健康投資とは、従業員の健康のために企業が実践する取り組みです。

健康への関心が高まっているいま、「健康投資に取り組む意味やメリットが知りたい」「メリットがあれば実践したい」と考えている経営陣の方も多いのではないでしょうか。

企業が従業員の健康に投資すれば従業員が生き生きと働けるようになり、業績やイメージも向上します。

当記事では、企業が従業員の健康に投資する具体的なメリットや効果を紹介します。

また実践のポイントや企業の取り組み事例も解説するので、参考にしてください。

 

健康投資とは

まず健康投資の概要と、健康投資の取り組み内容を見える化する方法を解説します。

健康投資の概要

健康投資とは、従業員の健康を維持または増進するために企業が実施する取り組みのことです。

近年の日本は労働人口の減少や少子高齢化の影響により、働き手不足の時代となっています。

従業員一人ひとりに長く働いてもらう必要があるため、健康への取り組みが必要です。

経済産業省のデータによると国民の医療費、企業が負担する社会保険料は年々増加しています。

福利厚生を充実させたり職場環境を見直したりしながら、企業として従業員の健康を守りましょう。

参考:経済産業省 商務情報政策局 ヘルスケア産業課 企業の「健康経営」ガイドブック 

 

健康投資管理会計ガイドラインの意味と役割

健康投資管理会計ガイドラインとは、健康投資を促進するための内部管理手法を示すものです。

取組状況に関する自社の考え方を、社内外に提示する資料でもあります。

健康投資管理会計ガイドラインを使用すると取り組みの内容が数値化できるため、情報分析に役立ちます。

ガイドラインの構成は全10章であり、それぞれの章で細かく記載する内容が決められています。

適切に活用すれば、PDCAサイクルの下で健康投資をより効果的に実行できるようになります。

 

健康投資管理会計ガイドラインを構成する5つの要素

健康投資管理会計ガイドラインの構成要素は、以下の5つです。

構成要素

概要

健康投資

従業員の健康維持や促進のために使用した費用

健康投資効果

健康投資によって得られた効果

健康資源

健康投資のために費やされる資源

企業価値

健康投資により向上した企業の自社評価

社会的価値

健康投資が社外に与える影響

5つの要素を理解することで、健康投資の効果についてわかりやすく分析できます。

参考:経済産業省 健康投資管理会計ガイドライン 概要説明資料(P6)

 

健康投資

健康投資とは、従業員の健康維持や促進のための取り組みに費やした費用です。外部への費用だけでなく、内部における取り組み費用も含まれます。

健康投資に使用した金額は財務諸表において、費用として計上可能です。減価償却費用や人件費も計上できます。

ただし財務諸表に費用計上する際は、費用区分だけでなく効果別の区分も加えましょう。

例えば健康に関するセミナーを受講する場合、「健康教育費」だけでなく「健康教育費:研修費用」と区分する必要があります。

 

健康投資効果

健康投資効果とは、従業員の健康維持や促進のための取り組みによって得られた効果です。効果の項目は以下の3つに分類されます。

  • 取組状況
  • 生活習慣
  • 健康状態や組織の活力の保持(増進)

そして上記の効果や結果を、「健康投資施策の取組状況に関する指標」「従業員等の意識変容・ 行動変容に関する指標」「健康関連の最終的な目標指標」の3つの段階に分類します。

効果を細かく分類することで、どのような健康投資に対しどのような効果・結果が発生しているのか解明できます。

効果を出すため、やるべきことを明確にしてください。

なお、万が一測定結果が目標値に到達していない場合は、状況分析をしながらどのような取り組みをするべきか改めて考える必要があります

 

健康資源

健康資源は健康投資を実施するために費やされる資源です。

「環境健康資源」と「人的健康資源」の2種類に分類され、環境健康資源においてはさらに以下の2つに分けられます。

  • 有形資源:設備や社内ツールなど減価償却で認識できるもの
  • 無形資源:理念や制度、体制、風土など減価償却で認識されにくいもの

 

人的健康資源で重要なのは、従業員です。次の点で人体健康資源を評価しましょう。

  • 従業員等の健康状態
  • 従業員等の健康状態による労働生産性等への影響
  • 従業員等の意識変容・行動変容

健康資源の蓄積・増加に伴い、健康投資効果が向上する状態が理想です。

 

企業価値

企業価値は、健康投資により向上した企業の自社評価です。企業価値は「企業の稼ぐ力」と「様々な市場からの評価」の2種類に分類されます。

「企業の稼ぐ力」は、売上高や利益率といった財務指標・経営指標と労働生産性に関連する指標から評価します。

また「様々な市場からの評価」の指標となるのは、「資本市場」「労働市場」「財・サービス市場」の3つです。

従業員の満足度や社内外からの評価が直接的に現れるため、重要な役割を持ちます。

ただし企業価値に関しては、健康以外の影響も大きいです。結果はあくまで参考として活用してください。

 

社会的価値

社会的価値は、健康投資が社外に与える肯定的な影響です。社会の抱える課題解決に影響を与えられているかどうかが判断基準となります。

また、社会的価値は波及効果の性質に応じて、2種類に大別されます。分類の詳細は以下の通りです。

  • 健康資源の活用によって効果を与えるもの
  • 企業等の健康投資が目的外の影響として直接効果を与えるもの

例えば「目的外の影響として直接効果を与えるもの」では健康維持を目的とした地域の清掃活動が含まれます。

清掃活動により地域住民がより快適に過ごせるようになれば、社会的価値の向上に繋がります。

 

また「健康資源の活用によって効果を与えるもの」には、企業の保有する運動施設を開放し地域住民が使用できるシステムにするといった取り組みが該当します。

地域住民の健康が促進されたり寿命が延びたりすれば、効果が出ているといえます。

 

健康投資のメリットと効果

康投資によって得られるメリットについて詳しく解説します。

 

従業員が安心して健康に働ける

東京大学等が実施した調査において健康投資のスコアが高い企業では、年間医療費やメタボリックシンドローム該当率などが低スコアの企業より低いことが明らかになりました。

 

スコアが高い企業

スコアが低い企業

年間医療費平均

147,422円

170,060円

従業員が健康的に働けるようになることで、病気や怪我などの理由による離職や休職も減少します。

急な休みや退職に対応する負担も軽減され、従業員の働きやすさにつながります。

参考:内閣府経済・財政一体改革推進委員会 健康投資による効果検証について(P8)

 

優秀な人材に興味を持ってもらえる

人材確保をしやすくなるのも、健康投資のメリットです。

健康投資で従業員が生き生きと働けるようになれば企業イメージが向上し、求職者から「働きやすそう」「長く勤められそう」といった評価を得られます。

優秀な人材が自然と集まるようになれば、人材を集めるためのコストも削減できます。

 

従業員が長く会社にいたいと感じるようになる

健康投資により従業員の働きやすい環境が構築されれば、従業員が納得して働くようになります。

転職するメリットが減るため、同じ会社に長く勤めたいと思うようになるでしょう。

また「良い企業で働いている」と感じることで帰属意識が高まり、会社への貢献意識が高まります

新しい人材の教育に費やす費用や手間、時間も削減できる可能性があります。

 

健康投資に関連する効果的な施策

効率的な健康投資を目指す際に、押さえておきたいポイントについて解説します。

 

自社の現状を正しく分析する

まずはストレスチェックや健康診断の結果を確認し、自社の従業員の状況や職場環境を分析することが大切です。

自社の現状や問題点を把握することで、対処するべきポイントを見出せるようになります。

自社がどれくらい健康を意識した経営ができているかは、「健康経営チェックリスト」で確認可能です。

出典:経済産業省ヘルスケア産業課 企業の「健康投資」ガイドブック(P14)

出典:経済産業省ヘルスケア産業課 企業の「健康投資」ガイドブック(P14)

 

なお、ストレスチェックは2015年より、労働者を常時50人以上雇用している企業に義務付けられています。報告を怠った場合、ペナルティが課される可能性もあるため注意してください。

 

福利厚生を充実させる

休みたくても休めない環境に置かれていると、従業員が無理をして身体を壊す可能性があります。

「休暇制度を充実させる」「家族で楽しめるレジャーにクーポンを出す」など、福利厚生を充実させてリフレッシュを促すことが大切です。

福利厚生が充実していると従業員の満足度が上がり、人材流出のリスクも削減できます。

 

従業員が交流する機会を増やす

在宅勤務の増加や新型コロナウイルスの影響により、従業員同士の交流が減っています。

従業員同士の関わりが減ると、気軽なコミュニケーションが取りにくくなります。

体調が悪いのに言い出せず無理をしたり、チームメイトと意思疎通ができず人間関係に悩んだりするケースは十分あるでしょう。

イベントや交流会を開催するなどして、企業側が積極的に従業員の交流機会を作ることが大切です。

従業員の交流が増えることで、精神的なストレスを感じにくくなります。

 

健康投資を実践する企業の事例3選

実際に企業が実施している、健康投資の導入事例を紹介します。

 

ナガオ株式会社

出典:ナガオ株式会社

ナガオ株式会社は、岡山県で化学工業薬品製造販売を営む企業です。

従業員と会社の持続的な相互成長を目指しており、「ワークライフバランス」の考え方はすでに長年の社風として定着しています。

健康投資における具体的な施策内容は以下の通りです。

  • 健康診断の結果を基に、個別のアドバイスを実施
  • 将来の健康状態を予想できるセルフチェックシステムの導入
  • 2015年からランニング同好会の大会参加費、ユニフォーム作成費用を全額負担
  • 2年に1回家族ソフトボール大会を実施

上記の取り組みの結果、離職率は10年間で0.5%と低水準となっています。

また採用面接にて、ワークライフバランスや働き方の充実を志望の理由として挙げる方も増えました。

参考:経済産業省 健康経営優良法人令和2年3月

(資料ページ数8(パワーポイントページ数9)、取り組みポイント1・取り組みポイント2・健康経営による効果の全文)

 

ネッツトヨタ山陽株式会社

出典:ネッツトヨタ山陽株式会社

ネッツトヨタ山陽株式会社は、新車や中古車の販売、自動車の車検・点検整備など自動車関係の事業を営む企業です。

「風通しのよい働きやすい職場づくり」「自ら成長できる人財づくり」をモットーに、トップダウン型の健康経営を実施しています。

取り組み内容の具体例は以下の通りです。

  • 従業員に電子万歩計を配布し歩数を集計
  • 集計した歩数を個人別・部署別にニュース形式で発表
  • 定期的にウォーキングコンテストを実施
  • カロリー別におかずを選択できる弁当の提供を開始

ネッツトヨタ山陽株式会社は「おかやま健康づくりアワード」で入賞を受賞し、社内外で健康への取り組みが評価されています。

また健康を意識した取り組みに関心を持ち、求人に応募する方が増加しています。

参考:経済産業省 健康経営優良法人令和2年3月(P9)

 

沖縄セルラー電話株式会社

出典:沖縄セルラー電話株式会社

沖縄セルラー電話株式会社は、電気通信業を営む企業です。従業員の健康を守ることが会社の活力に繋がるという考えのもと、健康経営を推進しています。

取り組み内容の例は以下の通りです。

  • 自社のアプリ「JOTOホームドクター」による従業員の健康管理
  • タニタ製体組成計と血圧計設置を活用したウェルビーチャレンジを実施
  • オンラインウォーキングイベントを開催

ウェルビーチャレンジは期間中の平均歩数と個人の健康チャレンジ成功によりポイントを加算して、高得点を目指す健康イベントです。

チームで平均歩数を計測することで、終業後にウォーキングをする、階段を活用するといった健康的な行動を起こす従業員が増えました

また全従業員平均歩数は、イベント後に1,000歩増加しています。

参考:内閣府沖縄総合事務局 健康経営R事例集(P5)

 

まとめ:健康投資で従業員の働きやすい環境を整えよう

働きやすい環境を作るなどして従業員の健康に投資すれば、従業員が生き生きと仕事に取り組めるようになります。

また企業の生産性が向上する、人材確保がしやすくなるといった副次的な効果も期待できます。

従業員が健康的に働ける環境を作るためには、運動を促進するとともに従業員の交流機会を増やすことも大切です。

健康投資を実施する際には、「KIWI GO」アプリをご利用ください。「KIWI GO」は従業員のための福利厚生アプリです。

ごほうびを目標にしてウォーキングできる機能があり、楽しみながら運動を習慣化できます。

またチャット機能やイベント開催機能により、従業員間のコミュニケーションをサポートできます。

健康投資を進めたいと考えている企業や取り組みやすい施策を検討中の企業は、ぜひご利用ください。