近年、従業員が健康で生き生きと働ける職場環境が企業価値として評価されています。
利益だけを重視するのではなく、従業員の健康にも配慮して積極的な取り組みを行う企業は今後も増えていくでしょう。
このような価値観の変化に伴い注目されているのが、ウェルビーイング経営です。
ウェルビーイング経営ではメンタル面でのケアが非常に重視されており、具体的な取り組みを検討している企業は少なくありません。
そこで当記事では、ウェルビーイング経営におけるメンタルヘルスケアの取り組みの必要性や取り組み方法、企業の事例を紹介します。
メンタルヘルスケアに取り組み、ウェルビーイング経営を実現させるための参考にしてみてください。
目次
ウェルビーイング経営とは
ウェルビーイングとは、個人の権利や自己実現が保証され、身体的、精神的、社会的に良好な状態のことを示します。
つまりウェルビーイング経営とは、ウェルビーイングの概念を重視した経営方針といえます。
ウェルビーイング経営を実現させるためには、従業員が生き生きと前向きに働ける環境を作ることが大切です。
ここからはウェルビーイング経営の現状と内容について、より詳しく解説します。
ウェルビーイング向上は日本社会の発展において重要
厚生労働省の『雇用政策研究会報告書概要(案)』では、以下の背景により今後の日本社会の発展において、ウェルビーイングの向上が大切だとされています。
- 日本の人口は、1億2,671万人(2017年)から2040年までに1億1,000万人程度まで減少する見込みがある
- 65歳以上の高齢化率も2040年頃には27.7%から35%まで上昇する見込みがある
- AIなどの技術的な進歩により、働き方や価値観の多様化への変革が予想されている
労働人口が減少するなか、従業員一人ひとりの力は非常に重要です。
AIなどの技術を積極的に取り入れ、従業員の働き方を見直すことで能力発揮を促すのは生産性維持・向上のため必須といえます。
「ウェルビーイング」と「QOL」との違い
QOL(Quality Of Life)は、生活の質を意味します。
何を幸福と感は、自由に使えるお金や時間に加え、人間関係や健康状態などの状況からも影響を受けるとされており、ゆとり感感じるかは個人によって異なるため統一された定義はありませんが、生き生きと暮らすことでQOLは向上するとされます。
ウェルビーイングはQOLが維持された状態といえるため、ウェルビーイング経営においてQOLは重要です。
QOL向上には精神的な健康が必須であり、QOLを高めればメンタルヘルスの改善にもつながります。
ウェルビーイングとメンタルヘルスケアの関係
ウェルビーイング経営は身体的、精神的、社会的に良好で幸福な状態を目指す経営指針です。
精神的な健康のため、ウェルビーイング経営においてメンタルヘルスケアは欠かせません。
ここからはメンタルヘルスケアが重要な理由、ウェルビーイングとの関わりについてより詳しく解説します。
「精神的なゆとり」は幸福度に影響する
株式会社第一生命経済研究所の調査によると、日常生活の中で、精神的にゆとりがある人は幸福度が高い傾向にあることがわかります。
参考:株式会社第一生命経済研究所 第11回ライフデザインに関する調査
また調査結果から、幸せを感じるためには精神的・経済的・時間的な「ゆとり感」が関係していることも明らかになりました。
従業員のメンタルを重視しゆとりを持って働ける環境を作れば、幸福感が高まりウェルビーイングにつながります。
精神的なゆとり感は、自由に使えるお金や時間に加え、人間関係や健康状態などの状況からも影響を受けるとされており、ゆとり感を確保するため、メンタルヘルスケアは非常に重要です。
メンタルヘルスに関わるウェルビーイングの要素
ウェルビーイング経営の進め方に関わる各モデルのなかには、それぞれメンタルヘルスに関わる要素があります。
- PERMAモデル
- Gallup社モデル
- アイディール・リーダーズのモデル
各モデルでは「ポジティブで明るい感情を抱くこと」「良好な人間関係」「心身が健康なこと」などメンタル面に関する要素が共通して取り上げられています。
そのためモデルに沿ってウェルビーイング経営を進めるなら、メンタルヘルスケアへの取り組みは必須といえます。
各モデルの詳しい内容は以下の記事で詳しく解説しているので、気になる方はご覧ください。
あわせて読みたい:ウェルビーイング経営とは?メリットや取り組みの進め方を徹底解説
メンタルヘルスケアに取り組むメリット
幸福な環境を維持するため、メンタルヘルスに関わる取り組みは必須です。
しかし個人の幸福感は個人で高めるべき、と考える方も少なくありません。
そこでここからは企業として、従業員のメンタルヘルスケアに取り組むメリットを解説します。
生産性低下が防止できる
メンタルヘルス不調になるとやる気や集中力がなくなり、日常業務に対し支障が及ぶ可能性があります。
過度なストレスを抱えている状態であれば、気分の落ち込みから判断力や行動力も低下します。
本来のパフォーマンスが発揮できない状況が続けば、企業業績の低下につながる可能性は高いです。
メンタルヘルス不調者が多いほど生産性への影響も大きくなるため、メンタルヘルスケアにより不調を予防する意義は大きいです。
職場の雰囲気が向上し企業イメージが高まる
メンタルヘルスケアで従業員の精神的な悩みが緩和されると、心にゆとりが生まれます。
精神的にゆとりのある状態が維持されれば、従業員同士の前向きなコミュニケーションが増え職場の雰囲気は向上します。
生き生きとした職場は従業員の働きやすさにつながるため、離職の予防にも効果的です。
また雰囲気のよさが話題になれば企業イメージが向上し、人材獲得のチャンスも高まります。
リスクを減らし従業員が安全・安心に働ける
メンタルヘルスケアに関する取り組みは、従業員に安心して働ける環境を提供するうえでも必須です。
メンタルヘルス不調になると考え事が増え、集中力や判断力に欠ける場面が増えます。
危険が伴う運転や機械操作を要する業務では、メンタルの不調が事故につながる可能性もあり非常に危険です。
メンタル面での適切なケアを行うことは、リスクマネジメントの観点でも大きなメリットです。
メンタルヘルスケアに取り組む際の注意点
残業時間の抑制や有給取得率の向上など、労働時間に関連する取り組みは従業員のメンタルヘルスのため多くの企業が取り入れています。
しかし計画もなく労働時間を削減した場合、従業員が十分に仕事をこなせず仕事の品質面に悪影響が出る可能性もあります。
業績が一時的に悪化し、従業員から不満が出るケースも少なくありません。
ただしウェルビーイング経営では、経営面の業績よりも従業員の健康や幸福が重要です。
ウェルビーイング経営に取り組む際は、一時的に業績が下がることを念頭に置いて取り組みを検討してください。
健康で生き生きと働ける環境が整っていれば、長期的には業績向上につながります。
ウェルビーイング経営では短期的な業績の動きで結果を判断するのではなく、長期的なメリットを重視してください。
メンタルヘルスケアの具体的な取り組み方法
厚生労働省の『職場における心の健康づくり』では、以下4つの視点からメンタルヘルスケアの取り組み方法を紹介しています。
- セルフケア:自分自身で行うケア
- ラインによるケア:管理監督者が行うケア
- 事業場内産業保健スタッフなどによるケア:企業の産業医や保健師、人事労務管理スタッフが行うケア
- 事業場外資源によるケア:会社以外の専門的な機関や専門家を活用した支援ケア
4つの方向からケアを行うことで心の健康が促進され、ウェルビーイング実現につながります。
従業員個人の努力のみに任せるのではなく、企業としても必要な方向から支援を実施してください。
上記のメンタルヘルスケアへの取り組みに関しては以下の記事で詳しく解説しているので、ぜひチェックしてください。
あわせて読みたい:あなたの職場は大丈夫?従業員に対するメンタルヘルスケアの現状と進め方
ウェルビーイング経営におけるメンタルヘルスケアへの取り組み事例
ここからは、実際にウェルビーイング経営としてメンタルヘルスケアに取り組んでいる企業の取り組み事例を紹介します。
楽天グループ株式会社
出典:楽天グループ株式会社
楽天グループでは新型コロナウイルスの存在を前提とし、持続的なチームの在り方を模索したガイドラインを作成しています。
ガイドラインにおいて楽天グループでは「仲間」「時間」「空間」を「三間の余白」として重視し、次の取り組みを実践しています。
- 仲間:従業員同士をつなぐ工夫をすること
- 時間:時間を区切って節目を作ること
- 空間:働く空間を整えること
三間の余白をコンセプトにした「さんまカレンダー」作成では、ゆとりあるスケジュール管理を従業員に呼びかけています。
また仲間のゆとり活動として1on1のミーティングのテーマを決める「さんまサイコロ」を活用したコミュニケーションも導入しました。
これらの取り組みは、「三間(さんま)と余白」のコンセプトに基づいて行われており、チームの結束力や成長意欲の向上につながっています。
参考:楽天 ニューノーマル時代に向けて、コレクティブ・ウェルビーイングを考えよう
株式会社アシックス
出典:株式会社アシックス
アシックスは、ランニングシューズやスニーカー、アスリート競技用シューズなどスポーツ用品を販売している会社です。
メンタルヘルスに関わる取り組みでも運動を重視しており、次の取り組みを実施しています。
- 仕事後のスポーツ
- 運動推進セミナー
- 保健師による全従業員の面談
- 個別の健康増進プランを提供
- メンタルヘルス研修
- 仕事と治療の両立支援
アシックスでは従業員の健康状態を把握し、運動を主体としたメンタル面とフィジカル面、双方からのアプローチからメンタルヘルスケアに取り組んでいます。
運動には、高血圧・心筋梗塞・うつ病・自立神経失調症などさまざまな病気への予防効果があり、メンタルヘルスケアでも有効な取り組み手段の一つです。
実際にアシックスでは運動に関する取り組みの実施後、メンタル休業者率が1年で0.35%から0.18%に低下しました。
また健康経営の取り組みが評価され。「健康経営優良法人2023〜大規模法人部門〜」にも認定されています。
味の素株式会社
出典:味の素株式会社
味の素では「味の素グループで働いていると自然に健康になる」とされる環境作りを目指し健康への取り組みを実施しています。
実際の取り組み例は、次のとおりです。
- 健康診断のデータ・就労状況・生活習慣などをスマートフォンで管理できる『My Health』を導入
- AI管理栄養士が健康サポートしてくれる健康アドバイスアプリ『カロママプラス』を導入
- 従業員の不調を早期発見するため、全員面談を実施
なかでもMy Healthやカロママプラスなどポータルサイトやアプリを活用した取り組みが特徴です。
サイトやアプリの機能により、自らの健康状態を総合的に確認すれば適切なセルフケアにつながります。
また健康観察により、従業員一人ひとりの健康意識が向上するメリットも期待できます。
健康関連でのさまざまな取り組みの結果、味の素は健康経営優良法人2023(大規模部門)ホワイト500に7年連続認定されました。
まとめ:メンタルヘルスケアはウェルビーイング経営に必要不可欠
ウェルビーイング経営においては、メンタル不調の改善が欠かせません。
メンタルヘルスケアを企業として行うことで、心のゆとりが生まれ幸福度が上昇します。
当記事で紹介した取り組み方法や事例を参考に、従業員が心身ともに健康で生き生きと働ける職場環境づくりに取り組んでください。
またメンタルヘルスケアには、運動も効果的です。
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自然なコミュニケーションが生まれるギルド機能もあるため、テレワークで従業員同士の交流が減っているとお悩みの企業にもピッタリです。
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