近年、企業の競争力や生産性の向上を図る新しい戦略として、従業員の健康や快適な職場環境に重点をおいた「健康経営」が注目されています。

しかし実際に健康経営を進めていく際、「どのような指標で評価するのか」「どのステップから始めればよいのか」といった疑問や課題に直面する企業も多いでしょう。

そこで本記事では、健康経営を評価するための具体的な指標やその設定方法、さらに成功に導くための進め方を詳しく解説します。

健康経営の基本

健康経営とは、従業員の健康管理を経営的な視点で捉え、それを企業の成長戦略の一部として組み入れる考え方です。

従業員の健康管理をただの福利厚生の一環として考えるのではなく、企業の持続的な成長と従業員の健康の両立を目指す戦略的なアプローチです。

企業理念や経営方針に基づいて従業員への健康投資を行うことは、企業に多くのメリットをもたらします。

従業員の健康や活力が向上することで、生産性や労働の質が高まるだけではなく、組織全体の雰囲気やモチベーションの向上にも寄与します。

健康経営は企業の業績や企業に対する評価の向上に繋がる長期的な成長と、従業員の健康という両方の観点から重要な概念です。

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健康経営における評価指標の重要性

ここでは、企業が健康経営を効果的に推進するための評価指標の設定と、その基盤となる考え方を解説します。

健康経営における評価指標の基本的な考え方

健康経営の評価指標は、企業の健康経営の目標や方向性を具体的にする手段です。

指標を持つことで、どれだけの進捗があるのか、どのような問題が浮き彫りになっているのかを把握できます。

さらに評価指標を通じて、外部のステークホルダーに対して企業の健康経営の取り組みを効果的に可視化し、伝達することが可能です。

参考:健康経営ガイドブック 経済産業省

指標を設定・評価するメリット

健康経営の指標の設定・評価により、多くのメリットが得られます。

  • 効果的な経営戦略の策定
    指標に基づいたデータにより、具体的かつ効果的な経営戦略の策定が可能
  • 従業員のモチベーションの向上
    明確な目標や期待値を共有すれば、従業員のモチベーションや参加意欲が高まる
  • 持続的な最適化の実現
    定期的な評価を通じて健康経営の取り組みの効果や成果を確認し、次のステップや改善点を発見できる

健康経営の評価指標は、企業の取り組みをより明確かつ効果的に進めるための重要なツールとして位置づけられます。

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健康経営の評価指標となる要素

ここでは、健康経営の評価を行ううえで基軸となる指標要素を解説します。

1.従業員の健康状態

従業員の健康は、会社経営の基本です。従業員の健康を定期的な健康診断や生活習慣病の発症率などの指標で把握し、適切な健康サポートプログラムを導入してください。

個々の従業員に合わせた予防策や健康増進活動を行い、従業員が健康に過ごせる時間を増やしましょう。

【評価指標例】定期健診受診率、保健指導対象率、保健指導実施率、など

2.職場の働きやすさ

職場の雰囲気や環境に対する従業員の満足度は、職場環境調査やアンケートを通じて評価できます。

得られたフィードバックをもとに改善策を展開することで、従業員にとってより満足のいく職場を作り上げることが可能です。

【評価指標例】従業員満足度調査、職場環境調査、従業員エンゲージメント調査、など

3.健康プログラムの参加率

企業が実施する健康増進プログラムへの従業員の参加率は、そのプログラムがどれだけ受け入れられているかを示します。

参加率のデータは、プログラムの効果や改善を評価し、従業員の継続的な健康維持をサポートするために重要です。

【評価指標例】健康教育実施の参加率・満足度、禁煙プログラムの参加率・満足度・継続率、など

4.プレゼンティーイズム・アブセンティーズム

プレゼンティーイズムとは、従業員の体調不良、ストレスなど、私的な問題を抱えながら出勤している状態です。

また、アブセンティーズムとは、従業員の病気やケガ、その他の私的な理由で仕事を欠勤することを指します。

出勤率や欠勤率、職場での遅刻・早退の頻度は、従業員の健康状態やモチベーションと直結している重要な要素です。

プレゼンティーイズム・アブセンティーズムを測定することで、従業員が直面している健康上の問題やワークエンゲージメントの度合いの理解に役立ちます。

【評価指標例】健康診断の結果からの改善状況把握の有無、休職率・欠勤率の状況把握の有無、施策と医療費の費用対効果分析の有無、など

5.労働時間

実際の労働時間や休息時間のデータは、働き方改革の進捗を把握し、従業員の健康を守るための基本的な指標です。

適切な休息時間の取得状況などを評価し、従業員のワークライフバランスの実現に繋げてください。

【評価指標例】長時間労働者数、従業員1人平均年間総実労働時間、年次有給休暇取得率、従業員1人平均年次有給休暇取得日数、など

参考:健康経営ガイドブック 経済産業省

健康経営における指標の設定と測定方法

ここでは、効果的な指標の設定手順と測定方法について解説します。

指標設定のステップ

明確な目標設定とそれを支える指標の設定は、持続可能な組織運営を支えるうえで必要といえます。

プロセスを適切に管理するためには、次のポイントが重要です。

  1. 目的の明確化
    まずは成果を測定する目的と、その目的が組織の全体戦略にどのように寄与するのかを定義します。
  2. データの収集
    次に従業員の健康状態、生活習慣、働き方に関する既存データ、及び従業員からのフィードバックを収集します。
  3. 基準の確立
    収集したデータを業界標準や類似規模の他社と比較して、組織に適した基準を設定します。
  4. 指標の定義
    目標達成を測るための具体的な数値やパラメーターを定義し、期限を設けます。
  5. 定期的な見直し
    調査後は達成度合いを確認し、必要に応じて調整してください。

指標は定期的に見直し、適切な設定を行います。

指標の測定・評価方法

健康経営における指標の測定と評価は、施策の有効性を検証し、持続可能な改善を図るための基板です。指標の測定・評価方法は次のとおりです。

  • データ収集
    健康診断の結果、従業員満足度アンケート、業務日誌、フィードバックツールなど、複数の手段を用いてデータを定期的に収集します。
  • データ解析
    収集したデータは統計的な方法やツールを用いて分析し、収集されたデータをもとにトレンドやパターンを把握します。
  • 結果の報告
    測定結果は企業ダッシュボードや報告書などを通じて、関連部署や経営層、関係するステークホルダーに報告します。
  • 改善策の提案
    目標を達成できなかった場合には、問題の根本原因を分析し、実行可能な改善策を提案することが重要です。

収集したデータの質と正確性は、成果の信頼性を左右します。測定や評価の方法は慎重に定めてください。

測定に活用できる有効なツールや技術

健康経営の効果を定量的に評価するには、適切なツールや技術が不可欠です。

  • 健康管理システム
    全従業員の健康情報を集約し、追跡と分析を容易にするために一元的な健康管理システムを導入します。
    これにより、個々の健康変動を見える化し、長期的なデータ収集と分析が可能です。
  • アンケートツール
    従業員が直面している健康課題や職場環境に対する満足度を把握するために、アンケートツールを使用して、定期的なフィードバックを集めます。
  • データ解析ツール
    先進的なビックデータ解析技術や人工知能(AI)を活用して、収集した膨大なデータから傾向や関連性を導き出します。

上記ツールから得られた知見は、具体的な健康施策の計画や改善策の立案に役立ちます。

参考:健康経営ガイドブック 経済産業省

精密なデータ分析を通じて、従業員の健康状態や生産性への影響を正確に測定してください。

指標を活かして健康経営を進める際のポイント

指標を活用して効果的に健康経営を促進するための重要なポイントを押さえておきましょう。

1.認識と意識の共有を行う

健康経営はトップダウンでの強いコミットメントが必要です。

CEOをはじめとする経営層が積極的に関与し、健康を企業文化の一部として位置づけることが求められます。

2.具体的な目標を設定する

現在の従業員の健康状態や職場環境の調査・分析を行い、客観的なデータに基づいて現状を正確に把握するには、具体的な目標が必要です。

まずは健康経営の中長期的な目標や評価指標を明確に設定してください。

この際、過度に高い目標はモチベーションを低下させる可能性があるため、目標は具体的かつ達成可能なものを設定してください。段階的な目標を設定する形もおすすめです。

3.従業員を交えて実施計画を策定する

健康経営に対する意欲を高めるには、従業員の健康に関する意見やニーズを取り入れ、従業員自身が健康経営の計画に参加する機会を作ることが大切です

従業員を交えて実施計画を策定することにより、現場に合わせた具体的な行動計画や施策を策定できます。

4.定期的に状況をモニタリングする

健康経営の成功を確実にするためには、実施計画の持続的なモデリングと柔軟な改善が必要です。

問題が生じた場合は素早く対応し、実施計画の有効性を評価することで、さらなる改善点を見出します。

成功体験と失敗体験の双方から学びを得ることで、継続的な改善と新しい試みを行う土壌を育ててください。

参考:健康経営優良法人2022 今年度の概要と主な変更点 株式会社日本総合研究所

健康経営の評価指標から見る成功事例

評価指標を活用して目標を達成した企業の事例を3社紹介します。

1.味の素株式会社

出典:味の素株式会社 ~Eat Well, Live Well. ~AJINOMOTO

味の素株式会社は、うま味調味料である「味の素」の製造で知られている食品会社です。

コロナ禍の長期化やテレワークの増加が従業員のストレスレベルの上昇に関与し、メンタルヘルスの維持が経営上の課題として取り上げられました。

味の素株式会社はこれに対処するため、「メンタルヘルス回復及び再就業支援プログラム」を導入し、休業から復職に至る過程での就業継続率を確保することを目指しました。

実際に使用された指標は、次の通りです。

  • メンタル休業後の3年就業継続率
  • J-ECOHスタディ3年就業継続率
  • エンゲージメントサーベイの健康/Well-beingスコア

メンタル休業後の3年就業継続率は悪化が懸念されていましたが、健康経営の取り組みによってコロナ禍においても良好な水準(80.0%)を継続して維持できました。

味の素株式会社の事例では、メンタルヘルス問題に対する効果的な介入が、従業員の健康と企業の生産性の向上に貢献していることが示されています。

参考:2023 健康経営 先進企業事例集 健康長寿産業連合会

参考:「働き方改革」で高まる”働きがい” エンゲージメントサーベイで分かったこと | ストーリー | 味の素グループ (ajinomoto.co.jp)

2.ITOKI 株式会社 イトーキ

出典:ITOKI

株式会社イトーキでは独自調査の「Performance Trail」を通じて、従業員のロコモティブシンドローム(運動器・感覚器障害)のスコアが全国平均と比較して劣っていることが判明しました。

これに対し株式会社イトーキは、従業員の健康状態の改善と職場環境の向上を目指しました。実際に使用された指標は、次のとおりです。

  • ロコモティブシンドロームのスコア
  • ストレスの評価スコア
  • 福利厚生倶楽部の全社利用率

上記の指標に基づき、実施された施策は次のとおりです。

  • 歩数アップ機会を促す執務環境の改善
  • 瞑想・休憩室の設置
  • 勤務体制の柔軟化を図るシフトランチ制度を導入
  • 従業員の余暇の質を高めるための福利厚生制度の刷新
  • 睡眠の質を向上させるセミナーの開催

施策により、ロコモ(運動器・感覚障害)の評価スコアは1年間ほどで57.0点から57.8点に上がっています。

参考:2023 健康経営 先進企業事例集 健康長寿産業連合会

3.株式会社 エムティーアイ

出典:株式会社エムティーアイ 

株式会社エムティーアイでは自社調査により、女性(20代、30代)のプレゼンティーイズムスコアが全体の平均と比較して低いことが判明しました。

また、この年代の女性従業員の約80%が月経痛などの月経随伴症状に悩んでいることも明らかになりました

フェムテック事業を推進する株式会社エムティーアイでは、調査の結果を受け女性の健康課題に対した職場環境づくりの改善を目指しました。実際に使用された指標は、次のとおりです。

  • 女性従業員のプレゼンティーイズムのスコア
  • 月経随伴症状の改善度合い
  • フェムテック関連サービスの利用率
  • ストレスチェック偏差値
  • プログラム参加者数

上記の指標に基づき、以下の施策が実施されました。

  • オンラインでの産婦人科専門医によるセミナーの開催
  • オンライン診療システムの導入と、診療・薬剤費の会社負担
  • ヘルスリテラシーの向上と月経困難症・PMSの改善をサポート

施策実施後、全女性従業員のルナルナオフィス(オンライン診療した婦人科受診と低用量ピル服薬の支援プログラム)の利用率は1年間で1.2%向上しています。プログラム継続利用の意向も高まっており、効果に繋がったといえます。

参考:2023 健康経営 先進企業事例集 健康長寿産業連合会

まとめ:効果的な健康経営には明確な指標が必須

健康経営の効果を最大化させるには、実践的な指標の設定とそれに基づく施策の実行が必須です。

しかし組織に適した健康経営の形は、各企業の特有の経営環境や従業員の健康状態により異なります。

自社にあわせた指標を探り、定期的に調査することで効果的な取り組みに繋げてください。

従業員に合わせた健康施策の一つとしては、「KIWI GO」の活用がおすすめです。

「KIWI GO」には運動をゲーム感覚で続けられる工夫があり、従業員間のコミュニケーションを促進する機能もあります。

「KIWI GO」を取り入れることで、従業員の健康維持と職場の満足度の向上の両立を図れるでしょう。ぜひ健康経営の一環として「KIWI GO」の導入をご検討ください。