ヘルスリテラシーとは、さまざまな健康に関する情報の中から必要な情報を選び実践する能力です。働き方改革や健康経営が大きな注目を集めたことで、従業員のヘルスリテラシーを重視する企業は増えています。

しかし、ヘルスリテラシー向上のため何をすればよいか分からないと悩む企業も多いでしょう。

そこでこの記事では、ヘルスリテラシーを向上させたい企業が行うべき施策を紹介します。ヘルスリテラシーの現状についてのデータを紹介するので、従業員が健康に働ける環境を整えるためぜひ参考にしてください。

 

ヘルスリテラシーとは

日本ヘルスリテラシー学会では、ヘルスリテラシーを次のように定義しています。ヘルスリテラシーとは、一般に健康に関連する情報を探し出し、理解して、意思決定に活用し、適切な健康行動につなげる能力のことをいいます。

参考:日本ヘルスリテラシー学会

ヘルスリテラシーが高まれば、疾患の予防につながります。また自分の状況に適した情報を効率的に取捨選択できるため、より健康な人生を送ることができます。近年では欧米をはじめとしてヘルスリテラシーという単語を含む論文が増えており、ヘルスリテラシーの向上は関心が高まっていくことが予想されます。

 

日本人のヘルスリテラシーが低い理由

ヘルスリテラシーを点数化した調査では、日本はEU諸国に比べて圧倒的に得点が低いことが分かりました。また、アジア諸国と比較しても日本はヘルスリテラシーが低い状況です。

参考:聖路加大学「健康を決める力」

 

日本のヘルスリテラシー低下の原因は、ヘルスプロモーションの少なさです。

ヘルスプロモーションとは、人々が自らの健康とその決定要因をコントロールし、改善することができるようにするプロセスです。

参考:日本ヘルスプロモーション学会

 

ヘルスプロモーションの活動は以下5つの柱で考えられています。

  • 健康的な公共政策づくり
  • 健康を支援する環境づくり
  • 地域活動の強化
  • 個人技術の強化
  • ヘルスサービスの方向転換

参考:文部科学省「21世紀における国民健康づくり運動」におけるヘルスプロモーション

 

具体的には地域に根付いた老人クラブ、全国各地を移動して行われるウォーキングイベントなど、健康や生活に関する活動を指します。ヘルスプロモーションが推進されることで健康を意識するきっかけが生まれ、多くの人が健康によるメリットを享受できるようになります。

しかし、外国諸国と比較すると日本のヘルスプロモーションはなかなか進んでいません。そこで、国や地域といった大きな単位ではなく、企業として従業員のヘルスリテラシーを向上させようという取り組みが広まっています。

 

ヘルスリテラシーが重要視される理由

ここからはヘルスリテラシー向上によって得られる企業と従業員のメリットについて、解説します。

 

従業員の健康維持につながる

ヘルスリテラシーが高まれば健康に関連する知識が増え、自分の健康や生活習慣を見直すきっかけになります。ヘルスリテラシーの高い従業員には、以下の特徴があります。

  • がん検診の受診率が高い
  • 救急受診の利用率が低い
  • 入院のリスクが低い
  • メタボや肥満が少ない
  • 労災が少ない

従業員が高いヘルスリテラシーを身につければ、疾病を予防できます。健康に働く従業員が増えれば、病気による長期休業のリスクも下がり業務がスムーズに進むようになるといえます。

 

従業員の疾病予防や重症化予防につながる

ヘルスリテラシーの高い従業員は疾病に関する情報を適切に取り入れることができるため、病気を適切に予防し健康を維持できます。ヘルスリテラシーの高さは、具体的に次のような行動につながります。

  • がん検診などの受診率が高い
  • 緊急受診の利用率が低い
  • 適切な診療科を選び初期から治療を受けられる
  • 入院リスクが低い

また、実際に疾患に罹ってしまった場合でも、ヘルスリテラシーの高い従業員はしっかりと医師の説明を聞き、適切な頻度で治療を受けます。そのため、ヘルスリテラシーの低い従業員より治療の効果が表れやすいです。

 

診療の際に正しく専門家に相談できる

ヘルスリテラシーの高まりは、適切な診療科の選択につながります。また診療の際は症状や状態を正しく伝えられるので、医師の診断や処方などもより的確なものになります。

さらに医師の説明もしっかりと理解できるため、症状や病気に対して誤った情報に左右されることなく治療を進められます。

 

従業員のQOL向上につながる

ヘルスリテラシーが高ければ健康に対して過度な不安を抱くことが少なくなり、QOL向上が見込めます。QOLとは「Quality of life(生活の質)」のことであり、自分の人生の豊かさや充実を表わします。QOLが向上することでライフワークバランスが整い、仕事へのモチベーションも高まります。

 

企業のイメージが向上する

従業員のヘルスリテラシーを高めると、行政組織の認定により社会的な付加価値も生まれます。有名なものでは、経済産業省が推進する「健康経営優良法人認定制度」があります。

健康経営優良法人認定制度とは、統一された客観的な指標で健康経営を実施している企業を認定し、社会的な評価を与えるものです。認定されるとインセンティブも受けられます。

参考:経済産業省 健康経営優良法人認定制度

健康経営優良法人に選ばれることで、企業の取り組みが可視化されイメージがアップします従業員も自社に対してポジティブな印象を抱くようになり、より前向きに働けます。

 

ヘルスリテラシーが低下すると起こること

ヘルスリテラシーの低下による悪影響には、次のようなものが挙げられます。

  • 初期対応がわからず疾病を悪化させてしまう
  • 適切な服薬や治療ができない
  • 死亡率が高くなる

ヘルスリテラシーが低くなると情報の取捨選択ができず、体調の悪さを放置してしまう可能性があります。また病気に合わない薬を飲んでしまう、無理に動いて症状を悪化させてしまうといったケースも考えられます。

症状の悪化が続けば、命に関わるような大きな病気につながることも少なくありません。休業や退職が連続すると働いている従業員の仕事量が増え、さらに大きな業務負担がかかります。従業員が健康に働けるよう、従業員のヘルスリテラシーを高めることは非常に重要です。

 

ヘルスリテラシー向上のため企業がすべきこと

ヘルスリテラシー向上を目指し従業員個人で取り組むのは難しいため、企業や組織のトップから働きかけることが大切です。経営層がヘルスリテラシー向上に取り組む姿勢を見せれば、従業員にもポジティブな意識が伝わります。まずは経営層の実態を調査しましょう。

またここからは企業として、ヘルスリテラシー向上のためにできることを紹介します。

 

従業員に適した健康情報を発信する

従業員自身で情報の取捨選択ができるようになるまでは、企業が正しい健康知識を提供しましょう。具体例としては高血圧の従業員に対し、1日の塩分摂取目安量を説明し献立とレシピを実際に紹介するなどが挙げられます。

社内で健康新聞を発行する、従業員の目の届きやすいところに掲示物を貼るなどの取り組みは手軽に始めやすいのでおすすめです。

しかし、ひとくくりに従業員といっても年代や性別、業務内容などで必要な情報は異なります。従業員がどのような悩みを抱えているかアンケートなどで調査し、従業員にそれぞれ適切な情報が届くようにしましょう。

 

わかりやすい方法で健康の重要性を周知する

従業員のヘルスリテラシーを高めるには、伝え方も重要です。一度にたくさんの情報を伝えようとすると、何が重要か分からず頭に入りにくいです。

メッセージを3つに絞り、理解してもらいましょう。もしたくさんの情報を伝えたい場合、小出しにして伝えてください。

また、一方的に伝えるだけでは見てもらえない可能性があるため、フィードバックの機会も作りましょう。感想や改善点を募集する、アンケートで従業員の知りたい情報を教えてもらうなど相互にやり取りできる機会を設ければ、従業員も主体的に情報を受け取れます。

 

徐々に取り組みを進めていくやり方に「介入のはしご」という方法があります。レベル8から1まであり、数字が少なくなるにつれて介入強度が上がります。

  • レベル8:何もせずモニタリングのみ
  • レベル7:情報提供・教育・啓発普及
  • レベル6:選択できるように環境を整える
  • レベル5:より健康的な選択肢をあらかじめ用意する
  • レベル4:インセンティブにより選択を誘導する
  • レベル3:逆インセンティブにより選択を誘導する
  • レベル2:選択を制限する
  • レベル1:規制

参考:健康日本21(第 2 次)は「介入のはしご」を上れるか 「社会環境の質の向上」を具体化するための議論を!

いきなり従業員の生活に対し深い介入をすると、迷惑だと思われる可能性があります。まずはレベル7の情報提供や教育、啓発を始めましょう。その後、従業員自らが選択できるようレベルを上げて環境を整えます。

 

より健康的な選択肢として、企業が用意できるものの例は次のとおりです。

  • アプリや設備の導入による運動機会の提供
  • 運動や健康に関するイベントの開催
  • 健康的なお弁当・食事の手配

さらに強い介入が必要な場合、たくさん運動した人やダイエット・禁煙に成功した人にインセンティブを用意するのがおすすめです。

 

セミナーを実施する

印刷物では情報量が少なく一方的になりがちなので、健康セミナーを社内で実施することも検討しましょう。実際に専門家の話を聞き客観的なデータや最新情報を見ることで、自身の健康についてより深く理解できるようになります

社内で適切な人材を用意できない場合、セミナー開催を外部委託するのもおすすめです。外部の医師や専門家に相談し、セミナーを依頼しましょう。どこに依頼すべきか分からない場合、オンラインセミナーを実施している企業に頼むのも一つの方法です。

例としてカゴメ株式会社では、依頼先企業に合わせた内容のセミナーをオンラインで開催しています。年齢や性別だけでなく、子供の有無などライフスタイルでも生活習慣改善のポイントは異なります。さまざまなケースに対応するセミナーを開催し、従業員に必要な情報を届けてください。

 

専門家への相談窓口を設置する

心配な症状があるけれども、病院に行かず放置する従業員は少なくありません。しかし症状を放置すると重大な疾病につながる可能性もあります。そこで病院に行くべきか悩む従業員に向け、社内で専門の相談窓口を設置しましょう。

窓口での相談後、適切な医療機関や専門家へとつなげる仕組みができれば従業員の疾病を予防できます。なるべく身近に相談できる態勢を作りましょう。

 

健康をサポートする環境を作る

生活習慣改善のポイントは「食生活」と「運動」です。従業員の食生活と運動に関しては企業が積極的にアプローチしましょう食生活に関して企業が取り組めることに、健康重視のメニュー考案があります。

健康的なメニューを社員食堂などで提供すれば、勤務中に摂る食事の栄養バランスが整います。食事の提供が難しい場合、食事に関する情報を積極的に発信する、食生活を記録できるアプリを導入する、といった施策も検討しましょう。

運動については軽いものでも習慣化することが大切です。しかし忙しくて運動に取り組めない従業員は少なくありません。誰でもスポーツに取り組めるようイベントを開催する、運動を継続している従業員にインセンティブを与えるなどの工夫をしましょう。

 

まとめ:まずは健康について知るための取り組みを始めよう

従業員のヘルスリテラシーを向上させるには、組織のトップが正しい健康知識を身につけ、健康的な生活を送ることが大切です。

経営層や管理職がモデルとなり、栄養バランスの取れた食事を摂る、運動習慣をつけるなどの具体的な行動に導きましょう。

健康維持において非常に重要な役割を果たす「運動」を実践してもらうには、KIWI GOがおすすめです。

KIWI GOは従業員の運動習慣化をサポートする福利厚生アプリです。

ごほうびを目指しゲーム感覚で運動を楽しむことができるため、運動に苦手意識のある従業員も気軽に取り組めます。

無料トライアルも可能ですので、ぜひお問い合せください。