健康経営に取り組むうえで、費用対効果を考えることは、企業利益を出すために大切なことです。
なぜなら健康経営にかかる費用は、企業の業績向上のための投資になるからです。健康経営にコストをかければ、残業時間の削減など様々な効果が期待できます。
しかし、投資に対して効果がなければ、費用が利益の負担になり、健康経営へのモチベーションが下がってしまうでしょう。
そのため、健康経営を成功させるためには、費用対効果を考えることが大切になります。
本記事では、「そもそも健康経営は、費用対効果が期待できるのか」の疑問にお答えし、費用対効果の必要性や効果について解説しいます。
費用対効果を考えるための参考にしてみてください。
目次
費用対効果とは
健康経営における費用対効果を考える前に、まず費用対効果について確認しておきましょう。
費用対効果とは、「支出した費用によって得られる効果」を意味します。
ある施策に費やしたコスト(費用)に対して、効果が期待できなければ、費用をかけるのは難しいでしょう。
一方、費用に対し利益が高ければ、「効果があった」といえます。費用対効果は、経営を進めるうえで必要な指標です。
費用対効果を考える理由とは
費用対効果は、企業が業績を上げるために考えなければならない指標です。
ここでは、「なぜ企業が費用対効果を考えなければいけないのか」の理由について、それぞれ解説していきます。
以下の項目を参考に、費用対効果を意識した経営に取り組みましょう。
経営方針を決めるため
経営を成功させるためには、費用対効果を考えることが大切です。そして更に、経営を成功させるためには、効率かつ効果的な経営方針を進める必要があります。
例えば、施策として、設備機材の導入やシステム改善などの費用がかかる場合があります。
経営者は、数ある施策のなかで、「一番効果が見込める施策に費用を投じたい」と考えます。検討するために必要な材料が『費用対効果』です。
費用対効果を試算し、数字を比べることで、会社にとって最良の経営を進めることができます。
投資する費用で失敗しないため
費用をかければかけるほど、業績が上がるわけではありません。業績が上がらず費用だけ支払うことになっては、会社の負担が増えるだけに終わってしまいます。
そうならないために、投資する費用では、『費用対効果を考えること』が大切です。
例えば「費用をかけたけど、利益に繋がらない」または「利益よりかかる費用の方が大きい」といった状況では、投資の見送りも必要になるかもしれません。
効果検証のため
費用をかけた施策を行っても、費用対効果を把握していなければ、「どれだけの効果があったのか」が曖昧になってしまいます。
投資を行なった結果、効果が見えないまま費用だけが負担になっている企業は少なくありません。そうならないために、『費用対効果を試算すること』が大切です。
例えば、宣伝広告費として100万円の宣伝費用を投じた場合には、各店舗の売上が10万円上昇すると予想される場合、投資の効果があるといえるでしょう。
しかし、規模を広げて200万円の宣伝広告費でやったが効果に変化はない、と試算できる場合、増やした投資の効果は薄いと推測できます。
このように効果検証をすると、200万円をかけた広告宣伝はやらないでしょう。効果検証し、改善やコストの見直しをする際にも、費用対効果を考えることが大切になります。
健康経営で期待される費用対効果とは
ここからは、健康経営における費用対効果について解説していきます。健康経営で期待される効果は、『内的効果』と『外的効果』の2つに分けられます。
それぞれの内容について、以下から詳しく解説するので、ぜひ参考にしてください。
内的効果①:医療費の削減
従業員が健康であれば、それだけ医療機関に足を運ぶ従業員が減ります。
従業員の医療費の一部は、企業が負担しているため、従業員の通院回数が減少すれば、企業の医療費の削減が期待できます。
今後少子高齢化の影響で、医療費がますます増加することが懸念されています。そのため健康経営による医療費の削減は、費用対効果に大きな期待が予想されています。
会社の医療費負担を削減したければ、従業員が健康になるための施策を取り入れ、医療費の削減に向けた施策に取り組んでみましょう。
内的効果②:モチベーションの向上
モチベーションが上がると、従業員は仕事に対して前向きになり、情熱を持って仕事に取り組みます。
結果、従業員のパフォーマンスが高くなり、生産性の向上やサービス、品質の向上などの費用対効果が期待できます。
しかし、モチベーションは従業員の心の中にあるため、把握することが難しいところがあります。
そこで、ハーバード大学と共同で開発したWHO/HPQの質問表を参考に、モチベーションを測定すると良いでしょう。
モチベーションの向上は、費用対効果が大きく期待できる施策のひとつです。従業員ひとりひとりが最大限のパフォーマンスが発揮できるように、取り組んでみましょう。
外的効果①企業イメージの向上
健康経営に関する取り組みは、企業イメージを向上させます。
健康経営銘柄や健康経営優良企業など健康経営の取り組みが認められる企業は、更に企業イメージの向上が期待できるでしょう。
以下のグラフは、健康経営優良企業とTOPIX(東京証券取引所に上場する銘柄)を比較した株価の推移を表しています。
健康経営の取り組みの評価が高い企業ほど、株価の上昇が大きくなっていることがわかります。
ゆえに健康経営の取り組みを宣伝や広告等で多くの方に知ってもらい、企業イメージを向上させていけば、費用対効果として期待できるでしょう。
外的効果②リクルート効果
就活する学生や転職希望者は、「自身が働きたいと思う会社」について考えます。そのような会社の判断基準になるのが、『健康経営の取り組み実績のある会社』です。
働きやすさを重視する求職者にとって、従業員が心身ともに健康で働ける環境が整った会社は、「ぜひ働きたい」と思う会社になります。
結果として、求人倍率の上昇や優秀な従業員の獲得、生産性の向上などの費用対効果が期待できるでしょう。
従業員が心身ともに健康で働ける職場づくりに取り組んでください。
健康経営への投資は費用対効果が大きい
健康経営は、本当に費用対効果が期待できるのでしょうか。この疑問に対する検証結果を経済産業省の資料のなかで以下のように紹介しています。
ジョンソン・エンド・ジョンソンが世界250社・約11万4千人の従業員に健康教育プログラムを提供した投資リターンを試算した結果「1ドルの健康投資に対して約3ドルの成果に繋がった」と発表しています。
以下にある表が検証結果を元に作成されたものです。健康経営における費用対効果は、『投資に対し約3倍の期待ができる』と試算されています。
出典:経済産業省「企業による健康投資に関する情報開示について」
その他にも健康経営には、「費用対効果が期待できる」といった検証結果があります。健康経営における費用対効果に疑問がある方は、ここからのデータをぜひ参考にしてください。
健康経営に投資した企業の業績
社会福祉研究資料のなかで、海外での優良健康経営認定企業とS&P500社を比較し、健康経営に投資した企業の10年後の業績を表した以下のグラフがあります。
1999年に1万ドルの投資をした場合、優良健康経営認定企業では、約1万7千ドルの費用対効果があり、S&P500においては、9千900ドル余りにとどまっています。
結果、優良健康経営認定企業の方が同じ金額を投資した場合の費用対効果が大きいことがわかります。
しかし、尾形裕也教授は、資料のなかで「このデータだけでは、健康経営と業績の関連性は、確かではない」と仰っています。(業績がいいから健康経営にも熱心だという逆の因果関係を示唆している可能性もあるため)
さらに、「少なくとも健康経営と企業業績の間には、明らかに一定の相関があり、費用対効果もある」ということにも言及しています。
従って「健康経営と業績の関係性は関連する」といえるでしょう。
健康経営優良企業と比べる株価の推移
先述では、健康経営と業績の関連性について説明しました。ここでは、健康経営における株価の推移についても見ていきましょう。
「健康経営銘柄2021」に選出された企業数は、全48社です。
そのなかの45社を対象に、大和証券株式会社は、「健康経営銘柄2021」の株価指数と、TOPIXの推移を比較した以下の資料を作成しています。
出典:MONEY PLUS
このグラフを見ると、健康経営銘柄に選定された優良企業は、株価に高いパフォーマンスの影響を与えていることがわかります。
ゆえに健康経営に力を注ぐと、『株価の上昇』という費用対効果が期待できるでしょう。
健康経営における健康投資費用
費用対効果とは、投資費用に対して得られる効果を数値化したものです。経営側は、「投資費用をなるべく抑え、効率性やより効果があるものに投資したい」と考えます。
そこで、健康経営における投資費用には、どのようなものがあるのか、以下の資料を元に、健康経営の費用について紹介していきます。
健康経営にかかる費用に関して考えている方は、参考にしてみてください。
参考:経済産業省(第1回健康投資の見える化検討委員会 事務局説明資料より)
外注費
外注費とは、外部の法人または個人と請負契約を締結して、自社の業務の一部を外部委託して支出した費用のことです。
健康経営における外注費には、以下のような法定の取り組み費用や自主的な取り組み費用があります。
-
- 産業医:労働安全衛生法第13条に基づいて、常時50人以上の労働者を使用する場合、産業医を選任するための費用
- 産業医:労働安全衛生法第13条に基づいて、常時50人以上の労働者を使用する場合、産業医を選任するための費用
- 定期健康診断:労働安全衛生法第66条に基づいて、週30時間以上働く労働者に対して医師による健康診断を行うための費用
- ストレスチェック:労働安全衛生法第66条の10に基づいて、常時50人以上の労働者を使用する場合、医師等が心理的な負担の程度を把握するための検査費用
- その他法定の取り組み:個別の法律等において、業界において実施すべき法定の取組(特定業務従事者健康診断等)
- 自主的な取り組み費用:ヘルスサービス・健康セミナーの開催など
外注費のなかには、『小規模事業場産業医活動助成金』や『ストレスチェック助成金』など、条件を満たしていれば助成を受けられるものもあります。
助成金を活用すると、投資にかかるコストも低くなるため、積極的に活用しましょう。
環境投資
授業員が心身ともに健康であるためには、環境整備が欠かせません。したがって健康経営における費用で、必要となる費用は、『環境投資費用』です。
環境整備費用には、「設備投資」「制度改善投資」「人的投資」があります。以下それぞれ紹介していきます。
- 設備投資:社内ジム・社員食堂・喫煙場の設置・社内診療施設など
- 制度改善投資:健康管理システムの導入・職場環境の改善に対する費用(アプリ導入や福利厚生導入)など
- 人的投資:産業医や保健師の雇用・事務員の配備・健康経営アドバイザーの配備など
環境整備に投資するうえで、受動喫煙防止対策助成金や心と健康づくり計画助成金など多くの助成金も用意されています。
また、日本でも健康経営の重要性が高まる背景によって、健康経営を促進するサービスを提供する企業が増えてきました。
『自社にあった最も費用対効果が期待できる手段』を検討してみましょう。
まとめ:費用対効果が期待できる健康経営に取り組もう
健康経営では、費用対効果をあらかじめ試算することで、より効果的・効率的に健康経営を促進させることができます。
また、さまざまな検証結果により、健康経営は費用対効果が大きい取り組みといえます。
ゆえに健康経営に力を注げば、企業の業績向上に繋がっていくといえるでしょう。経営戦略の一環として、積極的に健康経営に取り組んでみてはいかがでしょうか。
また、健康経営に対する投資として、コミュニケーション向上や運動不足の改善を促進させるためのアプリ「KIWI GO」があります。
テレワーク続きで従業員の運動不足やコミュニケーション不足が気になる企業は、ぜひKIWIGOの導入を検討してみてください。