健康経営度調査は企業の健康経営の取り組みを分析し、その経過に伴う変化を把握するために用いられます。

健康経営に関心を持つ経営者にとって、この調査の意義と効果は大変重要といえるでしょう。

そこで本記事では、健康経営度調査とフィードバックシートの目的や効果、自社で活用するための方法について詳しく解説します。

健康経営を推進したい、またはその効果をさらに高めたい企業はぜひ参考にしてください。

健康経営度調査とフィードバックシート

ここでは「健康経営度調査」と「フィードバックシート」について基本的な概要を解説します。

健康経営度調査とは

健康経営度調査は企業が健康経営における取り組みの現状と時間の経過による変化を評価し、その成果を明らかにするために行われます。

また健康経営度調査は「健康経営銘柄」の選定や「健康経営優良法人(大規模法人部門)」の認定を目指す企業にとって、その基礎データを提供する重要な手段です。

調査によって得られたフィードバックシートには、順位や偏差値を含む具体的な評価結果が記載されています。企業が自社の健康経営の成果を客観的に把握し、今後の改善策を検討するためには貴重な資料といえます。

特に健康経営への取り組みを始めたばかりの企業にとっては、この調査が健康経営を実践するスタート地点になるでしょう。

「健康経営には興味があるが、何から手を付ければ良いか分からない」場合でも、健康経営度調査で健康経営の方向性や重点的に取り組むべきポイントを明確にできれば、戦略的なアプローチに繋がります。

参考:経済産業省 令和4年度 健康経営度調査フィードバックシート

参考:健康経営度調査について 経済産業省

フィードバックシートとは

フィードバックシートとは、経済産業省が実施している「健康経営度調査」に回答した企業に対し、12月頃に送付される評価結果や適合認定が記載された文書です。

フィードバックシートを活用することにより、企業は生産性の向上や健康経営のレベルアップを図れます。

また統計データの分析を通じて、国内の企業が行っている健康経営の取り組み状況を把握することもできます。

健康経営度調査におけるフィードバックシートの見方

ここでは、フィードバックシートで注目するべきポイントを解説します。

1.健康経営度評価結果

フィードバックシートの冒頭では健康経営度評価結果が示され、企業が健康経営に取り組む中での総合順位と偏差値を確認できます。

評価結果を見れば自社の取り組みがどの程度評価され、他の企業と比較してどのレベルにあるかが把握可能です。

2.評価の内訳

フィードバックシートを通じて、企業は自社の健康経営の位置づけを様々な角度から評価できます。具体的には自社の偏差値と共に、「回答法人全体トップ」「業種トップ」「業種平均」の数値を把握可能です。

  • 回答法人全体トップ:健康経営銘柄を目指す企業が参照する重要な指標
    一般的に、回答法人全体トップの数値は、業種トップの数値よりも高くなる傾向がある
  • 業種トップ:ホワイト500認定を目指す企業や、健康経営への取り組みを本格化したい企業にとって重要な指標
    同業種内でのトップ企業との比較を通じて、差分の大きい項目に重点的に取り組む必要がある
  • 業種平均:健康経営を始めたばかり、または経営層からの理解が得られにくい企業にとって参考になる指標
    自社が同業種の平均と比較してどの程度の位置にあるかを把握し、そのギャップをどのように埋めるかを経営層や健康推進メンバーと協議することが重要

フィードバックシートに記載されている評価の内訳を読み解けば自社の現状を多角的に理解できるため、改善に向けた具体的な方向性を見定められます。

自社の位置づけを正確に把握し、経営層と共に効果的な健康経営戦略を策定してください。

3.評価の変遷

健康経営の成果は経年に伴い現れ始めるため、点数が低い年と高い年の違いを分析し、今後の健康経営に役立てることが重要です。

健康経営度調査の結果から自社の取り組み改善や他社との比較を行い、ステークホルダーへの情報開示の推進に活かしてください。

2023年4月の更新では2,238法人が開示に同意しており、令和4年度の評価結果が公開されています。

参考:健康経営優良法人2023 一覧 – ACTION!健康経営|ポータルサイト(健康経営優良法人認定制度) (kenko-keiei.jp)

4.評価の詳細分析

健康経営度調査の評価は、産業医、保険者、投資家などから構成される基準検討委員会が策定した評価基準に基づいて行われます。

健康経営度の評価では、企業の健康経営の取り組みが経営基盤から現場施策まで様々なレベルでどのように連動・連携しているかが重要なポイントです。

評価フレームワークは「法令遵守・リスクマネジメント」を基本とし、「経営理念・方針」「組織体制」「制度・施策実行」「評価・改善」という4つの要素から構成されています。

各設問の得点はフレームワークに基づいて分類され、得点は偏差値化されて各側面の評価値となります。そして評価値に重要度に応じたウェイトを掛け合わせ、合算したものが総合評価です。

参考:ACTION!健康経営|ポータルサイト(健康経営優良法人認定制度) (kenko-keiei.jp)
参考:令和5年度 健康経営度調査説明資料 日経リサーチ 健康経営優良法人認定事務局
参考:令和4年度 健康経営度調査フィードバックシートの見本 経済産業省

あわせて読みたい:健康経営度調査の内容は?評価方法や参加するメリットも徹底解説!

健康経営度調査の評価項目の解説

ここでは2023年8月、日経リサーチ健康経営優良法人認定事務局より発表された「令和5年度 健康経営度調査 今年度の概要と主な変更点」について解説します。

経営理念・方針

「調査設計・評価モデル」の頂点に位置するのが「経営理念・方針」です。概要と重要なポイントは以下の通りです。

  • 認定要件として、健康経営の推進に関する全社方針の明文化が必須(Q17)
  • 会社全体の健康経営の推進について、「目的」と「体制」の両方が開示されていることを必須要件とし、労働安全衛生・リスクマネジメントの開示も評価対象となる
  • 自社従業員を超えた健康増進に関する取り組みを重視する

今年度は評価の対象になっていませんが、健康経営の国際展開の状況を把握するために海外での健康経営の取り組みも調査されています。

組織体制

組織体制の項目では、健康経営を推進するための責任体制の構築を重要視しています。組織体制の必須要件は以下の通りです。

  • 健康経営を推進するうえで、経営トップまたは担当役員が責任者である
  • 産業医または保健師と従業員の健康課題を協議している
  • 健保組合等保険者に対して健診データの提供をしている
  • 健保組合等保険者との協議を実施している

健康経営の適切な運営状況、体制の整備、産業医や保健師の関与などが評価の重要なポイントです。計画的な実行がなければ、期待する効果を得ることは難しいでしょう。

健康経営優良法人認定や健康経営銘柄の選定を目指すのではなく、実質的な健康経営の基盤構築に注力する必要があります。

制度・施策実行

健康経営の具体的な施策を進めるためには数値目標の設定が重要です。制度・施策実行の概要と重要なポイントは以下の通りです。

  • 従業員の健康課題を踏まえた「具体的な推進計画の策定」と「数値目標、達成期限の設定」を必須要件とする
  • 認定要件の選択項目の1つとして「従業員の健康診断の実施(受診率100%)」
  • 育児または介護と仕事の両立支援策を認定要件に追加
  • 特定健康診査および特定保健指導の実施率を把握することを認定要件とし、さらに企業(事業主)単位の特定健診・特定保健指導の実施も評価対象とする
  • 女性の健康課題に関する認知向上のための取り組み状況を問う設問、行動変容促進の取り組みを問う設問について、両設問の実施が認定要件として変更
  • 受動喫煙対策は必須要件とする

健康経営における具体的な制度・施策では、従業員の健康課題や社会課題に応じた明確な目標設定が必要です。

企業はこれらの課題への対応を強化し、従業員と組織の活力を高めることを目指してください。

評価・改善

自社の健康経営における取り組みは、評価と改善、さらに課題改善の効果を定量的に検証するかどうか中長的な視点で重視されています。評価・改善の概要と重要なポイントは以下の通りです。

  • 従業員の生産性や組織活性度の測定する指標として、「アブセンティーズム」「プレゼンティーイズム」「ワーク・エンゲージメント」の開示を求めている
  • 健康経営の実施についての効果検証を必須要件とする
  • 健康経営で解決したい経営上の課題について、健康経営の実施により改善されたか、効果検証を行うことを推奨している

健康経営の評価と改善のプロセスでは、従業員の生産性や組織の活性度を高めるための効果検証に重きを置いています。

指標を用いた定量的な分析を行い、健康経営の取り組みが経営上の課題解決にどの程度貢献しているかを明確にしてください。

あわせて読みたい:健康経営度調査の内容は?評価方法や参加するメリットも徹底解説!

参考:令和5年度 健康経営度調査説明資料 日経リサーチ 健康経営優良法人認定事務局
参考:健康経営銘柄(METI/経済産業省)
参考:ACTION!健康経営|ポータルサイト(健康経営優良法人認定制度) (kenko-keiei.jp)

フィードバックシートの改善ポイント10選!

ここではフィードバックシートの項目ごとに、活用や見直しのポイントを解説します。健康経営の現状を把握し、改善策を策定することによって従業員の健康促進に繋げてください。

  1. 自社の現状把握
    フィードバックシートから、自社の健康経営の強みと弱点を明確に把握する
  2. 評価が低い項目の分析
    評価が低かった項目について、原因を詳細に分析する
  3. 改善策の策定
    分析結果をもとに、具体的な改善策を立案する
  4. 優先順位の設定
    改善策の中から、特に重要な項目を優先順位づけし、焦点をしぼって取り組む
  5. 数値目標の設定
    明確な数値目標を設定し、達成期限を決める
  6. 健康経営の推進体制の強化
    経営トップや担当役員を含む、健康経営を推進する体制を整える
  7. 従業員の健康促進プログラムの見直し
    従業員の健康課題に合わせたプログラムの見直しや新たな取り組みの導入を検討する
  8. PDCAサイクルの適応
    施策の実行後は定期的に効果を検証し、必要に応じて計画の見直しを行う
  9. 経営層への報告とサポートの確保
    定期的に経営層に進捗と成果を報告し、健康経営の重要性を共有する
  10. 社内外への情報開示
    健康経営の取り組みと成果を社内外に公開し、透明性を高める

上記の改善ポイントを意識すれば、フィードバックシートは単なる評価ツールではなく、企業の健康経営を戦略的に推進するための強力な資源となります。

フィードバックシートを活用し、従業員と企業の双方にとって価値ある結果を実現してください。

参考:経済産業省 令和4年度 健康経営度調査フィードバックシート
参考:令和5年度 健康経営度調査説明資料 日経リサーチ 健康経営優良法人認定事務局

健康経営でフィードバックシートを戦略的に活用する方法

健康経営の成功のポイントは、フィードバックシートを戦略的に活用することです。
評価項目で低いスコアを受けた場合は、企業の健康経営をさらに発展させるための貴重なフィードバックと捉えましょう。

経営理念・方針におけるスコアが低評価の場合

経営理念・方針で重視するべき点は、以下の通りです。

  • 健康経営の推進を明記し、社内外に積極的に公開する
  • 全社員への周知徹底と外部パートナーとの共有を強化する
  • 海外拠点を含むグローバルな健康経営の方針を策定、実施する

経営理念・方針では健康経営の推進方針を明確にしたうえで社内外への情報公開と周知を行い、グローバルな規模での実施を目指してください。

組織体制におけるスコアが低評価の場合

組織体制で重視するべき点は以下の通りです。

  • 経営トップまたは専任の担当者を健康経営の責任者とし、組織全体で健康経営の推進体制を構築する
  • 産業医や保健師との定期的な協議を設け、健康経営の運営業況の見直しと体制の強化を図る

経営トップまたは専任者を中心に健康経営の推進体制を明確にし、産業医や保健師との協力を強化することが重要です。

健康経営を推進するため、組織の継続的な運営と体制の見直しを実施してください。

制度・施策実行におけるスコアが低評価の場合

制度・施策実行で重視するべき点は以下の通りです。

  • 健康課題に基づいた具体的な施策を策定し、数値目標と達成期限を設定する
  • 従業員の健康診断の受診率の向上、仕事と育児・介護の両立支援策の充実、特定健診・保健指導の実施率の向上を妨げる原因を究明し、対策を図る
  • 女性の健康支援と受動喫煙対策の強化

健康課題に沿った明確な施策の策定、受診率や保健指導の向上、仕事と私生活のバランス支援の充実を図りましょう。

評価・改善におけるスコアが低評価の場合

評価・改善で重視するべき点は以下の通りです。

  • 従業員の生産性や組織活性度に関する指標(アブセンティーズム、プレゼンティーイズム、ワーク・エンゲージメント)の設定と結果の開示
  • 健康経営の効果検証を定期的に実施し、経営上の課題改善の効果を定量的に評価する
  • PDCAサイクルに基づく継続的な改善策の実施

生産性の向上と組織の活性化のための具体的な指標設定を行えば、目標が見えやすくなり従業員との一体感も生まれます。改善策を継続して実施し、スコアを高めてください。

参考:経済産業省 令和4年度 健康経営度調査フィードバックシート
参考:令和5年度 健康経営度調査説明資料 日経リサーチ 健康経営優良法人認定事務局

まとめ:フィードバックシートを活用した企業の成長戦略

健康経営度調査は「健康経営とは何か」を理解し、自社に適した健康経営の方向性を明確にするための重要な手段です。

またフィードバックシートを活用することで、自社の強みと改善点を客観的に確認できるため、具体的な施策検討に繋がります。

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