多様化する働き方や価値観の変化に対応するため、今注目されているのがウェルビーイング・マネジメント(ウェルビーイング経営)です。
ウェルビーイング・マネジメントとは、従業員の健康ややりがい、生きがいに注力したマネジメント手法です。従業員のウェルビーイングが実現されれば一人ひとりがより幸福に過ごせるようになり、創造性やパフォーマンスも向上します。結果として離職率も下がり、企業の持続的な発展につながります。
しかしウェルビーイング・マネジメントの詳しい内容や具体的な取り組み方わからない、と悩む方もいます。そこで本記事ではウェルビーイング・マネジメントの定義や注目が集まる理由、実践の際のポイントを解説します。
目次
ウェルビーイング・マネジメントとは
近年「ウェルビーイング」という言葉がビジネスで使われるようになり、ウェルビーイング・マネジメントに注目が集まっています。
ウェルビーイングとは、肉体的にも精神的にも社会的にも満たされた状態を指します。
参考:公益社団法人 日本WHO協会 世界保健機関(WHO)憲章とは
人材会社と大学の合同調査では、働くことに幸せを感じると個人や組織のパフォーマンス、挑戦志向や創意工夫の程度が上がることが判明しました。
参考:パーソル総合研究所×慶應義塾大学 前野隆司研究室 はたらく人の幸せに関する実証研究
調査結果より、従業員のウェルビーイングを高めることは、企業の持続的な発展のためにも重要といえます。
経営陣、管理職の方は、ウェルビーイングについて深く理解しマネジメントに活かしてください。
なぜウェルビーイング・マネジメントが必要なのか
ここからは現代の企業において、ウェルビーイング・マネジメントが必要になった理由を詳しく解説します。
働き方改革の促進
2019年4月より、厚生労働省を主体として働き方改革が本格的に推進されています。
多様な働き方を実現するため労働時間も見直され、長時間労働の規制や有給休暇の確実な取得、公正な待遇の処置などが義務付けられました。
働き方改革を推進する社会の流れから、中小企業でも多様な価値観やライフスタイルに合わせた働き方の導入が求められます。
参考:厚生労働省 働き方改革~一億総活躍社会の実現に向けて~
メンタルヘルス不調を予防するため
現在はさまざまな働き方が浸透しているものの、仕事や職業生活に不安やストレスを感じる従業員は半数を超えています。
また在宅勤務により「出勤時のオンオフがつけにくい」「在宅勤務の環境が整っていない」などの悩みを抱える従業員も少なくありません。
出典:東京大学大学院医学系研究科 コロナ禍で在宅勤務を経験している労働者が感じるストレス
さらにコミュニケーション困難からストレスを感じる従業員も多く、在宅勤務によりあらたな問題が発生していることがわかります。
参考:HR総研 社内コミュニケーションに関するアンケート2021
ただ在宅勤務やフレックスタイム制など新しい働き方を導入するだけでは、従業員のストレスになる可能性もあります。
そのため企業としてどの要因がメンタルヘルス不調につながっているか分析し、従業員が安心して働ける理想の職場について考える必要があるといえます。
人材が定着する組織作り
少子高齢化や労働者人口の減少により、人材の確保は今後さらに厳しい状況となります。
人材事業を展開するパーソル総合研究所によると、2030年時点で労働人口は644万人不足するとされています。
人材の新規確保が難しくなるなか、採用しても定着率が悪い状況では人手不足がさらに深刻化します。
そのため今後は給与や待遇を引き上げるだけでなく、ウェルビーイングを重視して労働環境を整える必要があります。
ウェルビーイング・マネジメントを構成する要素
ウェルビーイング・マネジメントは、従業員の幸福度を高めるためのものです。
しかし従業員にとって幸福な状態とは何なのか不明瞭な状態のまま施策を進めると、次の問題が発生します。
- 従業員本来のニーズに合った施策が実行できない
- 取り組みを始めても効果が出てこない
- 取り組みの効果が正しく測定できない
幸福を構成する感情の要素については、数多くの組織、企業から提案されています。
ここでは代表的なものをピックアップして紹介するので、施策立案の参考にしてください。
充実したプライベートの時間
うれしい・楽しい・感動・希望といったポジティブな感情をもたらすプライベートな時間は、人生を豊かにします。
趣味を楽しむ、家族と過ごすといったポジティブな行動で、仕事以外の時間を充実させることが重要です。
やりがいのある仕事
良好な職場環境で目的を持って仕事をこなすことは、幸福につながります。
スキルアップのための勉強に集中する、自分の強みを発揮する、興味のある活動に参加す るなどの行動も、ウェルビーイング向上に役立ちます。
他者との良好な関係
プライベートでも幸福を感じるには、他者から大切にされたり、支えられたりすることも重要です。
相手と良好な関係を築くことで居場所が確立され、精神的な安定につながります。
良好な関係を築く行動には、困っている人を助ける、グループ活動に参加する、友人に連絡を取るといったことが挙げられます。
存在意義の自覚
生きるために必要な仕事やコミュニティ活動をただこなすだけでは、精神的に消耗してしまいます。
生きる目的を見つけたときや新しい組織に加入したとき、他者のために役立つ行動をしたときに人は幸福を感じます。
仕事やプライベートの時間のなかで生きがいを感じ、前向きに行動することがウェルビーイング実現の大きな要素です。
目標の実現
目標に向かって取り組み、達成したときに感じる充実感もハリのある生活には必要です。
目標達成のための具体的な方法と期日を決定する、難しい仕事をやりとげる、過去の成功を振り返るといった行動は、ウェルビーイング向上につながります。
心身の健康
心身が健康であり、元気に活動できることはウェルビーイング実現の大前提です。
心身の健康を示すウェルネスが実現された状態を維持し、ウェルビーイング向上につながる前向きな行動をサポートしてください。
ウェルネス実現を目標とするウェルネス経営については、次の記事で解説しています。
ウェルネスの詳細な意味も紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
あわせて読みたい:ウェルネス経営とは?どの事業所も取り組むべき理由と具体例を解説 !
ウェルビーイング・マネジメントとPurpose(パーパス)の関係
ウェルビーイング・マネジメントの効果を高めるには、Purpose(パーパス)の明確化が必要です。
パーパスとは存在意義のことであり、独自の価値観や存在意義・社会的意義を設定し、社会に貢献することを目的として作られます。
具体的には「会社がなんのために存在しているのか」「会社が何を目標に事業を行っているのか」を示すものがパーパスです。
経営理念と異なり、社会とのつながりを重視して設定される点が特徴です。
企業側のパーパスと従業員のパーパスが重なれば、従業員のやる気が高まりウェルビーイングの向上につながります。
また社会とのつながりを重視し実際に取り組みを行うことで、社会全体のウェルビーイング向上にも役立ちます。
企業としてウェルビーイングの要素を考慮したパーパスの設定を行い、社会的な存在として企業の立ち位置を明確にしてください。
ウェルビーイング実現のための具体的な施策
従業員のウェルビーイングを向上させるには、主に次の施策が効果的です。
- 労働環境の見直し
- コミュニケーションの活性化
- 従業員の健康増進
まずは従業員に負担をかける長時間労働が常態化していないか、詳しくチェックしてください。
長時間労働が続くとプライベートの時間が確保できなくなり、不満につながります。
また職場を心地よい居場所として認識してもらうため、従業員同士のコミュニケーションを活性化する取り組みをしましょう。
テレワーク中でもあえて雑談の時間を設けることで、お互いに話しやすい雰囲気が生まれます。
そしてウェルビーイング実現の基盤として、従業員の健康にも積極的にアプローチしてください。
専用のツールを導入したりイベントを開催したりすることで従業員の健康意識が高まり、日頃の生活を見直すきっかけが生まれます。
ウェルビーイングを向上させる具体的な取り組みについては、次の記事で詳しく解説しています。
ウェルビーイング経営とは?メリットや取り組みの進め方を徹底解説
小さな取り組みでも、まず始めることが重要です。
ウェルビーイング・マネジメント実践のポイント
ただ新しい取り組みを導入するだけでは、なかなか効果につながりません。
ウェルビーイング・マネジメント実践のポイントを確認し、取り組みの効果を高めてください。
経営層や上層部が積極的に取り組む
ウェルビーイング・マネジメントにおいて、経営層や上層部が主体となって取り組むことは重要です。
経営戦略の1つとして捉え、積極的にウェルビーイング実現に向けた取り組みを推進してください。
ただし直接会社全体の経営に関わる層だけが取り組んでも、全社的な効果は薄いです。
ウェルビーイングに関する研修を行い、マネジメントに関わる従業員全員にウェルビーイングの重要性を伝えてください。
上層部だけでなく中間管理職の意識を高めることも、ウェルビーイングの実現においては必須です。
成果を可視化する
従業員の健康状態や心理状況、会社へのエンゲージメントをデータにして可視化することで、改善すべき課題がわかります。結果をもとに従業員にフィードバックやフォローを行い、いまの課題を従業員自身に理解してもらうことが重要です。
企業と従業員が一緒になってPDCAを回し、意識や行動改革につなげてください。
従業員個人の選択を尊重する
従業員が幸福を感じるには主体的な行動、組織とのつながりを感じる体験が必要です。
一方的に取り組みを押し付ける形にならないよう、まずはウェルビーイングの重要性や企業として取り組む意義を従業員に伝えてください。
ただし健康への取り組みについては、ある程度強制力が必要な場合もあります。
例えば健康に悪影響を及ぼす習慣を変えて欲しい場合、会社内を完全禁煙にするといった積極的な取り組みが必要です。
バランスを見ながら、従業員にとって適切なサポートを検討してください。
適度なストレスを排除しない
従業員のストレスを過度に排除してしまうとメリハリがなくなり、仕事にやりがいを感じられなくなるケースもあります。
達成感はウェルビーイング実現にも大きく関わるため、適度な刺激は必要です。
従業員個人の能力やモチベーションを把握し、業務内容や業務量を適切に調整してください。
従業員のマネジメントに直接関わる中間管理職層に対し、適切な業務管理方法を伝えることも重要です。
中長期的な視点で取り組む
ウェルビーイング・マネジメントは、すぐに数値的な効果が出るものではありません。
短期的な取り組みのみで効果がなかったと判断しないよう、当初より長期的な目線を持つことが重要です。
企業としての存在意義であるパーパスを設定しつつ、細かな目標を立てることで段階的に目標達成を目指してください。
まとめ:ウェルビーイング・マネジメントは持続可能な組織作りに必須
ウェルビーイング・マネジメントは、従業員の幸福度を高めるための経営手法です。
ウェルビーイング・マネジメントが組織全体に浸透すれば、従業員の健康が守られるだけでなく、離職率低下や企業の生産性向上にもつながります。
従業員の幸福という観点を含めてパーパスを設定し、企業としてウェルビーイング実現を目指してください。ウェルビーイングを実現させるうえで、心身の健康につながる運動は不可欠です。
しかし個人で運動を習慣化させるのは非常に難しいため、企業の積極的なサポートが必要です。
従業員の運動機会を確保したいと考えているなら、福利厚生アプリKIWI GOを検討してください。
KIWI GOは、ごほうびやイベントにより楽しく運動が習慣化できる福利厚生アプリです。
自然なコミュニケーションが生まれるギルド機能もあるため、テレワークで従業員同士の交流が減っているとお悩みの企業にもピッタリです。
ごほうびを目標に楽しくウォーキングを継続してもらい、従業員の幸福感を高めましょう。