近年、働き方改革が推進されていることで、従業員の働き方が多様化しています。

働き方を取り巻く環境が変化してきている現在、重要となるのが「従業員エンゲージメント」です

従業員エンゲージメントとは、自社の従業員が自社に思い入れや愛着心を持っている状態のことです。

本記事では、従業員エンゲージメントの意味を解説し、向上させるメリットと向上のメソッドを紹介します。

 

従業員エンゲージメントとは?

2020年9月に経済産業省から発刊された「人材版伊藤レポート2.0」によると、従業員エンゲージメントは次のように定義されています。

『企業が目指す姿や方向性を、従業員が理解・共感し、その達成に向けて貢献しようという意識を持っていること』

従業員エンゲージメントが高い状態だと、従業員のモチベーションが高まり企業の売上や成長につながります。

出典:人材版伊藤レポート2.0

 

日本における従業員エンゲージメントの現状

2017年、アメリカの調査会社であるギャラップが全世界1300万人を対象に「熱意あふれる社員」の割合調査を行いました。

調査は、「職場で自分が何を期待されているのか知っている」や、「7日間のうちに、よい仕事をしたと認められたり、褒められたりした」など従業員エンゲージメントを測る12の質問から成り立っています。

調査を行った結果、日本において従業員エンゲージメントが高く、熱意ある従業員の割合は全体のおよそ6%でした。

この日本の数値は米国の32%に比べると極端に低く、調査した139カ国中、132位で最下位層です。

出典:日経新聞「熱意ある社員」6%のみ 日本132位、米ギャラップ調査

このような状況を改善するには、従業員に最適な仕事を与え、働く環境を整えることで従業員満足度を高めることが重要です。

 

従業員エンゲージメントが重視される背景

従業員エンゲージメントが現在の日本企業で重視される背景について、解説します。

 

人材不足による人的資本への関心の高まり

人的資本とは、人材を企業の資本として考え、その資本の価値を最大限引き出すことによって、企業の中長期的な成長と価値向上につなげることができるという考え方です。

これまでの社会では、企業の価値を企業の数値的側面や財務価値で測ることが一般的でした。

しかし、少子高齢化が進み働き手が減る現在、非財務的価値である「人材」の重要度が高まっています。

「人材」が単なる労働力ではなく企業価値を生む貴重な存在と認識されるなか、従業員の実態把握につながる従業員エンゲージメントは多くの企業で重視されています。

 

終身雇用、年功序列などの旧雇用制度の崩壊

従来の日本では大量採用を前提とした独自の雇用形態が取られており、業務の進め方や配置のやり方に非効率な部分があっても人材の量でカバーしていました。

しかし現在は少子高齢化により労働人口が年々減少しているため、より少ない人員で効率的に業務を行う必要があります。

効率的な経営をするためには、より高度なスキルを持った人材を獲得し少しでも長く働いてもらうのが有効です。

従業員エンゲージメントを高めると、従業員が企業に愛着心を持ち、従業員が長期間働いてくれるようになります。

従業員エンゲージメント向上にむけた取り組みを行うことは、現代日本において必須と言えます。

 

従業員エンゲージメント向上による企業側のメリット

ここからは従業員エンゲージメントを向上させることで、企業にもたらされるメリットを解説します。

 

職場の雰囲気が良くなる

従業員エンゲージメントが向上すれば従業員が前向きな気持ちになり、職場全体に活気がもたらされます。

職場の雰囲気が良くなれば従業員同士の意見交換もスムーズになるため、画期的なアイデアにつながる可能性もあります。

 

従業員のモチベーションが高まる

従業員エンゲージメントが高まることで組織への愛着心が高まり、組織に貢献したいという欲求が高まります。

組織のために貢献したいという欲求が生み出されると、命じられた仕事をこなすだけでなく、自発的に仕事を見出す従業員が増加します。

従業員が積極的に仕事に取り組むようになればこれまで見えなかった職場の課題が見つかり、改善につながります。

 

離職率が低下する

従業員エンゲージメントの向上は、人材が組織に定着するかどうかにも影響を及ぼします。

アメリカのコンサルティング会社であるCEB社(Corporate Executive Board)社が2004年に発表したデータによると、従業員エンゲージメントが高い従業員の離職率は、従業員エンゲージメントが低い従業員の離職率に比べ、87%も低いと分かりました。

従業員エンゲージメントが高いと組織に対する帰属意識が高まり、従業員が自身のキャリアと組織の方針を紐づけて業務に取り組みます。

長く働く人材を確保するなら、従業員エンゲージメント向上の取り組みを行うのが効果的です。

 

出典:Driving Performance and Retention Through Employee Engagement

 

従業員エンゲージメントの計測方法

従業員エンゲージメントは、「エンゲージメント指標調査」という計測方法で測ることが一般的です。

エンゲージメント指標調査とは、企業と従業員が相互に成長しあう関係度合を数値化し、表したものです。

具体的な調査の種類は、次のとおりです。

  • eNPS(employee Promoter Score)
  • パルスサーベイ
  • エンゲージメントサーベイ

eNPSは、従業員が勤める企業を、友人や知人におすすめできるかの度合いでエンゲージメントを調査するものです。推奨者の割合から批判者の割合を引き、データとして可視化します。

パルスサーベイは、仕事をしている様子を細かくデータ化することで社員の意識状態を測る調査です。

キーボードのタイピング速度から仕事への熱中度を測定したり、心拍数などの生体データを業務中に計測したりするなど、さまざまな調査方法があります。

エンゲージメントサーベイは、アンケート調査により個人と企業の双方的な関係性を可視化できる手法です。

一回の調査で得られる情報量は多いですが、パルスサーベイと比べ回答時間が長くなるため、数か月おきなどに行うのが主流です。

エンゲージメント指標調査により適切に従業員エンゲージメントを数値化できれば、組織における人材育成の課題や、マネジメントのポイント、従業員の不満を明らかにできます。

 

従業員エンゲージメントを高める際のポイント

従業員エンゲージメント向上させるには、以下3つの要素を満たすことが重要です。

  • 会社のビジョンへの共感
  • 働きやすい環境
  • 仕事へのやりがい

要素に合った施策を実行し、従業員エンゲージメントを高めてください。

 

会社のビジョンに共感してもらう

従業員が組織の理念やビジョンを理解できているかどうかは、非常に重要です。

理念やビジョンに共感できていない状態だと、どのような目的で日々の業務にあたっているかわからなくなってしまい、従業員エンゲージメント低下に繋がります。

従業員がビジョンに共感できるよう、企業側が積極的に機会を創り出すことが必要です。

ビジョンへの理解を深めるには、定期的に企業の理念を伝える、経営層と直接話せるきっかけを作る、といった取り組みが効果的です。

 

従業員が働きやすい環境を作る

現代では、従業員個人の状態や希望に合わせフレキシブルな雇用形態を導入する企業が増えてきており、柔軟な働き方を希望する人も多くいます。

そのため、多様な働き方に対応できるよう制度を整えることが、従業員エンゲージメント向上に役立ちます。

従業員が出勤退勤時間を選択できるようにしたり、在宅勤務を含め働く場所を選べるようにしたりする、といった取り組みは、働き方の多様化に繋がります。

 

適切な業務を与える

従業員がやりがいを感じながら成長するには、適切な業務を与えることが重要です。

成長を促すことを目的に高すぎる目標を課してしまうと、従業員は過度なストレスを感じて思うように仕事を進められなくなります。

かと言って、これまでの業務を維持するだけでは、成長に繋がりません。

従業員が適度なストレスを感じ成長するには、少し難しいと思えるような業務に挑戦してもらうことが大切です。

まずは従業員が現在こなしている業務と達成度を把握し、どの程度の負荷が最適なのか判断してください。

 

成長できる環境を与える

従業員それぞれで、自身が目指すライフプランやキャリア設計は異なります。

例えば、ゼネラリストを目指したい従業員もいれば、別のスキルを身に着けて、なにかしらのスペシャリストを目指したいと考える従業員もいるでしょう。

企業がキャリア設計のテンプレートを用意して、その通りに従業員を当てはめてしまうと、従業員自身の自己成長を阻害する要因の一つになってしまいます。

従業員が望むキャリアに進めるよう、従業員ひとりひとりに沿った成長環境を用意することが重要です。

そのためには、定期的にキャリア面談を行う、スキルアップや資格取得を資金面でサポートするといった体制づくりが効果的です。

従業員が自身を見つめ、自身を振り返りながら成長できるような環境作りは、従業員エンゲージメントを向上させる重要なポイントです。

 

従業員エンゲージメント向上施策を行う企業の事例

具体的に実際の企業がどのような従業員エンゲージメント向上施策を行っているか、紹介します。

 

佐竹食品株式会社

出典:佐竹食品株式会社

 

佐竹食品株式会社は、大阪を中心に食品のスーパーマーケットを展開していましたが、企業が徐々に大きくなったことで各店舗の管理が難しくなりました。

そこで、佐竹食品株式会社は、従業員が共通の意識を持って働けるよう「理念策定プロジェクト」を立ち上げました。

「理念策定プロジェクト」では、企業が持っている理念を分かりやすい言葉でまとめると共に、サイネージ、社内報などを使い役員が理念に対する思いを伝える場を設けています。

また、理念を活かした基準で人事評価を作る「人事制度プロジェクト」も行われました。

「正直に商売ができているか?」などの項目を人事評価に入れることで、従業員のモチベーションを向上させています。

 

参考:【前編】4年連続エンゲージメント日本一の会社が語る “理念反対派”だった社長が本気で目指す「日本一楽しいスーパー」への道

 

株式会社岐阜タンメンBBC

出典:https://gifutanmen-bbc.com/

 

株式会社岐阜タンメンBBCは、製麺事業、屋台事業などラーメンに特化した事業に取り組む中で、これまでアルバイト求人媒体で足りない人員を確保してきました。

しかし求人媒体を使った採用では、エンゲージメントが高い人員の採用が難しい状況でした。

そこで株式会社岐阜タンメンBBCは、リファラル採用という、従業員が自身の友人・知人を紹介する採用手法を導入しました。

自社の従業員を通し自社の良さが社外に広がることで、「この会社で働きたい」といった強い思いを持つ人員の採用に成功したのです。

自社のよさを友人・知人に広めれば、紹介した人も改めて自社の良い点を意識できるため、従業員エンゲージメントが向上します。

こうした好循環により、株式会社岐阜タンメンBBCの離職率は2.5%と飲食業界の中で非常に低い結果となっています。

 

参考:離職率2.5%・アルバイト採用のリファラル比率50%超──仲間を大切にし、仲間を称え、仲間を集める岐阜タンメンBBCのリファラル採用と正社員登用の仕組み

 

株式会社UZABASE

出典:https://www.uzabase.com/jp/

 

経済ニュースを発信する「NewsPicks」などを展開している株式会社UZABASEは、海外にも拠点を展開しています

会社の成長に併せて社員も増え、現在数百名という社員が働いている中で、同社は改めて理念やビジョンを浸透させるための取り組みを行いました。

株式会社UZABASEは、理念に沿った以下「4つのやらないこと」を決め、社員が理念に基づいた行動を取れるような施策を導入しています。

  • 「経済情報でなければやらない」
  • 「世界をかえるプロダクトでなければやらない」
  • 「人とテクノロジーの力を使ったものでなければやらない」
  • 「プラットフォームでなければやらない」

やるべきことよりもやらないことを定義しておけば、理念がシンプルになり従業員に伝わりやすくなります。

また、価値観を表す「7つのルール」を作ることで、会社が持っている軸を明らかにしました。「7つのルール」は、次のとおりです。

  • 自由主義で行こう
  • 創造性がなければ意味がない
  • ユーザーの理想から始める
  • スピードで驚かす
  • 迷ったら挑戦する道を選ぶ
  • 渦中の友を助ける
  • 異能は才能

このように理念を言語化することで、多様なバックグラウンドを持つ従業員同士が団結しやすい環境を作っています。

参考:「やらないこと」の徹底でつくられる、勝てる組織。組織偏差値70越え 株式会社ユーザベース

 

まとめ:従業員エンゲージメントを高めて従業員が働きやすい環境を作ろう

従業員エンゲージメントを高めることによるメリットは多数存在します。

従業員エンゲージメントを向上させるには、働きやすい環境を整え適切な業務を与えることが重要です。

企業をよりよく好転させるため、従業員エンゲージメント向上施策に取り組んでみてはいかがでしょうか。

KIWI GOは、運動の習慣化を促し、社員の交流を深めることができる福利厚生アプリです。

従業員の健康を維持すること、コミュニケーションを促進することは、働きやすい環境を作るうえで非常に重要です。

従業員が健康に働けるよう、従業員エンゲージメントに関心をお持ちの企業様はぜひご検討ください。