企業が直面する多くの課題の中で、従業員の健康管理への関心は年々高まっています。

この関心が高まる背景として、従業員の健康が企業の生産性と密接に関わっているという認識が広がっていることが挙げられます。

そのため現状において現在企業が行う健康経営には注目が集まっており、健康経営をサポートするサービスの市場も拡大しています。

そこで当記事では、健康経営の市場規模の最新の情報や今後の動向、企業に求められる健康対策のポイントについて紹介します。
健康経営の市場規模について最新の動向を知りたい方は、参考にしてみてください。

健康経営とは

健康経営とは、従業員の健康を企業の経営戦略の一部として位置づけ、積極的に健康管理を行う取り組みです。経済産業省によると、健康経営は従業員の健康管理を経営的視点から戦略的に行うことであり、企業の競争力強化と従業員の生産性向上に寄与する重要な要素とされています。

健康経営を実践することで従業員の健康リスクを低減し、メンタルヘルス問題の早期発見・対応が可能となります。また従業員の満足度とモチベーションの向上、そして病欠や早期退職の減少により、企業全体の生産性が高まります。

さらに健康経営を行う企業への評価も高まりつつあり、政府による認定制度を通じて積極的に従業員の健康管理に取り組む企業は、投資家や顧客からの信頼を獲得しやすくなります。

参考:経済産業省 健康経営

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健康経営を支えるデータヘルス計画・健康経営・PHR関連システム/サービスの国内市場動向

ここでは健康経営の市場規模に関する現状と予測について、データを元にして解説します。

健康経営に関わる市場の拡大

株式会社富士経済では『データヘルス計画や健康経営、PHR関連システム/サービスの国内市場』について調査を実施しています。

PHRとは「パーソナルヘルスレコード」の略で、個人の健康情報や医療情報を管理するための電子レコードです。PHRを二次利用することにより、民間企業が従業員の詳細な健康データに基づいて健康管理や支援が可能となります。

出典:富士経済グループ データヘルス計画、健康経営、PHR関連システム/サービス市場を調査


調査よりサービスの全体的な市場動向を見てみると、2021年から2029年の間に市場が約2.2倍拡大すると予測されています。またデータヘルス計画市場は2021年で221億円を記録しており、2020年比で120.1%の成長を示しています。

同様に、健康経営関連市場も608億円に達し、120.4%の成長率を示しました。

さらにPHR関連システム・サービスは146億円で、109.8%の成長となっています。

上記調査からわかるように、健康経営を支える市場は今後も成長が見込まれる強いポテンシャルを秘めているといえます。

コロナ禍における健康経営市場動向の変化

新型コロナウイルス感染症のパンデミックは、世界中の生活とビジネスに深刻な影響をもたらしましたが、健康経営に対する意識にも大きな変化を引き起こしました。

経済産業省の資料には全国の20 代〜60代の男女1,000 名に対し、新型コロナウイルス感染症流行による健康・保険サービスに関する意識の変化について記載されています。

その結果、新型コロナウイルス感染症拡大をきっかけに約70%の回答者が健康意識の変化を感じていると報告がされました。

出典:経済産業省「健康経営の推進について」

そのため健康に関する取り組みを求める従業員も少なくないといえます。

健康経営市場の今後

さらに企業が従業員の健康とウェルビーイングを重視することで、健康促進サービスやデジタルヘルスソリューションへの需要が増加するといえます

今後従業員の体調管理からメンタルヘルスケアまで、幅広い健康関連の取り組みが企業によって積極的に実施される動きが強まるでしょう。

そして健康経営に関連するヘルスケアテクノロジーや健康管理サービスの市場は、今後顕著に成長するといえます。

健康経営に関連するヘルスケア産業の市場規模

経済産業省の資料に基づくと、健康経営を支援するヘルスケア産業の市場は、2016年の約25兆円から2025年には約33兆円へと拡大する見込みです。

特に注目すべきは健康保持・増進に注力する分野で、その市場規模は2016年の約9.2兆円から2025年には約12.5兆円へと成長すると推測されています。

出典:経済産業省「健康経営の推進について」

ストレス社会とも呼ばれる現代において、従業員の心の健康は重要です。今後も従業員のメンタルヘルスへの関心は高まると予想されるため、ヘルスケア産業の発展も見込まれるでしょう。

ヘルスケアサービス市場規模が増加した要因

ヘルスケアサービス市場の拡大は、単なる一過性のトレンドではありません。

ここでは、ヘルスケアサービス産業の市場規模が拡大している要因についてより具体的に紹介します。

人口の高齢化

内閣府による高齢化の状況を示す資料を見ると「65歳以上の人口割合(赤い棒グラフ)」が年々上昇し、高齢化が進行することが今後予想されています。

出典:内閣府「第1節 高齢化の状況」

高齢者の増加に伴い健康管理と医療サービスへの需要は高まるため、ヘルスケアサービス市場が拡大する要因といえます。

医療費の増大

厚生労働省の医療費の将来推計を示す資料では、国民医療費の国民所得に占める割合が2020年度7%から2025年では12%を超える1.7倍に増えると予想されています。

出典:経済産業省「医療費の状況」

2025年以降も上記グラフの傾向が続けば、医療サービス需要がさらに高まりヘルスケア産業の発展を促す重要な動機となります。

デジタル化とイノベーションの変化

デジタル化とイノベーションは、情報へのアクセスを容易にし、効率性を高めたことからヘルスケア産業のサービス向上を後押しする形で市場規模拡大に貢献しています。

例えば、スマートウォッチやフィットネストラッカーなどのウェアラブルデバイスなどの活用は、私たちの健康と運動を追跡するための日常的なツールとして役立っています。

さらにAIとデータ分析技術の進展により、データはより精密な健康アドバイスや治療法の提案に活用され、ヘルスケア産業のサービスの質を向上させています。

上記のようなデジタル技術の進化により、ヘルスケア産業はさらに急速に進化すると考えられます。

政府の政策と支援

日本政府は人口高齢化とその影響に積極的に対応し、健康経営市場の拡大を後押ししています。政府の推計によると、日本の総人口は今後100年で約100年前の明治時代後半の水準にまで減少する見込みです。

そこで政府は健康への投資を促進し、就労世代の活力と健康寿命を延ばすための政策を実施しています。

具体的には、健康経営に関連する表彰制度の構築を通じて、企業が社会的評価を受けやすい環境を整えています。また日本健康会議の発足や健康経営ガイドブックの配信などにより、企業が健康経営に参画しやすい支援体制を提供しています。

政府の公的な支援によりヘルスケアサービスへのアクセスが容易になったことで、ヘルスケア市場拡大にはプラスの影響が生まれています。

健康管理システムの市場規模

健康管理システムは、企業が従業員の健康に関するデータをオンラインで一元的に管理し、人事労働者の業務効率化とリスクマネジメントを実現するITシステムです。健康管理システムを活用すれば、労働生産性の向上や医療費の削減、従業員の満足度向上に繋がる施策を展開しやすくなります。

また従業員の健康状態を迅速に把握し、必要な健康対策をタイムリーに実施することも可能です。

総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済の調査によると、2029年の健康管理システムの市場は2020年比で135億円195.7%拡大すると見込まれています

出典:株式会社富士経済「データヘルス計画、健康経営、PHR関連システム/サービス市場を調査」

健康管理システムの市場拡大は、データ駆動型の健康経営が企業にとって重要な経営資源となりつつあることを示唆しています。

健康管理システムにおける市場拡大の要因

健康管理システムは、従業員の健康状態をデータで分析することでリスクを早期に特定し、適切な健康促進プログラムや介入策の実施などを行うために必要なシステムです。

ここでは企業が直面する健康管理の課題と必要性を踏まえ、健康管理システムの市場規模が拡大している要因を解説します。

ストレスチェック実施の義務化

2015年から従業員50人以上の会社に年1度のストレスチェックが義務化されており、企業人事・労務担当者の負担が増加しました。

そこで健康管理システムの導入がその負担を軽減し、同時に効率化をもたらす機会を与えています。

例えばWebベースの健康管理システムを導入することで、企業は迅速にデータを集計して分析できます。

またメンタルヘルス不調者の早期発見、適切な介入、職場環境の改善が実現し、最終的には労働生産性の向上へと繋がっています。

ヘルスケアITの推進

ヘルスケアITとは、クラウドをはじめとするテクノロジーを駆使してイノベーションを起こすことで医療の最適化と患者本位の医療を実現する取り組みです。

特に慢性疾患のケアに必要な長期間のフォローアップと、医療機関間の連携を強化しています。

現在では経済産業省のヘルスケア産業課によって「ヘルスケアIT研究会」が設置されるなど、健康や医療情報の利活用に向けた民間投資の促進がされています。

実際にヘルスケアITの導入により、医師同士のカンファレンスや診断を直接病院で行わなくても良い状況が実現しています。

今後もヘルスケアITはさらなる発展を遂げ、より多くの医療機関で採用されるようになるといえます。

参考:厚生労働省 2015年12月からストレスチェック制度が義務化されました
参考:経済産業省 ヘルスケアIT分野への民間投資活性化に向けて

健康対策を推進するために必要なポイント

ここでは近年の動向をもとにして、健康対策を推進するために自社内で必要なポイントについて解説していきます。

経営者のリーダーシップと組織全体の連携を図る

健康対策を推進していくうえでは、経営者のリーダーシップと組織全体の連携が不可欠です。経営者は、社内で健康経営の重要性を強調し、企業全体の目標と戦略を明確に共有してください。

例えば、人事部門、産業保健スタッフ、健康保険組合といった組織を跨いだチームを形成し、健康管理のための具体的な役割分担を行います。

また外部の専門家やコンサルタントの知見を取り入れることで、企業に最適な健康プログラムを設計・実施することも大切です。

経営トップからの明確なメッセージと組織全体の協力により、健康経営の推進はより効果的に進みます。

従業員参加型の推進体制を整える

従業員が自ら健康対策に積極的に関わる体制を整えることは、健康対策推進するうえで大切です。従業員が主体となり健康に関連する活動に参加する機会を提供すれば、個々の健康意識向上に繋がります。

そこで重要なのは、従業員が主体的に行う、健康に関連するコミュニティ活動を推進することです。

例えば、職場内でのウォーキングやマラソンのコミュニティ活動は、同僚とのコミュニケーションを促進し、日常的な運動を習慣化できます。

また健康に関するセミナーや研修を定期的に実施することで、従業員は正しい知識を身につけ、自身の健康管理に繋がります。

従業員一人ひとりが健康対策の推進者となる、従業員参加型の推進体制を目指してください。

社内の課題に合わせた取り組みを設定する

健康対策を進める際には、具体的な目標を設定し、それに基づいた健康プログラムを展開することが大切です。

例えば、健康診断の受診率を100%にすることを目指し、健康診断受診状況を把握する健康管理システムを導入するなど、課題解決のための具体的な行動を実施することです。

健康への課題が不透明な場合には従業員からのフィードバックを収集し、その声に耳を傾けることで、従業員が抱える課題を理解できるでしょう。

それぞれの職場の具体的な課題に合わせた健康プログラムを展開することは、効果的な健康対策を実施するうえで欠かせないステップです。

健康課題を経営課題として捉える

健康課題を経営課題として捉えることは、健康対策を推進するうえで大切です。

従業員個々で行う健康対策ではリソースや資金面での負担が増え、効果的な対策が見込めません

健康対策を効率的に進めるには、従業員の健康課題を経営課題として捉え会社が積極的に参入する健康経営の概念が大切です。

まずは経営戦略の一環として健康診断のデータを詳細に分析し、健全な経営を実現するうえで障壁となる健康課題を明確にしてください。

高ストレスレベルの従業員が多い場合には、生産性低下や病欠の増加に繋がる可能性があります。

健康経営の結果を踏まえた効果的な戦略を継続して実施すれば、健康経営の実現に繋がります。

長期的な視野で持続的な取り組みを行う

健康対策を推進するには、長期的な視野を持ち、戦略的な計画に基づいて取り組むことが大切です。

ウォーキングイベントの開催や食事改善などの効果は、すぐに現れるものではありません。

長期的かつ持続的な取り組みが必要であることを念頭に置き、PDCAサイクル(Plan-Do-Check-Act)を活用しつつ課題解決に向けた一連の流れを整えましょう。

以下の記事では、健康経営を実現するための効果的な進め方について紹介していますので気になる方は参考にしてください。

あわせて読みたい:健康経営の進め方とは?組織体制の整え方や効果的に進める方法を紹介

まとめ:健康経営の市場規模は今後も拡大傾向

健康経営の市場規模は、現在の動向を踏まえると今後も引き続き拡大傾向にあると予想されます。株式会社富士経済の調査結果によると健康ヘルスケア産業の市場規模は、2029年には2020年比で約2.2倍に増加すると予想されています。

またヘルスケア産業の発展により健康経営への取り組みに参画する企業も増加しています。

そこで弊社アジャイルウェアでは、健康経営を支援するため「KIWI GO」という健康アプリをサービスを提供しています。KIWI GOは、運動の継続と従業員同士の交流を促進する健康アプリです。

従業員同士のコミュニケーション活性化や運動が習慣化される仕組みがあるため、従業員の身体と心を整えるのにピッタリです。

健康経営推進のため効果的な施策を探している方は、ぜひ活用を検討してください