健康意識が高まっている現在、従業員の健康について何か取り組みをしたいと考える企業は多いでしょう。

健康に関する取り組みを実施するうえで前提となるのが、従業員の健康管理に関する義務です。

義務が達成されていない状態では、健康管理施策が不十分な状態となる可能性があります

本記事では、義務の内容や企業が実践すべき取り組みを紹介します。企業に定められた義務をクリアしながらより効果的な取り組みを行うため、ぜひ知っておきましょう。

 

従業員の健康管理が注目を集めている背景

従業員の健康を守ることは業務のスムーズな進行につながるため、従業員の健康管理は会社の経営を続けていくうえで必要不可欠です。

従業員の健康が守られなかった場合は病欠者が増え、他の従業員の負担が増加してしまいます。業務をスムーズに回すため、従業員の健康管理には気を付ける必要があります。

従業員の健康が維持されれば毎日健康に働けるようになり、仕事のパフォーマンスも上がります。

自身の力を十分に発揮しながら元気に働くことで企業に対して強い愛着も生まれ、より前向きな生活が送れるでしょう。

従業員の健康維持は企業だけでなく、従業員自身の生活にとっても大きな意義のあるものです。

また従業員の健康維持の観点から国も本格的に動いており、従業員の健康管理は法律上の義務になっています。2008年に施行された労働契約法では、次のように明記されています。

 

「企業は従業員が生命や身体の安全を確保しながら働けるように努めるべき」

出典:厚生労働省 労働契約法のあらまし

上記の法律の条項に罰則はありませんが、従業員が訴訟を起こせば損害賠償を請求される可能性もあります。日頃から従業員の健康管理を徹底するようにしましょう。

 

健康管理につながる安全配慮義務とは?

安全配慮義務とは「企業が従業員の健康管理をする」という趣旨の義務です。

実際に、労働契約法の第5条「労働者の安全への配慮」には、次のように記載されています。

「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする」

出典:労働契約法 第5条 労働者の安全への配慮

会社は従業員が安全に働けるような職場環境を整える必要があります。ここからは安全配慮義務の範囲と詳しい内容を解説します。

 

安全配慮義務の範囲

労働契約をしている従業員は全員、特別な規定がなくても安全配慮義務の対象です。労働規約で安全配慮について書かれていなかった場合でも対象となります。

安全配慮の対象には、身体の健康だけでなくメンタルヘルスも含まれます。

企業は安全に従業員が作業できるよう身体的な面でサポートをするだけでなく、精神的な健康にも配慮する必要があります。

参考:厚生労働省 労働契約法のあらまし

 

安全配慮義務の内容

安全配慮義務は一律に具体的な内容が決まっているわけではありません。そのため職場環境に合わせた配慮をすれば良いとされています。

ただし、労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)をはじめとする労働安全衛生関係法令は最低限遵守されなければなりません。

労働安全衛生関係法令の代表的な内容は、次のとおりです。

  • 労働災害の発生防止

会社は従業員が安全に働けるように計らう必要があります。労災の防止に有効な対策を講じましょう。

 

  • 労働者への安全衛生教育

安全衛生教育は、過去に起こった労災の再発を防止するために実施されています。会社は従業員が危険な目に合わないように配慮しなければなりません。

 

  • 資格がない従業員に対する一部業務の就業禁止

仕事をするうえで必要な免許または技能講習等の資格を保持する者以外は、業務に就かせないというものです。建設業におけるクレーンの運転などが例に挙げられます。

参考:一般社団法人安全衛生マネジメント協会 労働安全衛生法とは

労働安全衛生関係法令の内容をベースにして、それぞれの会社の環境にあった健康管理を行いましょう。

 

安全配慮義務に違反した場合の罰則

安全配慮義務に違反しても、罰則はありません。

ただし、民法第709条(不法行為責任)、民法第715条(使用者責任)、民法第415条(債務不履行)等により損害賠償が請求される可能性があります。

安全配慮義務を怠ると訴訟のリスクが高まるだけでなく、大切な従業員が労災で危険にさらされてしまいます。

従業員の健康管理を十分に行うことは、従業員に長く働いてもらうためにも重要です。健康管理を疎かにせず、細かな配慮を行ってください。

出典:東京都労働相談情報センター 使用者の安全配慮義務

 

従業員の健康管理のために実践すべき取り組み

安全配慮義務を守ることは大切ですが、具体的にどのような取り組みをするかについては規定がありません。そのためどう施策を進めれば良いか迷う企業もいるでしょう。

そこでここからは企業が従業員の健康管理のために実践すべき効果的な取り組みを7つ解説します。

 

労働時間の見直し

長時間労働を続ければ、体調を崩す従業員が出てきます。健康を害する従業員が現れる前に勤怠管理を徹底させることで、度が過ぎた残業や長時間労働をなくしましょう。

2020年4月より中小企業にも時間外労働の上限規制が適用されました。法律により時間外労働の上限は、⽉45時間・年360時間となっています。

違反した場合、6か⽉以下の懲役または30万円以下の罰⾦が課される可能性もあります。

また長時間労働は脳・心臓疾患発症と関連するという指摘もあるため、企業として長時間労働を避けることは重要です。

参考:厚生労働省 時間外労働の上限規制 わかりやすい解説

 

労働時間が長くなりすぎないよう、企業側としてできる施策は次のとおりです。

  • DX化を進め業務効率を上げる
  • 残業を申請式にする
  • 勤務時間の管理システムを導入する

まずは労働時間を見える化し、どの部分を効率化できるか考えてみましょう。

 

健康診断の実施

健康診断は、従業員の健康管理のために社内で定期的に実施する必要があります。労働安全衛生法により、健康診断は義務化されています。

原則として1年に1回、また従業員を雇い入れたときに一般健康診断を受けさせなければいけません。健康診断結果については、定められた期間保存する義務もあります。

参考:厚生労働省 労働安全衛生法に基づく健康診断を実施しましょう

 

健康診断を行えば本人が自分の健康状態を正しく把握できるようになり、健康意識が向上します

また健康診断を通じ、身体の調子がよくない従業員を企業としてサポートできます。健康診断は健康に心配のある人だけでなく、従業員全員に受けてもらいましょう。

 

ストレスチェック制度の実施

ストレスチェックとはストレスに関する質問に従業員が回答し、自身のストレス状態を調べる検査のことです。

ストレスという目に見えないものを数値化し測ることで、従業員の置かれている現状を把握できます。

またストレスチェックの実施により明らかになった問題点を改善することで、従業員にとって快適な職場環境の実現に繋がります。

ストレスチェックは2015年12月から従業員50人以上の職場で、年1回の実施が義務づけられています。

ただし、従業員が50人未満の場合でもストレスチェックは努力義務として極力行うことが推奨されています。

従業員のメンタルヘルスの不調を防ぐため、従業員数に関わらず積極的に実施しましょう。

参考:厚生労働省 ストレスチェック制度導入マニュアル

 

快適な職場環境の整備

労働環境が劣悪だと従業員の士気が上がりづらく、生産性も下がってしまいます。

疲労やストレスを緩和させ心身を癒せるよう、社内に次のような設備や施設を完備しましょう。

  • 休憩スペース
  • 仮眠室
  • リフレッシュルーム
  • シャワー室

快適な職場環境の整備は、従業員のモチベーションに直結します。

日頃から会社のために頑張って働いている従業員が休息のひと時を過ごせるよう、憩いの場を提供しましょう。

 

福利厚生の充実

会社による全面的なバックアップ体制が整っていれば、従業員は安心して日頃の業務に集中できます。

従業員が毎日健康で過ごせるよう、福利厚生を充実させましょう。会社による福利厚生の代表例は次の通りです。

  • 住宅手当
  • 家賃補助
  • 社員寮
  • 臨時休暇
  • 社員食堂
  • 保養所
  • 部活動
  • 社員旅行 

福利厚生を充実させることで従業員の健康が維持され、従業員はのびのびと働けます。必要な福利厚生について従業員にアンケートを取るのがおすすめです。

 

健康に関して学べる場の設置

健康管理について学べる場を設ければ従業員の健康意識が高まり、日頃から健康的な生活を意識できるようになります。セミナーのテーマ例は、次のとおりです。

  • 運動不足解消セミナー
  • 睡眠改善セミナー
  • 食事栄養バランス改善セミナー
  • メンタルセルフケアセミナー
  • 女性サポート健康セミナー
  • シニア世代向け健康セミナー

健康セミナーの種類は多岐にわたっているため、会社のカルチャーや従業員の特性に合ったセミナーを用意しましょう。

従業員一人ひとりの健康意識が高まれば、健康に配慮するムードが会社全体に醸成されます。

 

相談窓口の設置

メンタルヘルス対策の一環として社内に相談窓口を設置するのも効果的です。

日頃から抱えている不安や悩みを気軽に相談できる場を提供することで、従業員の精神衛生状態を良好に保てます。従業員の心の拠り所を作りましょう。

 

まとめ:健康に配慮した経営で生き生きと働ける職場を作ろう

企業は「労働契約の第5条」にあるとおり安全配慮義務に基づいて労働者の安全に配慮しなければなりません

従業員の健康管理を徹底するため、労働時間削減、ストレスチェックの実施、職場環境の整備などを行いましょう。

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