中小企業において、女性のウェルビーイングを改善することが非常に重要であることはご存じでしょうか。女性が組織内で働く際には、出産・育児といったライフイベントへの対応やキャリア格差の改善など、さまざまな課題があります。女性の課題を解消すれば、仕事に対する意欲や生産性の向上、離職率の低下などが期待できます。
また女性従業員の活躍により職場に活気が生まれ、男性従業員のモチベーションアップにもつながります。本記事では、中小企業における女性のウェルビーイングの重要性と具体策を解説します。
女性の力をさらに会社経営に活かしたい方は、ぜひ参考にしてください。
目次
ウェルビーイングとは
ウェルビーイングとは、肉体的・精神的・社会的に満たされた状態です。
1964年にWHOが発表した「well-being(良い状態≒健康)」という言葉により、世界的にウェルビーイングへの関心が広まるきっかけになりました。
日本の厚生労働省では、ウェルビーイングを「個人の権利や自己実現が保障され、身体的・精神的・社会的に良好な状態にあることを意味する概念」と紹介しています。
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女性にとってのウェルビーイングとは健康で幸せに暮らし、仕事でもプライベートでも自己実現できる状態を指します。
しかし女性が働く場においては様々な問題があるため、女性のウェルビーイング改善は企業にとって重要な課題です。
女性のウェルビーイングに関する5つの課題
経済産業省の「男女共同参画白書」によると、育児や介護、家庭生活において様々な事情を抱える人の就業状況は男女で大きく異なります。
育児中の方の有業率は男性98.5%に対して、女性は52.3%にとどまっています。
上記調査より、男性と比べ、女性は仕事と家庭生活の二者択一を迫られるケースが多いといえます。
働きたい女性が意欲と能力を十分に発揮できる環境を整えることは、現代における重要な課題です。
また女性は出産や更年期など、女性ならではの身体的・生理的な変化によってもストレスや疲労を感じやすいとされます。
女性ならではの健康課題に取組むことは、健康経営の促進にもつながるといえます。
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ここからはより詳細に、女性のウェルビーイング改善において考慮すべき課題を紹介します。
1.セクシャルハラスメントやパワーハラスメント
厚生労働省が発表した「職場のハラスメントに関する実態調査」では、パワーハラスメント・セクシャルハラスメントについての実態が判明しました。
上記調査によると、各ハラスメントを一度以上経験した人の割合はパワーハラスメントが31.4%、セクシャルハラスメントが10.2%です。
また回答者の中で、就職活動中またはインターンシップ参加中にセクシャルハラスメントを経験した人の割合は25.5%でした。
出典:厚生労働省 職場のハラスメントに関する実態調査 主要点
ハラスメント原因の一つとして、職場でのパワーバランスの偏りが挙げられます。
男女共同参画社会の考え方が浸透している現在でも、女性は男性に比べ弱い立場に置かれやすいです。
また性別問わず職務上の立場によりパワーバランスの偏りが発生し、ハラスメントにつながるケースもあります。
ハラスメントが多い職場の特徴には、次のものがあります。
- 上司と部下のコミュニケーションが少ない、またはない
- ハラスメント防止規程が制定されていない
- 失敗が許されない、または失敗の許容度が低い
- 残業が多い、または休暇が取りにくい
参考:厚生労働省 職場のハラスメントに関する実態調査 主要点
労働環境が悪く、コミュニケーションの少ない職場ではハラスメントが起きやすいとわかります。
2.ワークライフバランスの悪化
女性の就業率(15歳〜64歳)は上昇していますが、就業を希望しながらも働いていない女性(就業希望者)は約161万人にのぼります。
出典:厚生労働省 女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画を策定しましょう!
第1子出産を機に約5割の女性が離職するなど、出産・育児を理由に離職する女性は依然として多いのが現状です。
また介護・看護を理由として過去1年以内に離職した人は、平成27年の時点で9万人となりました。
そのなかの7万人が女性であり、約8割を占めています。
働く意欲がありながら働けない人の存在は、少子高齢化が進む日本にとって大きな損失です。
3.妊娠・出産に伴う偏見や差別
職場において、上司や同僚から妊娠・出産に関して嫌がらせを受けることも少なくありません。
マタニティハラスメントと呼ばれる行為があると女性従業員は心身に大きなストレスを抱えてしまい、ときには職場から離れます。
ハラスメントによって人材が流出することは、企業にとっても大きな損失です。
企業は妊娠・出産に伴う差別やハラスメントをなくすため、具体的な取り組みを行わなければいけません。
4.女性特有の体調不良についての理解
日本の従業員数のうち、約44%(2016年)を女性が占めています。
従業員全体の幸福感を高めるには、約半分を占める女性の健康についての理解が重要です。
経済産業省の調べによると、女性特有の月経に伴う症状による労働損失は4,911億円と試算されています。
参考:経済産業省ヘルスケア産業課 健康経営における女性の健康の取り組みについて
しかし「女性特有の症状について男性はわからないため的確なアドバイスができない」という意見もあり、なかなか理解が進まない状況です。
女性特有の体調不良には個人差も大きいため、女性同士であっても完全に理解し合うのは困難です。
しかし女性の体調不良に備え必要な制度を用意し、使用しても昇進に影響しない環境を作ることで女性従業員の負担は軽減されます。
また最初から理解できないと諦めるのではなく、女性の健康問題について理解するきっかけを作ることが重要です。
5.キャリアアップのハードル
2021年度の雇用均等基本調査によると、日本において女性が管理職に就く割合は係長相当職で20.7%、課長相当職で12.4%、部長相当職で7.7%です。
近年は女性の割合が上昇傾向にありますが、上位の役職になるほど女性の割合が低くなっています。
参考:労働政策研究・研修機構(JILPT) 課長相当以上の女性管理職がいる企業割合は約53%で、管理職に占める女性割合は約12%
日本の女性の役員割合は諸外国に比べて低く、フランスの45.3%、イタリアの38.8%、スウェーデンの37.9%に対し、日本は12.6%です。
出典:内閣府男女共同参画局 女性活躍・男女共同参画の現状と課題
上記のデータから、日本の企業では女性が管理職やリーダーになるためのハードルが高いことが課題であることわかります。
やる気があっても昇進が難しい状況では、女性がやりがいを持ちながら働き続けることは難しいといえます。
女性のウェルビーイングの向上がもたらす5つのメリット
ここからは、女性のウェルビーイングの向上がもたらすメリットを詳しく紹介します。
職場環境が改善される
ハラスメントに対する組織内のポリシーやルールを明確にすることで従業員の安心感が高まり、職場環境が改善されます。
企業の信頼性が向上すればイメージが向上し、優秀な人材の確保につながります。
ワークライフバランスが整う
労働人口が減少しているいま、女性が妊娠・出産、育児などのライフイベントを通じて働き続けることは重要です。
女性が働きやすい環境があれば従業員の定着率が高まり、離職率の減少につながります。
ストレスが減り生産性が向上する
企業が妊娠・出産・女性特有の体調不良に関する教育や支援を提供すると、女性が自身の体についてより深く理解できるようになります。
自身の健康課題を把握すれば適切なケアができるようになり、ストレスが軽減することから生産性向上に役立ちます。
また従業員全体が女性の健康問題について理解することで、相互理解が進み職場に活気が生まれます。
健康管理の促進により病欠が減少する
女性の従業員の健康に配慮し、女性特有の体調について理解を深めることで、病欠率が低下します。
病欠や求職が減ると新しい人材を雇うコストが少なくなるため、企業側としてのメリットは大きいといえます。
多様な人材が確保できる
キャリアアップの支援を十分に整えると妊娠・出産による悩みが軽減され、女性が勤務を継続するようになります。
その結果、多様な人材が確保できるようになり、企業のグローバル競争力アップにも期待が持てます。
女性のウェルビーイング向上のための具体策
女性が抱える身体的な悩みや、職場環境を整えると、ウェルビーイング向上につながります。
ここからは、より具体的に女性のウェルビーイングの向上につながる取り組みを紹介します。
1.組織内のポリシーやルールを明確にする
ハラスメントに対し、組織内のポリシーやルールを明確にすることで従業員が安心して働けます。
具体的には、社内ルールの策定やその徹底的な実施が必要です。
また問題が発生した場合には、迅速かつ適切に調査をして厳正な処分を行ってください。
対策を徹底することで、セクシャルハラスメントやパワーハラスメントを許容しない姿勢を示せます。
また従業員に対して、セクシャルハラスメントやパワーハラスメントに関する教育やトレーニングを行うことも重要です。
適切な教育によって、従業員に対する上司の役割や責任を再確認してもらえます。
ルールの徹底を続ければ、ハラスメントの予防や対策は企業文化として根付きます。
女性やマイノリティの方が働きやすい環境を作るため、社内一丸となって意識を変えてください。
参考:厚生労働省 職場におけるパワーハラスメント対策・セクシュアルハラスメント対策・妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント対策は事業主の義務です!
2.ワークライフバランスを向上させる
ワークライフバランスの向上は、どの従業員にとっても重要です。
フレックスタイムやテレワーク、時短勤務などの柔軟な働き方を取り入れ、休暇の取得を推奨してください。
またワークライフバランスの重要性を啓発することも必要です。
上層部から積極的に取り組み、制度を整備してください。
3.妊娠・出産に必要な支援を行う
女性が妊娠・出産を迎える際には、仕事におけるサポートが必須です。
同じ職場で働く従業員には妊娠・出産に関する情報提供を行い、理解を進めてください。
また女性が安心して妊娠・出産に専念できるよう、育児休暇の所得を推奨することも重要です。
そして妊娠・出産に関する休暇を取得したのち円滑に職場復帰できるよう、復職の意向や希望を確認してください。
必要な場合は職場環境を調整し、スキルアップ支援を行うことで女性が長く働ける環境を作ることができます。
4.女性特有の体調不良についての理解を促す
日本医療政策機構によると、女性の健康リテラシー(自分の身体について考え、適切な情報を見極めて使いこなすこと)が高いほど、仕事のパフォーマンスは高まります。
生理不調や月経痛などによる影響を知ってもらい、適切なサポートを行ってください。
例えば、生理休暇や不調の際に利用できる制度について従業員に周知すると効果的です。
また男性の従業員も含め、女性特有の健康課題を学べる研修を開催することも検討してください。
会議や打ち合わせ時に適宜休息を入れる、不調を感じるときに休息できるスペースを設置することも働きやすい環境には必須です。
健康面の問題については専門家によるアドバイスも重要であるため、産業医や婦人科医、カウンセラーなどに相談できる窓口を設置してください。
5.女性のキャリアアップをサポートする
「男女共同参画白書 令和元年版」によると、全ての項目において職場における教育訓練の適用状況は女性は男性よりも低い水準です。
女性の活躍推進を考えると、女性の学びの機会を増やすことは重要です。
働き方に制約がある場合も研修が受けられるよう、e-ラーニングなど自宅から受けられる研修も積極的に取り入れてください。
また若いうちから女性に責任のある仕事を任せることで、昇進への意欲が高まります。
結婚、出産の前段階でキャリア志向が築かれれば、意欲を持ってスキルアップを目指す女性がさらに増えます。
まとめ:健康経営の促進のために女性のウェルビーイング向上は必須
中小企業にとって、女性のウェルビーイングを改善することは非常に重要です。
柔軟な働き方やキャリア支援、健康増進プログラムなどの取り組みを進めると、女性従業員が健康に過ごせるだけでなく、生産性や企業イメージの向上にもつながります。
しかしウェルビーイング向上において運動は重要であるものの、女性の運動実施率は男性に比べて低く、特に20代〜40代の女性のスポーツ実施率は特に低い状況があります。
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