ストレスとは、外部からの刺激を受けたときに生じる緊張状態のことです。

ささいなきっかけでもストレスは生まれるため、私たちの日常生活ではストレスとなる原因が至るところに存在しています。

例えば「仕事中に他の業務を頼まれる」「日々の残業が重なり、家事や育児の時間が取れない」など、さまざまな場面がストレスを起こしています。

仕事を健康的に進めるためには、ストレスと上手に向き合っていくための「ストレスマネジメント」を実施していくことが大切です。

当記事では、ストレスマネジメントとは何かを紹介すると共に、ストレスの種類やストレスマネジメントの実践方法を解説します。

従業員が抱えるストレスを改善したいと考えている方は、ぜひ参考にしてください。

 

仕事にストレスを感じる人とその理由

厚生労働省は雇用労働者10人以上を雇用する民営事業所を対象に、仕事や職場生活に関するストレスを調査しました

どのくらいの労働者がどのような理由でストレスを抱えているか、厚生労働省の調査をもとに見ていきます。

参考:厚生労働省 令和2年度「労働安全衛生調査(実態調査)」の概況

 

約2人に1人が仕事にストレスを感じている

令和2年度「労働安全衛生調査(実態調査)」では、常用雇用者・派遣労働者約18,000人を対象に労働者の不安や悩み、ストレスを抱える状況を分析しました。

出典:厚生労働省 労働時間やメンタルヘルス対策等の状況


調査結果から、令和2年度の場合54.2%の労働者が仕事や職業生活に関してストレスを感じていることがわかります

また過去約20年以上にわたり、半数以上の労働者がストレスを感じている状況です。そのためストレスと上手に向き合っていくための、ストレスマネジメントは非常に大切といえます。

ストレスフルな職場が起こす悪影響

強いストレスにつながるような、ストレスフルな職場で勤務を続けると次のような悪影響が発生します。

  • 離職者が増える
  • メンタルヘルス不調で休職者が増える
  • 仕事に集中できない従業員が多くなり生産性が低下する
  • ストレスが原因で起こるイライラにより、職場の雰囲気が悪くなる
  • 精神疾患や頭痛などの体調不良を感じる従業員が多くなる

ストレスの多い職場では、従業員同士の人間関係も悪くなり前向きに働けません。

ストレスフルな状態にならないよう、企業としてストレスマネジメントを実施しストレスを軽減することが重要です

 

ストレスの主な理由は「仕事の量や質」

厚生労働省の令和2年度「労働安全衛生調査(実態調査)」では、仕事や職場環境によるストレスの理由も調査されています。

出典:厚生労働省 労働時間やメンタルヘルス対策等の状況

調査の結果ではストレスの要因として「仕事の量・質」が56.7%と最も多く、次に「仕事の失敗・責任の発生等」が35.0%、対人関係(セクハラ・パワハラを含む)27.0%の理由が多数でした。

業務をこなすうえである程度ストレスが発生するのは避けられません。しかし仕事の量や質、責任の問題については、企業として積極的に改善できる点です。

ストレスによる悪影響は大きいため、企業として適切なストレスマネジメントを実施してください。

 

ストレスチェックで現状を確認する

ストレスに対応するためには、まず従業員が自身のストレス状況を把握することが大切です。

現在は労働安全衛生法改正により、労働者が50人以上いる事業所に対し、毎年1回のストレスチェックが義務化されています。

参考:厚生労働省 労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル

 

ストレスチェックとは、ストレスに関する質問項目に労働者が記入し自分のストレス状況を把握するものです。

このストレスチェックの結果により、自分のストレスの状況を把握できます。

しかしすべてのストレスがネガティブに働くものではありません。

ネガティブな問題が起こっている場合には、改善を目指すことが大切です。

 

ストレスが心身に与える影響

ストレスは体と心、行動へさまざまな影響を及ぼすため、早期の対策が大切です。過度なストレスによって起こりうる影響について説明していきます。

参考:協会けんぽ 健康サポート ストレスは、心と体に影響を及ぼす

 

心理的な影響

まずストレスは次のような心理的な影響を及ぼします。

  • 活気の低下
  • イライラや不安
  • 気分の落ち込み
  • 興味や関心の低下
  • 集中力の低下

また心理的な影響が長引くと、次のような病気になる恐れもあります。

  • 不安障害
  • うつ病
  • パニック障害
  • PDSD(心的外傷後ストレス障害)

心理的な病気を防ぐためには、ストレスを軽減する対策が必要です。

 

身体的な影響

ストレスの影響は身体的な面でも大きいです。

身体に起こりうるストレスの影響は、次のとおりです。

  • 肩こり
  • 頭痛
  • 目の疲れ
  • 動悸や息切れ
  • 胃痛
  • 食欲不振
  • 便秘や下痢
  • 不眠
  • 脱毛、肌荒れ

また上記の症状が発展し以下のような病気につながる恐れもあります。

  • 自律神経失調症
  • 胃や腸など消化器の病気
  • 血圧や心臓など循環器の病気
  • 免疫力が低下して感染症へのリスク増加
  • 生活習慣病など

ストレスが与える身体的影響については、健康問題が理由によって生産性が低下する「プレゼンティーズム 」とも関連します

プレゼンティーズムの状況と原因について次の記事でより詳しく解説しているため、ぜひ合わせてチェックしてください。

あわせて読みたい

プレゼンティーズムとは?アブセンティーズムとの違いと原因・事例を紹介

 

行動面における影響

ストレスを継続して受ける状況では、以下のような問題行動につながります。

  • 暴飲暴食
  • 散財
  • 過度の飲酒
  • 喫煙
  • ギャンブル
  • 暴言暴力
  • 遅刻、欠勤

特に暴言暴力については、ハラスメントに発展する恐れがあるため大きな注意が必要です。

ストレスでイライラしている従業員がいると、「言葉遣いが厳しくなる」「机を叩き大きな音を出す」などの行動を起こし周囲の従業員に精神的苦痛を与える可能性があります。

またストレスが原因で欠勤や遅刻が起こると、生産性低下につながります。

 

ストレスには「ストレスマネジメント」が大切

ストレスマネジメントとは、ストレスと上手に付き合っていくために対処することです。

参考:厚生労働省 e-ヘルスネット ストレスマネジメント

ストレスをなくすことは難しく、働く人の半数はストレスを抱えています。

そのためストレスマネジメントではストレスをなくすのではなく、適度にコントロールすることでストレスによる影響を抑えます。

ストレス環境下のなかでは、ストレスと上手に付き合えるような取り組みが大切です。

 

企業がストレスマネジメントを行うメリット

ストレスの要因は至るところにあり、従業員個人の問題とはいえません。

働きやすい環境を作るうえで、ストレスマネジメントは非常に重要です。企業がストレスマネジメントの取り組みに参入し、従業員をサポートをしてください

ここからは企業がストレスマネジメントを実施するメリットを紹介します。

 

従業員が健康に過ごせる

ストレスが重症化すると、心理的影響としてうつ病やパニック障害、不安障害など精神的な病気のリスクが高まります。

また頭痛や食欲不振、便秘や下痢など身体面への影響も発生します。

一方ストレスマネジメントに取り組むことで、ストレスを軽減し良好な健康状態を維持できます。

また従業員が健康な状態であれば、円滑に業務を進められるようになり、生産性向上に期待できます

仕事で結果を出せている状態は、従業員にとっても非常に嬉しい状態といえます。

 

職場を活気づけることができる

ストレスにより不調を感じる従業員が増えれば、職場の活気が落ちてしまいます。

一方、適切なストレスマネジメントを実施すれば、仕事に対して前向きな気持ちを持てる従業員が増え職場の雰囲気がよくなります

職場の活気が続くほど長く働きたいと思う従業員も増加し、離職率低下につながります。

 

ハラスメント防止対策にもなる

企業が一丸となってストレスマネジメントを行うと、ストレスに関する知識や意識が向上します。

どのようなことがストレスにつながるか分かれば、パワハラやモラハラ、セクハラなどハラスメントの予防につながります。

例えば強い口調で仕事を指示されることがストレスになると理解できれば、適切な口調で話そうと考える従業員が増えます。

思いやりのある行動を取れる人が増えれば会社の雰囲気が変わり、従業員が安心して働けるようになります。

 

ストレスマネジメント実施の手順

ストレスマネジメントでは、セルフモニタリングによるストレスの可視化と実際に対処をおこなうコーピングが重要です。ここからはセルフモニタリングとコーピングの方法について解説します。

 

①セルフモニタリングの実施

セルフモニタリングとは、自己のストレス状況を自分で客観的に観察することです。

まずはセルフモニタリングでいま受けているストレスを認識することが大切です。

以下の項目でセルフモニタリングを実施し、ストレスの状況を可視化してください。

  • 考えられるストレスの原因
    例:仕事の量・業務内容のむずかしさ・対人関係など
  • ストレスを感じたときの感情や気分、考え、体への身体的や心理的影響
    例:イライラした・仕事に対するモチベーションが低下した・頭痛がしたなど
  • ストレスを感じたときの行動の変化
    例:不眠症になった・食欲が低下した・よく怒鳴ることが多くなったなど

参考:うつめど セルフモニタリングとは〜認知行動療法の基礎〜

 

まずはセルフモニタリングを実施し、ストレスに気付くことからはじめましょう。

またストレスの反応を引き起こす原因のことをストレッサーと呼びます。

ストレスの影響を早期に発見するため、以降では参考として3つのストレッサーを紹介します。

参考:厚生労働省 働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト「こころの耳」 1 ストレスとは

 

物理的ストレッサー

物理的ストレッサーとは、設備環境から発生する刺激により視覚や聴覚、体感などでストレスを起こすものです。

例えば次のようなものがあります。

  • 長時間のディスプレイ視聴
  • 工場内や周囲の作業場からの騒音
  • 作業場の温度が寒すぎるまたは暑すぎる

職場環境に問題がないか、健康経営オフィスの視点からチェックすることが大切です。

健康を保持、増進するための健康経営オフィスなら、従業員の能力を最大限発揮してもらえます。

健康経営オフィスについて詳しくは次の記事で解説しているため、ぜひチェックしてください。

あわせて読みたい

【健康経営オフィスの作り方】アセスメント17項目と対策を徹底解説

 

化学的ストレッサー

化学的ストレッサーとは、有機溶剤やタバコ、アルコールなどの化学物質で目や嗅覚などが刺激され起こるストレス要因です。以下のようなものが化学ストレッサーの例です。

  • タバコの臭い
  • オフィス内での昼食から発生する臭い
  • 化学物質を使用する現場における目や喉への刺激

化学的ストレッサーを構成しているのは化学物質であるため、目で確認できません。

そのため化学的ストレッサーが発生していると気付けないケースは多いといえます。

化学的ストレッサーを認識するには、日頃からセルフモニタリングを実施することが大切です。

 

心理・社会的ストレッサー

心理・社会的ストレッサーとは、人間関係や仕事上の問題、家庭問題などで不安や怒り、悲しみなどの感情が刺激されることです。

私たちが受けるストレスのほとんどは、心理・社会的ストレッサーに分類されます。

心理・社会的ストレッサーの例は次のとおりです。

  • 仕事で難しい課題に直面したとき
  • 上司から冷たい態度で接されたとき
  • 育児が忙しく、やりたいことができないとき
  • 業務上のトラブルが起きたとき

心理・社会的ストレッサーは、日常生活のあらゆる場面で発生する可能性があるストレッサーです。

そのため、日常的なストレスへの対策への習慣が大切になります。

 

②ストレスコーピングの実施

セルフモニタリングを実施したあとは、ストレス反応を軽減させるためストレスコーピングを実施します。ストレスコーピングとは、ストレスの原因にうまく対処しようとすることです

参考:厚生労働省 e-ヘルスネット ストレスコーピング

代表的な4つのコーピング方法について、詳しく解説します。

問題焦点型コーピング

問題焦点型コーピングとは、自分の努力や周囲の協力により直面している問題に対処する方法です。

例えば仕事量が多く帰りが遅くなってしまう場合、問題焦点型コーピングでは次のように対処します。

  • 仕事の取り組み方法や順番を見直す
  • スキルを向上させ従業員自身で仕事量の多さをカバーするよう促す
  • 配属先、業務の種類を見直す
  • 従業員同士が協力して仕事に取り組める体制を作る

問題焦点型コーピングでは、従業員含め会社全体でストレスに悩む人を広くサポートしていく姿勢が重要です。

 

情動焦点型コーピング

情動焦点型コーピングは、感情を吐き出すことでストレスを軽減する方法です。

例としては、次のとおりです。

  • 信頼できる友人に愚痴を聞いてもらう
  • 産業医やカウンセラーなど専門家に相談する
  • 上司に悩みを相談する

取り返しのつかない事態が起きたとき、解決法のない出来事に直面したときは、情動焦点型コーピングが有効です。

気持ちを落ち着かせるため、正直に相談できる環境を整えてください。

 

認知的再評価コーピング

認知的再評価コーピングとは、直面している悩みや問題に対し、思考や認知の転換によってストレスを軽減する対処方法です。

次のような例が認知的再評価コーピングです。

  • 失敗から学べることもあると前向きに考えてみる
  • 仕事に厳しい人に対し、仕事に真剣に取り組んでいるのだと考える
  • 仕事ができず落ち込む場合、さらに努力し打開しようと気持ちを切り替える

考え方を前向きにすることで、問題のポジディブな側面を見つけるのが認知的再評価コーピングです。

しかしうまく考えを切り替えられず、ストレスとして抱え込んでしまう方もいます。

従業員が前向きな意識を持てるよう、認知的再評価コーピングのポイントを従業員に伝えることが重要です。

 

気晴らし型コーピング

気晴らし型コーピングとは、運動や旅行、趣味など楽しいことや集中できることに取り組みストレスを軽減する方法です。

ストレスの要因が解決できない場合は、気晴らし型コーピングが有効です。

特に気晴らしとして有効なのが、運動です。

運動は厚生労働省「健康づくりのための身体活動基準」のなかで、メンタル不調改善策として期待できると発表されています。

従業員が十分に気晴らしできるよう、余暇の時間を増やし、休暇が取りやすい体制を作ってください。

また健康効果の高い運動を企業として促進することも重要です。

参考:心身健康科学  6巻2号 2010 年 ストレスコーピング─自分でできるストレスマネジメント─

参考:厚生労働省 健康づくりのための身体活動基準

 

まとめ:ストレスマネジメントでストレスと上手に向き合うことが大切

日常生活には、あらゆるところにストレスの要因があります。そのためストレスを見える化してマネジメントする、ストレスマネジメントを企業として積極的に実施することが大切です。

なかでもストレスコーピングは、実際にストレスを軽減するための行動です。

取り組みやすいものから従業員に紹介し、コーピングを習慣化してください

気晴らし型ストレスコーピングとして特に効果的なのが、運動です。

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