健康経営を進めるにあたり、戦略マップの作成は必要不可欠です。2022年度の健康経営度調査結果では、約9割以上の企業が戦略マップを作成し、健康経営の取り組みを明文化しています。
そのため、健康経営優良法人認定を目指そうと考える企業や本格的に健康経営に取り組もうとしている企業にとって、戦略マップの作成は、もはや必須と言えるでしょう。しかし、いざ戦略マップを作成しようとしても、何から取りかかればいいのかお悩みの方も多いのではないでしょうか。
この記事では、戦略マップの必要性や作り方について、詳しく解説しています。戦略マップを作成して、健康経営を促進させましょう。
目次
経済産業省が推進する戦略マップとは
戦略マップとは、取り組むべき課題や目標、関係性のあるものを線で結びつけた図のことです。以下の画像が戦略マップの例になります。
ご覧の通り戦略マップを用いると、各個別の目標間の因果関係が可視化され、目標に対する取り組みをわかりやすく表すことができます。戦略マップは、関係者に説明するツールとして使用されたり、戦略の構築や検討する際にも使用されています。
そんな戦略マップは、経済産業省も導入を呼びかけています。経済産業省は、健康経営を推進するため、2020年6月に策定した健康投資管理会計ガイドラインを作成しました。ガイドラインのなかでは、健康経営を運用していくために、以下4つのシート作成を呼びかけています。
- 戦略マップの作成
- 健康投資シートの作成
- 健康投資効果シート
- 健康資源シート
この4つの管理シートを作成し、利用することで、以下の観点からメリットを得られると示されています。
- 内部機能:健康経営をより継続的かつ効率的・効果的に実施することができる。
- 外部機能:健康経営の取組状況について、外部と適切に対話することができる。
なかでも「戦略マップ」は、健康経営でまず取り組みたい施策のひとつです。健康投資会計ガイドラインのなかでも、戦略マップの作成を推進しています。
健康経営における戦略マップが必要な理由
健康経営における戦略マップの作成に取り掛かる前に、戦略マップの必要性について、改めて理解しておきましょう。
ここからは、健康経営における戦略マップの必要性を3つ紹介していくため、ぜひ参考にしてください。
理由①:健康経営の取り組みが関係者に理解されやすくなる
健康経営を成功させるためには健康への投資が不可欠になるため、健康経営を経営陣の承認のもと、会社全体で取り組むことが大切です。
例えば、健康経営を施策していくうえで、以下のような経営投資が考えられます。
- 運動不足を解消させるために、社内ジム施設を導入する
- 食生活を改善するために、社員食堂を導入する
- 管理システムを導入する
このような経営投資には費用が必要になるため、経営陣とも一願となって取り組む必要があります。経営陣含め、社内全体が一願となって取り組むためには、皆が戦略に対する目標や戦略を理解する必要があります。そこで必要になるのが、「戦略マップ」です。
戦略マップがあれば、経営課題や健康課題、目標をすべて見える化できます。
言葉だけで戦略の全体構造を全員に理解させるのは困難です。戦略マップという図を使用することで、皆の理解度が深まり、社内全体で健康経営に取り組む環境を目指すことができるでしょう。
また、健康経営を進めていくと、経営者や従業員、外部のステークホルダーに対して、健康経営に対して説明する機会も多くなります。その際には、戦略マップを活用することで、自社の健康経営への取り組みをわかりやすく紹介することが可能です。
理由②:健康経営を効果的・効率的に行える
戦略マップを活用すれば、健康経営における経営課題や経営目標の管理や分析が見える化できるため、健康経営を効果的・効率的に執り行なうことができるでしょう。
また、PDCAサイクルを回す際にも戦略マップは活用されています。戦略マップは、主に以下3つのカテゴリーに分けられ、作成されています。
- 健康経営で解決したい経営課題
- 健康投資効果
- 健康投資
解決したい健康課題はP、健康投資効果はCとA、健康投資はDと言えます。
戦略マップがあれば、PDCAサイクルを回す際に活用することが可能です。戦略マップを作り、健康経営を効果的・効果的に行っていきましょう。
理由③:健康経営度調査でも、戦略マップがあればプラス要素になる
健康経営に取り組む企業のなかには、健康経営優良企業などの認定を目指す企業も多いことでしょう。
健康経営優良法人に認定されるためには、健康投資管理会計ガイドラインを理解し、運営していることが大切です。ガイドラインのなかでは、戦略マップの作成や活用を呼びかけています。
2020年の健康経営調査では、戦略マップの有無や作成内容に関しての設問事項が盛り込まれました。今後も戦略マップに対する設問事項が、盛り込まれていく展開になるでしょう。したがって戦略マップがあれば、健康経営度調査でも優位に働きます。健康経営度調査を受けるのであれば、戦略マップの作成を検討しましょう。
出典 2020年度健康経営調査
健康経営における戦略マップの作成手順
戦略マップの必要性や目的が理解されたところで、ここからは、戦略マップの作成手順について、順に解説していきます。
まず、戦略マップの作成は、経済産業省が紹介する『健康経営ガイドライン』に則って作成することができます。戦略マップの構成は、おおまかに『計画』『効果』『課題』の3つの構成に分けられます。
戦略マップを作成するポイントは、課題→効果→計画の順に逆算して作成していくことです。この順で作成すると課題を軸に取り組み内容を決めていくため、取り組み内容にブレがなくなり、作成もスムーズになるでしょう。
ここからは、経済産業省が紹介している戦略マップを参考に、作り方を紹介していきます。ぜひ参考にしてみてください。
ステップ①:「健康経営で解決したい経営課題」を考える
第一ステップでは、「健康経営で解決したい経営課題」の部分を考えていきます。
この部分は、その後の戦略マップの内容に影響する重要な部分になる箇所です。ポイントは、根本的に解決したい経営課題に注力して考えることです。多くの社内・外部関係者が見ることになる戦略マップは、イメージの良い言葉選びに執着しがちです。
たとえば、「健康経営によって従業員一人一人の生活を豊かにする」という経営課題を掲げたとしましょう。一見よく思える経営課題ですが、本来の趣旨である経営課題について何も記載されていません。
社員の生活を豊かにするための経営課題に注力し、「社員満足度の向上」や「労働生産性の向上」など根本的な経営課題を書き出しましょう。
ステップ②:「健康投資効果」を考える
健康投資効果の部分は、以下3つの指標分類に分かれます。
- 健康関連の最終的な目標
- 従業員等の意識変容・行動変容に関する指標
- 健康投資施策の取組状況に関する指標
健康投資効果は、この3つの観点から、いずれも上から順に逆算してそれぞれの項目を考えていきます。それでは、それぞれの項目について順に説明していきます。
健康投資効果①:「健康関連の最終的な目標指標」を考える
まずは経営課題で書き出した内容の解決策を、健康関連に関わる観点から考えていきます。
欠勤率の低下が経営課題であれば、以下のような原因が考えられます。
- 社員の仕事に対するモチベーションが低い
- 体調不良による欠勤が多い
- ストレス疾患による欠勤が多い
自社なりの原因を、いくつか考えてみましょう。そして次に、原因に対して取り組みを考えます。
社員の仕事に対するモチベーションが低いのであれば、「ワーク・エンゲイジメントの向上」とし、指標化して取り組んでいきます。体調不良の欠勤が多いのであれば、「運動促進活動を通じて健康維持」とテーマに決め、体調不良による欠勤率低下を目指してみるのも良いでしょう。
原因や対策は、それぞれの会社状況によって違います。「働く環境に関して社内アンケートを取り、比較的簡単に修正できる衛生要因を探してみる」など自社の課題を見つけることからはじめて見ても良いでしょう。
健康投資効果②:「従業員等の意識変容・行動変容に関する指標」を考える
健康関連の最終的な目標指標が決まったら、逆算して従業員等の意識変容・行動変容に関する指標を考えていきます。先ほどのステップでは、欠勤率を低下させるために、ワーク・エンゲイジメントの向上が必要だと推測しました。
そこでここからは例として、ワーク・エンゲイジメントをあげるために、従業員がどのように変化すればよいか考えてみましょう。
社内であれば、社内コミュニケーションの向上や個人の仕事軽減。従業員のプライベートな生活時であれば、睡眠時間の増加や健全な食生活などが対策になります。社内だけではなく、従業員のプライベートの健康管理にも目を向けることも大切です。
健康投資効果③:「健康投資施策の取組状況に関する指標」を考える
従業員等の意識変容・行動変容に関する指標を決めたら、逆算して健康投資施策の取組状況に関する指標を考えていきます。ここでは、取り組み内容に対し、参加率や実施率、利用率など指標を書いていきます。
ポイントは、従業員にどのように取り組んでもらうかを考えることです。
例えば「睡眠時間の増加」を設定した場合、睡眠セミナー参加数の増加や残業時間の削減を指標としましょう。ここで明記した指標数値が、今後の健康経営の改善や効果につながる部分になります。数値や指標を詳しく設定し、今後の戦略マップとしての機能を高めましょう。
ステップ③:「健康投資」を考える
健康投資施策の取組状況に関する指標が完成したら、逆算して健康投資を考えていきます。健康投資は、実際に取り組む内容の部分になります。どのような施策を行うのが効果的か考え、最適な施策を考えましょう。
たとえば、健康投資施策の取組状況に関する指標で「残業時間の削減」を行う場合には、設備機器の導入やシステムの運用などがあるでしょう。
「睡眠セミナー参加数の増加」を指標とした場合で、睡眠セミナーの開催などが考えられます。
しかし、設備の導入やシステムの運用、セミナーの開催には、費用がかかります。健康投資を考える場合には、費用対効果も同時に考えることが大切です。
特に費用がかかる設備導入においては、導入前と導入後の費用対効果をあらかじめ試算し、経営状態も良好な状態で健康経営に取り組める健康投資を考えましょう。
戦略マップを作成する際のポイント
戦略マップは、社内だけでなく、会社外の関係者も健康経営の取り組み内容を見える化するツールとして使用されます。そのため、見ただけで健康経営の取り組み内容が理解できる戦略マップの作成が大切です。理解されやすい戦略マップを作成するためのポイントを紹介していきます。
関連性の高いものを線で繋げる
戦略マップを作成していくと、関連のあるもの同士を線と線で繋げる作業があります。線を繋げていると、各指標の関連性がわかりやすくなります。しかし、関連性のあるもの同士を線で繋げていくと、すべての指標に関連性があるため線が多くなってしまいます。線が多くなれば、関連性がわかりにくくなります。
視覚的分かりやすさを重視し、最も関連性の高いもの2つ〜3つに絞るなど
して線の数を減らしましょう。また、すべてに関係してしまう場合には、「様々な効果に関連する健康投資」という指標欄を作成することで、線を減らすことができます。
戦略マップのフォーマットを使用して、実際に作成してみよう!
それでは実際に、戦略マップのフォーマットを利用し作成してみましょう。
戦略マップをエクセルなどで最初から作成しても構いません。戦略マップの構成は、経済産業省の健康投資ガイドラインで決められています。サイト上で紹介されている企業の戦略マップをみると、構成は基本的に同じだと分かるでしょう。
経済産業省では、健康経営における戦略マップでのフォーマット提供や健康投資管理関係ガイドラインを提供しています。
上のフォームからフォーマットやガイドラインを参考に作成してみましょう。
戦略マップが出来たら、健康経営度調査に回答してみよう!
健康経営度調査は、経済産業省が実施している調査です。「健康経営銘柄」や「健康経営優良法人」などの認定を受けるには、健康経営度調査に回答しなければなりません。
健康経営度調査は、未記入の部分があっても提出することができます。認定を目指す企業は、健康経営度調査に回答してみましょう。
実際に健康経営調査に参加してみると、自社に足りない部分が発見できるため、積極的に参加してみましょう。
まとめ:戦略マップが健康経営の第一ステップ!
いざ健康経営を始めようとすると、社内・社外関係者に対して健康経営を行うことを告知することから始まります。具体的な指針を提示できなければ、社員の方や経営者の方も理解されなければ、健康経営が進みません。
健康経営に対する具体的な取り組み内容を、わかりやすく見える化し、理解を促すツールとして戦略マップが必要です。戦略マップがあれば、健康経営に対する告知や、社内外の関係者にも、わかりやすく伝わるでしょう。
もし戦略マップで運動課題が出てきたら、健康増進アプリKIWI GOの導入がおすすめです。KIWI GOは、社内コミュニケーションと社員の運動を促進する福利厚生サービスです。健康経営の中でも、運動やコミュニケーションの部分でお悩みがあれば、ぜひKIWI GOをご検討ください。