう。

離職率が低下する

ワークライフバランス向上への取り組みは、離職率の低下に関係します。下記は、ワークライフバランス向上への取り組みと離職率の関連性を表した表です。

参考:厚生労働省 ワークライフバランス推進のための取組と離職率の関係について

 

最も多いワークライフバランス向上への取り組みは、「⑤休暇・急な早退等を申請しやすい職場雰囲気の醸成」です。休んでも大丈夫と思える環境が、離職率に大きく関連していると言えます。

 

続いて「⑰数字時間単位、半日単位など柔軟な有給取得制度の導入・推進」「⑩長時間勤務労働者やその上司等に対する指導・助言」が多く実施されていました。

 

柔軟な休暇制度を導入する、長時間労働を是正するといった取り組みを行えば、さまざまな事情により長時間連続で働けない社員も安心して勤務できます。

離職率が低下すれば、これまでの業務で得た経験を継続して活かせるため、業務の効率化が期待できます。

離職率を低下させ、培ってきたスキルを活かしてもらえる環境を作りましょう。

 

優秀な人材が確保できる

現代では多様な働き方が求められており、「充実した生活が送れるか」を重視する人材が増えています。

以下は、国内最大級の就活情報提供サイトを運営するポート株式会社が303名の卒業予定の大学生を対象に、企業選びで重視するポイントを調べた結果です。

参考:ポート株式会社 就活意識調査

 

最も多かったのが「企業の雰囲気や社風」で73.6%です。続いて「ワークライフバランス」が60.7%であり、企業の安定性を上回っています。

少子高齢化が進み働く若い世代が減少していることから、優秀な人材確保に向けた競争も激化しています。

ワークライフバランス向上への取り組みを行えば、学生からの評価が高まります。若く優秀な人材を確保するため、社員のワークライフバランスを向上させることは大切です。

 

パフォーマンス低下を防止できる

充実した生活が送れない場合、仕事へのパフォーマンスは低下します。以下は、仕事のパフォーマンスの低下度と健康との関連を表したものです。

参考:ニッセイ基礎研究所 2018年度 被用者の働き方と健康に関する調査

不眠・メンタルの不調・満身的な疲労・ストレスは仕事パフォーマンスを低下させる上位の要因です。

無理な労働を減らし私生活を充実させることで、社員が不調になる要因を減らしましょう。

 

ワークライフバランス実現に向けた取り組みとは

ここからは、ワークライフバランスを実現するための取り組みを政府が発表した行動指針に沿った観点で紹介します。

憲章では、「仕事と生活の調和が実現した社会の姿」を実現させるためには以下3つの項目が必要だと述べられています。

  • 就労による経済的自立が可能な社会
  • 健康で豊かな生活のための時間が確保できる社会
  • 多様な働き方・生き方が選択できる社会

参考:内閣府 仕事と生活の調和推進のための行動指針

以降よりそれぞれの項目の意味や取り組み事例を解説します。

 

経済的自立に関する取り組み例

ワークライフバランスを実現させるための項目には、「経済的自立」があります。

経済的自立は、働く人の経済的な不安を取り除くことで仕事と生活への自立をサポートするものです。ここからは経済的自立に向けた取り組みを紹介します。

 

非正規雇用から正規雇用へ繋がる制度導入

経済的自立に影響を与える課題の1つが、非正規雇用者数の上昇です。

以下は、労働力調査結果に関するデータです。非正規雇用者の人数と比率の推移を表しています。

参考:総務省 労働力調査

 

このデータから、非正規労働者の人数や比率が年々増加傾向にあることがわかります。

非正規雇用の場合、生活における経済的な不安が原因で充実した生活を送るのは難しい可能性が高いです。

希望して非正規労働者となっている労働者もいますが、正規雇用を望む労働者は少なくありません。

生活の安定を求める従業員のため、非正規雇用から正規雇用へ移行できる制度の導入を検討しましょう。

 

トライアル雇用の導入

トライアル雇用とは、職業経験の不足などから就職が困難な求職者等を原則3か月間雇用することです。トライアル雇用を経験することで、労働者は無期雇用のきっかけを掴めます。

長く働ける職場に出会えれば経済的な不安が減り、ワークライフバランス向上に繋がります。

また、トライアル雇用制度があれば労働者の性格やスキルを理解したうえで無期雇用へ移行できるため、企業側にもミスマッチを防げるという大きなメリットがあります

人柄重視で新しく社員を確保したい企業は、トライアル雇用の導入を検討してみてはいかがでしょうか。

 

健康で豊かな生活のための時間の確保に関する取り組み例

ここからは、健康で豊かな生活を送るための時間の確保に関する取り組み例を紹介します。

残業時間の削減

残業時間を削減すれば、余暇に使える時間が増えプライベートが充実します。残業時間削減に取り組むと、以下のような効果が得られます。

  • 健康を害する長時間労働がなくなり健康になる
  • メリハリの効いた生活で時間あたりの生産性が向上する
  • 残業代を減らせる
  • プライベートに使える時間が広がり、私生活が充実する
  • 働きたい企業としてイメージの向上に繋がる

 

残業時間を削減するための具体的な取り組みも見ていきます。

  • 残業しない日を作る
  • 社員同士でそれぞれの残業時間を共有する
  • 残業する必要がある社員は申告書を記載する

一方、残業禁止の日を作っても、翌日の業務負担が増えてしまえば逆効果です。

また、部下の残業を減らすために上司の労働時間が増えては、ワークライフバランスが向上したとはいえません。

残業時間を減らすうえでは、固定業務の削減や見直しを進めることが大切です。

 

評価制度の改善

現在の働き方の評価では、休まず働く社員が高く評価されるといった雰囲気が残っています。

そのため長時間労働が評価される状態では、生活面における時間の確保が損なわれ、仕事中心となってしまいます。改善するため、以下のような評価制度を見直しましょう。

  • 評価基準を明確に提示する
  • 社内で働く社員の意見を取り入れた評価基準を取り入れる
  • 評価に直結しない点を明確に提示する

このような取り組みを行い、長時間残業や休まず働く人が評価に繋がるという意識を取り除くことが大切です。評価基準を明確にすることで、社員の仕事に対するモチベーション向上にも繋がります。

 

フレックスタイム制の導入

フレックスタイム制とは、1日の就業時間を社員が自ら決めて働ける制度です。

育児や介護などで朝から出社できない場合であっても、フレックスタイム制があれば仕事時間をずらせます。多様な働き方をサポートするうえで、フレックスタイム制は効果的です。

 

休暇取得の促進

休暇が取れず仕事を優先した結果、私生活に悪影響が出るケースは少なくありません。状況を打開するためには、社員が休暇を取りやすい環境を作ることが重要です。

 

取り組みには、次のような例があります。

  • 全社員が年次休暇10日以上取得することを目標に掲げ、全社員に周知する
  • 部署間の連携や情報共有を高め、休みやすい環境をつくる
  • 時間単位での年休制度を導入し、短時間の用事でも対応できる環境をつくる

休暇取得を促進する際は社員を強制的に休ませるのではなく、休みやすい環境を整えることが大切です。

 

多様な働き方に関する取り組み例

ワークライフバランスの実現のために必要な項目として、憲章では「多様な働き方・生き方が選択できる社会」が挙げられています。

そこでここからは、個々のライフスタイルに合わせた働き方を実現するための取り組みについて紹介していきます。

 

働き方に関する新しい制度を導入する

多様な働き方や生き方を実現させるための取り組みには、テレワークや時短勤務の導入といった新しい制度の導入があります。

テレワークを導入すれば、外出が難しい状況の従業員も在宅で働けます。また、通勤時間をプライベートの時間として使えるため、ワークライフバランス向上にも役立ちます。

また2009年の育児・介護休業法の改正により、3歳に満たない子を養育する従業員が時短勤務を利用できる制度を整えることが各事業主に義務付けられました。

 

現在は従業員がテレワークや時短勤務を不要としていても、今後急な介護・育児が必要になり制度を使用したくなる場合もあります。

テレワークや時短勤務の制度を整え、従業員それぞれの状況に適した働き方を実現させましょう。

 

子育て・介護等の支援

共働き世帯が増加している現在、仕事が理由で子育て・介護に注げる時間が少ないと悩む社員は少なくありません

子育てや介護の時間を十分に確保できない状況では、仕事に対する集中力が落ちてしまい、社員本来の力が発揮できません。

子育て・介護の支援に向けた企業の取り組み例は、次のとおりです。

  • 1時間単位で有給が取得できる制度を導入する
  • 介護セミナーを実施する
  • 育児休暇制度の利用を促進する

働きながら子育てや介護が充実して行える環境を作りましょう。

 

再就職や継続就業ができる機会の提供

育児や介護などが理由で、やむを得ず退職を検討する社員もいます。また新たなスキルを習得するため、一時的に留学したいという社員も少なくありません。

社員の希望を実現するために効果的なのが、再就職や継続就職ができる機会の提供です。

会社に復帰できる機会があれば社員は多様なライフプランを実現しやすくなり、充実した生活に繋がります。また人材確保が難しい現在、職務経験を積んだ人材が再び活躍することは企業にとっても大きなメリットです。

人材不足に悩む企業は制度を見直し、社員が長期的に仕事から離れても復帰できる環境を整えましょう。

ワークライフバランス向上に取り組む企業の事例

ここからは、ワークライフバランス向上に関連する企業の具体的な取り組みを紹介します。

株式会社栄水化学

出典:株式会社栄水化学

1959年創業された建物クリーニング事業や家事支援事業などいくつもの事業を展開する株式会社栄水化学では、『一仕事二人制』という制度が導入されています。

一仕事二人制では、誰もが休んだ人の業務を行えるよう新入社員を3年間で全部署に配属。業務内容をマニュアル化し、自分の受け持つ主な業務以外の研修も行うなどして、社員が休みやすい環境を作っています。

取り組みの結果、皆が仕事内容を共有することで、業務効率の改善や業務時間の短縮にも繋がっています。

参考:内閣府 社内におけるワーク・ライフ・バランス浸透・定着に向けたポイント・好事例集

 

株式会社ベネッセコーポレーション

出典:株式会社ベネッセコーポレーション

 

株式会社ベネッセコーポレーションでは、出産・育児休暇や時短勤務制度を推進することで、女性が働きやすい職場づくりを目指してきました。

結果、2500人いる従業員のうち毎年約100人近くの従業員が育児休暇を取得し、150名ほどが時短勤務を利用している状況です。

また、有給休暇取得促進や在宅勤務制度の導入、残業時間の削減などワークライフバランス向上への取り組みにも力を入れてきました。

しかし残業時間削減に向けた『月平均残業時間の目標設定』では、残業時間ゼロという目標が達成できず、一度失敗。業務の状況に合わせ柔軟に目標を変える方針に転換しました。

取り組みの結果、現実的な目標設定が可能となり、目的を達成できる従業員が増えました。

参考:経団連 働き方改革事例集

 

宇部興産株式会社

出典:宇部興産株式会社

宇部興産株式会社は、「個性と多様性を尊重し、健康で働きやすい職場をつくる」ことを目的に取り組みを行いました。

宇部工業株式会社では以下の8項目について取り組みを実施しています。

  • 総実労働時間短縮
  • フレックスタイム勤務制度
  • テレワーク勤務制度
  • 短時間勤務制度
  • 年次有給休暇の取得促進
  • 積立休暇制度
  • 年次有給休暇、積立休暇以外の休暇
  • 年間休日の増加

総実労働時間短縮の取り組みでは、あらかじめ月の残業時間を設定し、超過する際には、上司に報告する仕組みを取っています。また労使協議会を設置し、時間外労働の状況を確認し管理目標値を設定するなどして対策を協議しています。

結果、所定外労働時間が月あたり22時間の減少。総実労働時間を45時間削減することに成功しました。

現在も出社時間などに囚われない新しい働き方の導入を通じ、すべての社員が働きやすいと感じる職場作りに取り組んでいます。

参考:厚生労働省 働き方・休み方改善ポータルサイト

 

まとめ:ワークライフバランスを実現し働き方改革を進めよう

働き方改革が注目される中、ワークライフバランスの重要度も高まっています。

ワークライフバランス向上により生活と仕事との調和が生まれれば、働く人や企業の両方に良い効果が生まれます。

ワークライフバランスを実現させるために必要な事項や取り組み事例を参考にして、働き方改革を促進しましょう。

ワークライフバランスを実現するための憲章には「健康で豊かな生活ができるための時間を確保すること」という内容があります。

 

充実した暮らしを送るためには、健康が欠かせません。しかし、テレワークの導入により運動不足の従業員が増えてしまい、健康問題が懸念されています。

 

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KIWI GOにはゲーム感覚で楽しく運動できる機能があり、自然な運動の習慣化に繋がります。

また、従業員同士の交流を促すギルド機能もあり、コミュニケーション不足の解消にも役立ちます。

 

ワークライフバランスを整えるための基盤として、健康は非常に重要です。従業員の健康状態を向上させるため、ぜひ検討してください。