健康経営を進めるにあたって、助成金をうまく活用すると、効率的かつ会社負担を減らしながら健康経営を進めることができます。

しかし「健康経営における助成金には、どんなものがあるのか?」このような疑問を抱かれる方も多いでしょう。

そこでこの記事では、健康経営に関連する助成金をわかりやすく施策別で紹介しています。助成金を活用しながら、健康経営を促進させましょう。

 

健康経営で利用したい助成金【心身・健康関連】

ここからは、心身や健康関連で健康経営に取り組んでいる方が受けられる助成金を4つご紹介します。

各助成金の対象要件や支給額などを詳しく解説していきます。活用できそうな助成金があれば、申請を検討してみましょう。

 

ストレスチェック助成金

ストレスチェック助成金は、事業所が医師や保健師などによるストレスチェックの実施やチェック後の医師による面談指導などを実施した場合に、事業主が費用の助成を受けられる制度です。

健康経営でストレス軽減に取り組むのであれば、ぜひ活用したい助成金です。

助成金の対象要件や金額については、以下のとおりです。

 

事業者・事業場の対象要件

①労働保険の適用事業者であること

②中小事業主であること

③常時使用する労働者が派遣労働者を含めて、50人未満の事業場であること

※事業者・事業場の対象要件は、①〜③のすべての要件を満たす必要があります。

 

助成対象と助成金額

助成対象

助成金額

ストレスチェックの実施費用

助成額労働者1人につき500円(税込)

ストレスチェックに係る医師による活動費用

1事業あたり1回の活動につき21,500円(税込)※上限3回まで

参照:「ストレスチェック」実施促進のための助成金の手引 【令和4年版】

 

受動喫煙防止対策助成金

受動喫煙防止対策助成金とは、中小企業事業者が受動喫煙防止対策を実施するために必要な経費(喫煙専用室等の設置にかかる工費、設備費、備品費、機械装置費など)に対して助成する制度です

禁煙対策を実施する企業は多く、喫煙専用施設の導入や指定場所以外すべて禁煙といった場所が増えています。

受動喫煙防止対策助成金を利用していない場合は、ぜひ活用して喫煙防止に努めましょう。

助成金の対象要件や金額については、以下のとおりです。

事業者・事業場の対象要件

①労働者災害補償保険の適用事業者

②以下の表「対象となる中小企業者」のなかで、労働者か資本金のどちらか一方を満たしていること

③処置を講じる区域以外を禁煙とする事業者



対象となる中小企業者

業種

常時雇用する労働者数

資本金

小売業

小売業、飲食店、配達飲食サービス業

50人以下

5,000万円以下

サービス業

物品賃貸業、宿泊業、娯楽業、医療・福 祉、複合サービス(例:協同組合)など

100人以下

5,000万円以下

卸売業

卸売業

100人以下

1億円以下

その他の業種

農業、林業、漁業、建設業、製造業、 運輸業、金融業、保険業など

300人以下

3億円以下




助成対象と助成金額

助成対象

助成率

助成金額

喫煙専用室や指定たばこ専用喫煙室の設置や改修にかかる工費、設備費、備品費、機械装置費など

・飲食店を営んでいる事業者は、2/3

・それ以外は、1/2

上限100万円

同じ事業場で行う複数の場合でも上限金額は100万円です。また、1事業場につき1回のみの助成金になります。

また、過去にこの助成金を受けた事業場は、申請できないので注意してください。

参照:「受動喫煙防止対策助成金」のご案内【令和4年版】


心の健康づくり計画助成金

心の健康づくり計画助成金とは、メンタルヘルス対策促進員の助言・支援を受けて、心の健康づくり計画を作成し、メンタルヘルス対策を実施した場合に、事業者が助成を受けることができる制度です。

心と健康づくり計画助成金を利用すれば、専門家から助言や支援を受けながら、心と健康の問題改善をしていくことができます。

助成金の対象要件や金額は、以下のとおりです。

事業者・事業場の対象要件

①労働者を雇用している法人・個人事業主で、当該事業場に雇用されている労働者がいること

②労働保険の適用事業場であること

③登記上の本店または本社機能を有する事業場であること(個人事業主については、開業届の提出がされていること)

 

※①〜③のすべての要件を満たす必要があります。

助成対象と助成金額

助成対象

助成金額

心と健康づくりの取り組みに対し助成

1法人または1個人事業主あたり、一律10万円 ※1回限り 

 

※助成対象:産業保健総合支援センターのメンタルヘルス対策促進員が定める取り組み要件を満たす必要があります。詳しくは、以下の参照資料をご覧ください。

 

参照:「心と健康づくり計画助成金」【令和3年度版】

 

治療と仕事の両立支援助成金

治療と仕事の両立支援助成金とは、傷病を抱える従業員が治療を受けながら働ける環境への取り組みをする企業を支援するための助成金です。

従業員の健康問題を改善しなければ会社の生産性の減少に繋がり、企業の業績にも悪影響が出ます。

そのため健康経営においては、傷病者が働きながら治療を受けられる体制づくりが必要でしょう。

 

心の健康づくり計画助成金の助成金には、「環境整備コース」と「制度活用コース」の2つがあり、助成金の対象要件や金額は以下のとおりです。

事業者・事業場の対象要件

環境整備コース

事業主が、両立支援コーディネーターの配置と両立支援制度の導入を新たに行った場合

制度活用コース

事業者が、両立支援コーディネーターを活用し、両立支援制度を用いた両立支援プランを策定し、実際に適用した場合



助成対象と助成金額

助成対象

助成金額

環境整備コース

1企業または1事業主あたり20万円 ※1回限り

制度活用コース

1企業または1事業主あたり20万円 ※有期・無期契約の各1回限り

 

参照:事業所における治療と仕事の両立支援のためのガイドライン

 

小規模事業場産業医活動助成金

小規模事業場産業医活動助成金とは、労働者数50人未満の事業場を対象に、産業医や保健士との契約や産業医活動等実施した場合に助成金が受けられる制度です

労働者数が50人以上の事業場では、産業医等を設置し、労働者の健康管理を義務づけていますが、50人以下の場合は、努力義務になっています。

そのため、小規模事業場産業医活動助成金は労働者数50人未満の小規模事業者の労働者に対し、健康管理を推進する目的で作られました。

 

小規模事業場産業医活動助成金には、以下3つのコースがあります。

  • 産業医コース
  • 保健師コース
  • 直接健康相談環境整備コース

すべてのコースの要件を満たせば、最大で60万円の助成金を受け取ることができます。

 

全コースに共通するのは、次のような要件です。

  • 小規模事業場であること(常時50人未満の労働者を使用する事業場)
  • 労働保険の適用事業所であること
  • 産業医または保健師が、産業保健活動の全部または一部を実施していること
  • 産業医活動を行う者は、自社の使用者・労働者以外の者であること

 

それぞれのコースに対しての要件は、以下のとおりです。

【産業医コース】:平成29年以降、産業医の要件を備えた医師と事業場が新たに「産業医活動に係る契約」を締結していること

【保健師コース】:平成30年度以降、新たなに保健師と事業場が「産業保健に係る契約」を締結していること

【直接健康相談環境コース】:産業保健活動に係る契約を産業医もしくは、保健師に労働者が直接健康相談できる環境を整備する条項を含めて平成30年度以降新たに締結していること

 

これらの要件を満たせば、助成金を受け取れます。また、それぞれのコースでの助成金の金額は、以下のとおりです。

助成対象と助成金額

助成対象

助成金額

産業医コース
保健師コース

1事業所につき6ヶ月ごとに10万円 ※2回限り

直接健康保険産業設備

1事業所ごとに一律10万円 ※2回限り

参照:労働者健康安全機構

 

健康経営で利用したい助成金【職場環境改善等の関連】

ここからは、職場環境改善等の関連で健康経営に取り組まれている方が受けられる助成金を3つご紹介します。

健康経営で環境改善をされている方は、次の助成金も検討してみてください。

 

業務改善助成金(労働時間短縮・年次促進支援コース)

業務改善助成金は、中小企業・小規模事業者の生産性向上を支援し、賃金の引き上げを図るための制度です。

生産性を上げるために機械設備やコンサルティングの導入、人材育成などの投資を行い、事業内最低賃金を一定額以上引き上げた場合、設備投資費用の一部を助成してくれます。

 

助成金の要件や金額は、以下のとおりです。

事業者・事業場の対象要件

①事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差額が30円以内

②事業場の規模100人以下

 

※①と②の両方の要件を満たした事業場が対象です。

 

支給要件

  • 賃金引上げ計画策定すること
  • 引上げ後の賃金額を支払うこと
  • 生産性の向上に資する機器・設備やコンサルティングの導入、人材育成、教育訓練を実施することにより業務改善を行い、その費用を支払うこと
  • 解雇、賃金引下げ等の不交付事由がないこと

 

※その他、申請にあたって必要書類があります。

 

助成対象と助成金額

助成対象

助成金額

30円コース、45円コース、60円コース、90円コース

30万円〜600万円 申請コースごとに定める引上げ額以上、事業場内最低賃金を引き上げた場合、生産性向上のための設備投資等にかかった費用に助成率を乗じて算出した額を助成します。

 

申請コースごとに、助成対象事業場、引上げ額、助成率、引き上げる労働者数、助成の上限額が定められていますので、申請前に確認しておきましょう。

 

働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)

働き方改革推進支援助成金とは、生産性を向上させ労働時間の縮減や年次有給休暇の促進を向上させるため、環境整備や設備投資等に対し助成してくれる制度です。

生産性の向上を目指し助成を受ければ、働きやすい環境づくりができるでしょう。

 

助成の要件や金額は、以下のとおりです。

事業者・事業場の対象要件

①労働者災害補償保険の適用を受ける中小企業事業主であること

②年5日の年次有給休暇の取得に向けて就業規則等を整備していること

③交付申請時点で、定められている成果目標のいずれかを実施していること

④助成対象となる取り組み内容のいずれかを実施していること

 

※助成を受けるためには、①〜④のすべての要件を満たす必要があります。

※③と④にある「定められた成果目標」や「助成対象となる取り組み内容」に関しては、下記参照サイトからご確認ください。

 

助成対象と助成金額

助成対象

助成金額(上限額)

月60時間を超える36協定の時間外・休日労働時間数を縮減

50万円〜150万円
※成果により助成金が変動する

年次有給休暇の計画的付与制度の導入

50万円

時間単位の年次有給休暇制度を新たに導入

25万円

特別休暇(病気休暇、教育訓練 休暇、ボランティア休暇、新型コロナウイルス感染症対応のための休暇、不妊治療のための休暇)のいずれ か1つ以上を新たに導入

25万円

 

参照:令和4年度「働き方改革推進支援助成金」労働時間短縮・年次促進支援コースのご案内

 

職場環境改善計画助成金

職場環境改善計画助成金とはストレスチェック実施後の集団分析結果を踏まえ、専門家による指導に基づき職場環境の改善を実施した場合、指導費用の助成を受けることができる制度です。


ストレスチェック実施後の集団分析を行うことが要件になっているため、既にストレスチェックを行っている企業が活用したい助成金です。

 

助成金の要件や金額は、以下のとおりです。

事業者・事業場の対象要件

①労働者を雇用している法人・個人事業主であること

②労働保険の適用事業場であること

 

※①と②のすべての要件を満たす必要があります。



取り組みの支給要件

①ストレスチェック実施後の集団分析を実施していること

②専門家と職場環境改善指導に係る契約を締結していること

③ストレスチェック実施後の集団分析だけでなく、管理監督者などの専門家から得た情報等を勘案して、職場環境の評価や改善すべき事項について指導を受けていること

④ ③の専門家の指導に基づき、職場環境改善計画を作成し、職場環境の改善を実施していること

⑤ ③の専門家から、④の職場環境改善計画に基づき職場環境の改善が実施されたことの確認を受けていること

 

①から⑤の取り組みの支給要件を、すべて実施している場合に助成を受けることができます。

 

参照:令和4年度版「職場環境改善計画助成金」

 

健康経営で利用したい助成金【人材・育成等の関連】

ここからは、人材・育成等の関連で健康経営に取り組まれている方が受けられる助成金を2つご紹介します。

それぞれの助成金について、要件や支給額など解説していきます。

健康経営で人材や育成等の改善をされている方は、次の助成金も検討してみましょう。

 

キャリアアップ助成金

キャリアアップ助成金とは、有期雇用労働者や短時間労働者、派遣労働者などの非正規雇用労働者の正社員化といった処遇改善の取り組みを実施した事業主に対して助成する制度です。

 

健康経営における取り組みで、従業員満足度の向上や生産性向上、会社定着率の向上などの取り組みをしている企業であれば、ぜひ活用を検討したい助成金です。

 

助成の要件や金額は、以下のとおりです。

事業者・事業場の対象要件

①雇用保険適用事業所の事業主であること

②雇用保険適用事業所ごとに、キャリアアップ管理者を置いている事業主であること

③雇用保険適用事業所ごとに、対象労働者に対し、キャリアアップ計画を作成し、管轄労働局長の受給資格の認定を受けた事業主であること

④該当するコースの処置に係る対象労働者に対する労働条件、勤務状況及び賃金の支払い状況等を明らかにする書類を整備し、賃金の算出方法を明らかにすることができる事業主であること

⑤キャリアアップ計画期間内にキャリアアップに取り組んだ事業主であること

※①〜⑤は、各コース共通の支給対象事業主です。各コースの支給対象事業主の要件については、参照サイトをご確認ください。



助成対象と助成金額

助成対象

助成金額

正社員コース

42万7,500円〜72万円(1人当たり)

賃金規定等改定コース

3万3,250円〜36万円(1事業所当たり)
9,500円〜3万6,000円(1人当たり)

賃金規定等共通化コース

42万7,500円〜72万円(1事業所当たり)
1万5,000円〜2万4,000円(1人当たり)

諸手当制度等共通化コース

28万5,000円〜48万円(1事業所当たり)
1万2,000円〜1万8,000円(対象労働者1人当たり)
12万円〜19万2,000円(諸手当等の数1つ当たり)


選択的適用拡大導入字処遇改善コース

14万2,500円〜24万円(1事業所当たり)
1万4,000円〜16万4,000円(1人当たり)

短時間労働者労働時間延長コース

3万4,000円〜28万4,000円(1人当たり)

参照:キャリアアップ助成金の案内

 

職場定着支援助成金(雇用管理制度助成コース)

職場定着支援助成金とは、従業員の職場定着率アップのための助成金制度です。

 

全部で6つのコースがあり、ここでは健康経営に最も関連する「雇用管理制度助成コース」について解説していきます。 

 

雇用管理制度助成コースとは、企業が新たに雇用管理制度を導入し、設定された離職率の目標を達成した場合に、助成を受けられる制度です。

 

助成金の要件や金額は、以下のとおりです。



事業者・事業場の対象要件

①雇用保険の適用事業の事業主であること

②過去に以下の助成をすでに受けている場合には、特定の条件があります。(参照サイトを参考に確認してください。)

  • 『本助成金(Ⅰ雇用管理制度助成コース/A制度導入助成)』 
  • 『中小企業労働環境向上助成金(雇用管理制度助成)』 
  • 『建設労働者確保育成助成金(雇用管理制度助成コース/制度導入助成)』
  • 『人事評価改善等助成金(制度整備助成)』
  • 『本助成金(Ⅲ保育労働者雇用管理制度助成コース、Ⅳ介護労働者雇用管理制度助成コース)』

③短期間正社員制度を導入する場合は、保育事業主であること

④倒産や解雇などの離職理由により、離職した者が雇用管理制度整備計画提出日における被保険者数の6%を超えていないこと

 

※①から④のすべての要件を満たす事業主が対象です。



助成対象と助成金額

助成対象

助成金額

目標達成した場合

57万円(生産要件を満たした場合、72万円)

 

参照:職場定着支援助成金のご案内

 

助成金を申請する際の注意点

助成金を受け取ることができれば、会社の負担を軽減しながら業績の向上や改善等に取り組むことができます。

しかし、助成金を受け取れなかった場合は、すべて会社負担になってしまいます。そこでここからは、助成金を申請する際の注意点について、4つご紹介していきます。

助成金を確実に受け取り、健康経営を進めていきましょう。

 

助成金の要件をしっかり確認する

要件を満たしていなければ、申請をしても助成金を受け取ることができません。

 

助成金の要件に該当していないにも関わらず施策を進めてしまい、いざ助成を受けようとしても受けられない、といった事態は避けるべきです。


まずは、助成金を受けられる要件を満たしていることを確認し、行動を始めましょう

 

助成金の要件が実現可能なのか考える

助成金のなかには、あらかじめ設定された目標を達成した場合に、助成金が支払われるものもあります。

その場合、設備投資や制度の改善をしたものの目標を達成できなければ、費用は事業主負担になります。

費用が発生する前には、助成金の要件が実現可能なのかあらかじめ試算をしておくことが大切です。

 

申請期限を把握する

各助成金の申請には、申請期限が存在します。

助成金を受け取るための要件を満たすための施策ばかりに気を取られ、申請期限に間に合わなければ、助成金を受け取ることができません。

あらかじめ申請期限を確認し、計画を立てて助成金に取り組みましょう

 

最新の申請要件を確認する

助成金を受け取るための要件は、その年ごとに改定される場合があります。

過去の要件を満たしていたとしても、その年の要件を満たしていなければ費用の補助は受けられません。

最新の要件を見逃し助成金を受け取れない、といった事態にならないよう、要件をチェックするときは最新の情報なのかを確認しましょう。

 

まとめ:助成金をうまく活用して健康経営を進めよう

ここまで、健康経営に関わる助成金について、いくつか紹介しました。助成金をうまく活用すれば、負担を抑えながらより効率的に健康経営を始められます。

当記事を参考に助成金を活用し、健康経営の促進に役立ててください。

 

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