プレゼンティーズムによる損失は非常に大きいですが、損失は目に見えにくいため対策が疎かになりがちです。

しかし体調が悪いなか働くことで発生する1人当たりの損失は、年間で約60万円にもなるとされています。生産性の低下を改善するため、プレゼンティーズム対策は不可欠です。

しかし対策といっても具体的に何をしたら良いのか、すぐに考えつかない方は多いでしょう。

そこでこの記事では、プレゼンティーズムの原因と具体的に取り組める対策方法を解説します。

入念なプレゼンティーズム対策で、従業員が明るく働ける職場を作ってください。

 

プレゼンティーズムとは

プレゼンティーズムとは、何らかの疾患や症状を抱えながら出勤し業務遂行能力や労働生産性が低下している状態です。病名がついている必要はなく、疲労の蓄積や睡眠不足など体の不調がありながら無理して働くことも含まれます。

他にプレゼンティーズムを起こす代表的なものには、風邪、過労、花粉症などがあります。

プレゼンティーズムの状態では、体調が万全ではないために仕事の生産効率が下がってしまいます

仕事が思うように進まないことから、プレゼンティーズムが発生すると従業員と企業双方にデメリットが生じます。

 

プレゼンティーズムで発生する損失

プレゼンティーズムの状態が続くと、労働生産性が低下した状態となります。

ユナイテッド・ヘルスコミュニケーション株式会社の調査では年収400万円の健康な従業員でも、プレゼンティーズムにより年間60万円もの損失が発生しているとされます

ストレス値によって、その損失額はさらに大きくなります。

出典:ユナイテッド・ヘルスコミュニケーション株式会社 ストレスによる企業のコスト損失額

 

同調査において、上位10%に該当する強いストレスを感じている従業員はより多くの損失を抱えています。

また上位10%のうち、さらに上位3%に当たる超高ストレス者の場合、年間で150万円もの損失が発生しています。

一人当たりの損失額が最低でも60万円と考えると、企業全体の損失額は非常に大きなものです。そのため、各企業で早急なプレゼンティーズム対策が必要といえるでしょう。

 

プレゼンティーズムの原因

プレゼンティーズムの原因は、多くの従業員が日常的に感じているものです。

  • 睡眠
  • 運動不足
  • 偏った食生活
  • 乱れた生活習慣
  • ストレス

日常生活を改善することが、プレゼンティーズム対策として非常に重要です。

またプレゼンティーズムの発生には、日本固有の国民性が関係しているともいわれています。

日本では勤勉な人が高く評価されており、仕事に対して強い責任感を持っている方が多いです。

自分が休むことで周囲に迷惑がかかるのではないかと考えてしまい、体調が悪くても仕事を休まない方は珍しくありません。

また組織のトップのマネジメント能力が不足していると、ストレスの高い環境での仕事が日常化してしまい、プレゼンティーズムにつながります。

その他、従業員個人の問題としては、ヘルスリテラシーの低さが挙げられます。

ヘルスリテラシーは健康に対する情報の取捨選択をする能力であり、日本人は外国に比べてヘルスリテラシーが低いといわれています

参考:公益社団法人 東京都医師会 ヘルスリテラシーって何?

(Lesson1「え?日本人のヘルスリテラシーはかなり低い?」より)

健康に対して正しい知識がなく間違った行動をとってしまうと、正しく健康管理ができずプレゼンティーズムが発生します。

 

健康経営がプレゼンティーズムに効果的な理由

プレゼンティーズム対策には、従業員の健康を戦略的に考える健康経営が欠かせません。

健康経営とは、従業員の健康維持促進を経営的な視点で考え実践していくことです。

健康経営を推進することで日頃から従業員の健康を意識できるようになり、不調に対して早急なアプローチができます。

また健康経営の考え方をもとにオフィス環境や働き方、福利厚生を見直せば従業員が生き生きと働けるようになり、パフォーマンスも向上します

具体的な健康経営の内容、健康経営を実践した企業の事例については以下の記事を参考にしてください。

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健康経営のメリット・デメリットは?取り組みの手順やポイントを解説



プレゼンティーズム対策として効果的な施策

ここからは健康経営施策の中で、どのようなものがプレゼンティーズム対策になるか詳しく解説します。

休みやすい環境を作る

体調が芳しくない従業員については、しっかりと休息を取ってもらうことが必要です。

体調不良で社員が休みたいとき、どのタイミングでどこに連絡をするか明確にして、休みやすい環境を作ってください。

しかし「体調が悪いときは休んでください」とアナウンスをしても、体調不良の基準が個人で異なるため効果は限定的です。組織の中で、休む基準を明確にしてください。

熱や嘔吐の回数など数値化できるものはわかりやすいため、まずは客観的な基準を決めましょう。

しかし、数値化しにくい体調不良を感じる従業員もいます。特に女性であればホルモンの影響など、個人差の大きい問題もあります。

そのため「仕事をするのがきつい」と本人が感じるなら、周りを気にせず休めるよう社内の雰囲気を改善してくださいいつ誰が急に休んでも良いように仕事の進捗が把握できるようにしておくと、休む際の罪悪感が軽減されます。

また組織のトップの姿勢も大切です。トップ自らが体調不良の際に休むことで、従業員も安心して休む事ができます。

また無理せず休むことに対し、寛大な社風になります。現場のみでなく、組織のトップも含めた社内全体で環境作りを行うことが重要です。

 

職場環境を見直す

職場が清潔ではない状態だと、長期的には体調不良につながることもあります。

また部屋の明るさも、目や肩の疲労につながる要素です。

8時間勤務の場合は1日の3分の1を職場で過ごすため、疲労が溜まりにくい職場環境を作ることが大切です。職場環境を見直すポイントは、次のとおりです。

  • 職場の温度、湿度は一定に保たれているか
  • 照明の明るさは最適か
  • 採光方法に問題はないか
  • 自然な姿勢を保てる椅子やデスクが用意されているか
  • リラックスして休めるスペースはあるか

具体的に見直しを行う際は作業環境アンケートを実施し、自社の環境に合うよう改善してください。

また勤務中に運動の時間を作ることも大切です。

適度な運動はリフレッシュ効果をもたらし、仕事のパフォーマンスを高めます。例えば、休憩時間にラジオ体操をするよう促す、運動スペースを作るなどして積極的にサポートすると良いでしょう。

参考:中央労働災害防止協会 快適職場づくりとその効果(「快適職場指針のポイント」より)

 

健康について相談できる場を作る

従業員が健康を維持できるよう、産業医や保健師などと話せる場を用意するのも効果的です。

しかし健康に対する悩みにはデリケートな部分もあるため、従業員自ら相談するのが難しい場合もあります。

プレゼンティーズム予防のためには、定期的な面談の場も必要です

1on1ミーティングを実施し、健康面の不安を早い段階で見つけてください。

 

セミナーを開催する

従業員の健康意識を高めるためには、プレゼンティーズムによって起こるデメリットを可視化することが重要です。

プレゼンティーズムへの理解を深めるため、セミナーを実施しヘルスリテラシーを高めてください。

セミナーではプレゼンティーズムが身近な問題だと感じてもらうため、家族形成や年代ごとにどのような問題が起きやすいのかを細かく伝えることが大切です

健康に関するセミナーの開催は、健康経営において非常に大切な取り組みです。

継続して開催し、定期的に健康状態を振り返れる環境を作ってください。

 

プレゼンティーズム対策の効果を高めるコツ

対策を成功させるためには、状況の正しい把握が重要です。プレゼンティーズムを測定する方法には、次の5つがあります。

  • WHO-HPQ
  • SPQ(東大1項目版)
  • WLQ(Work Limitations Questionnaire)
  • WFun(Work Functioning Impairment Scale)
  • QQmethod

それぞれの測定方法について、詳しくは次の記事で解説しているためぜひチェックしてください。

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プレゼンティーズムの測定方法は?見えない不調を把握し改善するポイント

 

プレゼンティーズム対策では一度評価して終わりではなく、継続した評価と改善の繰り返しが重要です。

3か月ごと、半年ごとなどあらかじめ期間を決めて、検証と対策の見直しを繰り返してください。

定期的な見直しをする上で大切なのは、一貫して同じ評価スケールを使用することです

先ほど紹介したプレゼンティーズムの測定方法はそれぞれ判断基準が異なり、同じ状況でも違う結果となる可能性があります。

途中から評価方法を変えると、変化を把握しにくくなります。

自社で実施するにはどのような指標が最適か考え、測定方法を一貫させてください。

 

まとめ:プレゼンティーズムは可視化しながらの対策が必要

プレゼンティーズムによる損失は非常に大きいため、対策が必要です。定期的に効果判定を実施しつつ、長期的に対策を行ってください。

健康経営の視点を取り入れれば、最終的には経営全般に関わる問題の改善につながります。

ただし従業員個人が高い意識を持ち、日常生活を改善していくのは困難です。

特に運動の習慣化は難しく、健康の重要性を理解していても運動が継続できないと悩む従業員は多いです。

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