従業員の欠勤や遅刻は、企業の生産性と業績に大きな影響を与えます。

多くの企業がアブセンティーズムにより発生するトラブルに悩んでいるものの、正しい把握方法を知らないことで対策できないケースが少なくありません

アブセンティーズムの測定方法を理解し、得られるデータをもとに問題解決に向けた具体的な行動を起こしてください。

本記事ではアブセンティーズムを正確に測定するための手法と、その結果を経営改善につなげるための実践的なノウハウを解説します。

アブセンティーズムに悩む企業の皆様は、ぜひこの記事を参考にデータに基づく効果的な対策を講じてください。

アブセンティーズムとは

アブセンティーズムとは、従業員が心身の不調を理由に欠勤や遅刻、早退、休職などで仕事を休むことを指します。
風邪で会社を休む、メンタル不調で長期間休職する、といったことはアブセンティーズムの一例です。

従業員が休むと仕事が滞ったり、同僚の負担が増えたりして企業の生産性は低下します。
さらにアブセンティーズムが多い職場では、従業員の満足度が低く職場環境に問題がある可能性もあります。

放置すれば組織全体に深刻な影響を与える恐れがあるため、企業にとって無視できない課題です。

あわせて読みたい:プレゼンティーズム・アブセンティーズムとは? 健康経営における基礎知識を解説

アブセンティーズムの原因

アブセンティーズムの原因は、身体の不調と精神的な不調の2つです

身体の不調には、病気や怪我などが挙げられます。一方、精神的な不調は、不眠や鬱、ストレスなどです。

アブセンティーズムを改善するには、従業員の身体的・精神的な健康を守る取り組みが欠かせません。

適切な対策を講じてアブセンティーズムを改善すれば、従業員のウェルビーイングと生産性の両立を目指せます。

アブセンティーズムとプレゼンティーズムの違い

アブセンティーズムと似た言葉に「プレゼンティーズム」があります。

プレゼンティーズムとは、何らかの疾患や症状を抱えながらも出勤し、業務の生産性が下がっている状態を指します

例えば、頭痛や腰痛に悩みつつも無理して出社し、仕事のパフォーマンスが上がらないような状況です。

プレゼンティーズムは、本人も気づきにくく改善が難しい点にあります。

もしプレゼンティーズムの測定方法について興味があれば、以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。

あわせて読みたい:プレゼンティーズムの測定方法は?見えない不調を把握し改善するポイント

アブセンティーズムが企業に与える影響

ここでは、アブセンティーズムが企業に与える影響具体な影響について紹介していきます。

生産性の低下

従業員が欠勤や遅刻をすると人的リソースが不足し、生産能力が落ちます。

例えばある従業員が欠勤すると、その仕事は他の従業員がカバーしなければならず、業務負荷が増大します。欠勤者の仕事がそのまま滞り、完了が遅れることもあります。

こうした状況が続くと全体の生産性が低下し、企業のパフォーマンスに悪影響を及ぼします。

コストの増加

欠勤者が出るとその穴を埋めるために他の従業員に残業をお願いしたり、代替人員を雇ったりする必要が出てくるため、人件費が増加します。

さらに、長期にわたるアブセンティーズムは、様々なコストを押し上げる要因です。

例えば、人件費や福利厚生費などの直接的なコスト、欠員補充のための採用コストや新人教育コストなどの間接的なコスト、さらには医療費や障害年金などの関連コストも増大する可能性があります。

製品やサービスの質の低下

欠勤により人員が不足すると、適切な品質管理が難しくなるため、アブセンティーズムは製品やサービスの質にも影響を及ぼします。

例えば、製造業では検品や品質チェックのプロセスに支障をきたす恐れがあります。

また、サービス業では顧客対応が手薄になり、クレームや問い合わせに適切に対処できないケースも出てきます。

アブセンティーズム増加への悪循環

頻繁な欠勤が発生する職場では、残された従業員に日常業務の負担が集中します

このような状況が長期的に続けば、過重労働によって体調を崩す従業員が増加し、さらなるアブセンティーズムを引き起こすリスクが高まります。

企業イメージの低下

アブセンティーズムが多い会社では従業員の士気が低下し、仕事へのエンゲージメントが減少する傾向にあります。

モチベーションが下がれば、生産性の低下につながるだけでなく、優秀な人材が退職を選ぶリスクも高まります

また、外部から見てアブセンティーズムの多い組織は、管理が不十分であると判断される可能性があります。

アブセンティーズムの測定方法

アブセンティーズムの実態を正確に把握するには、適切な測定方法を用いることが不可欠です。

ここでは経済産業省が推奨している『企業の「健康経営」ガイドブック』から、アブセンティーズムの測定方法について詳しく解説します。

参考:経済産業『企業の「健康経営」ガイドブック~連携・協働による健康づくりのススメ~(改訂第1版)』 

従業員へのアンケート調査

アブセンティーズムを測定する最も正確な方法は、従業員へのアンケート調査です。

「昨年1年間に自分の病気で何日仕事を休みましたか」といった質問により、実際の状況を正確に把握できます。

質問項目を工夫すれば、アブセンティーズムの原因となる満足度や働きがい、職場環境などの情報も収集可能です。

ただしアンケートは従業員の自己申告に基づくため、回答のゆがみ(バイアス)や正確性には課題があります。

またアンケートの回収率が低ければ「欠損値」が多くなり、データの信頼性が損なわれる点にも留意が必要です。

欠勤・休職日数(代替指標)

欠勤・休職日数(代替指標)による調査では、有給休暇取得後に発生する欠勤や休職を疾病による休業と仮定し、代替指標として把握します

しかし、一般的に有給休暇取得時の理由が詳細に記録されることは少なく、特に病気による休暇取得日数の正確な把握は難しいのが現状です。

とくに有給休暇中の病欠日数はアブセンティーズムの計測から漏れがちで、疾病による休業の全体像が正確に反映されない可能性があります

つまり、実際のアブセンティーズムよりも過小評価された分析結果となる危険を踏まえて調査をおこなう必要があります。

疾病休業者数・日数

「疾病休業者数・日数」の測定では、30日以上病気で休業した従業員を特定してアブセンティーズムを測定します。

疾病休業の把握では、休業開始日、終了日、疾病の種類(メンタルヘルス関連かそれ以外か)を記録するのが一般的です。

従来、有給休暇を使用している期間は集計から除外されがちでした。

しかし正確な健康管理と復職支援には、有給休暇の使用有無にかかわらず、30日以上の疾病休業者全員の情報を集める必要がある点に注意してください。

アブセンティーズムの測定から労働生産性損失額を算出する方法

アブセンティーズムは従業員が働けなかった日数を表す指標であり、アブセンティーズムによる損失はシンプルにコスト換算できます。

計算式は、次の通りです。

労働生産性損失額(円)=アブセンティーズム(日数)×賃金(円)

経済産業省の調査によると日本企業のアブセンティーズム平均日数は2.6日です。

つまり平均的な企業では「2.6日分の人件費」に相当する生産性損失が生じていると判断可能です。

参考:厚生労働科学研究成果データベース『中小企業における労働生産性の損失とその影響要因に関する研究』

アブセンティーズムを対策する方法

アブセンティーズムに効果的に対処するためには、その原因を多角的に分析し、組織的な取り組みを行うことが重要です。

ここでは、企業が実践できるアブセンティーズムの具体的な取り組み内容を解説します。

健康経営の推進

アブセンティーズム対策の有効な方策として、健康経営の推進があります。

健康経営とは、従業員の健康保持・増進を経営の重要課題と位置付け、戦略的に取り組むことです。

具体的な施策は、次のとおりです。

  • 健康診断の確実な受診と事後フォローの徹底
  • 社内ジムの設置
  • ウォーキングイベントの開催
  • 従業員が運動できる環境を整備
  • メンタルヘルス教育の実施や相談窓口の設置
  • 受動喫煙防止や禁煙サポートプログラムの提供
  • 健康増進手当の支給 など

多角的なアプローチで、従業員の健康状態は改善できます。

健康経営の進め方について詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてみてください。

あわせて読みたい:健康経営の進め方とは?組織体制の整え方や効果的に進める方法を紹介

ワークライフバランスの促進

ワークライフバランスを促進すれば、仕事と生活の調和が図られ従業員のメンタルが安定します。

ワークライフバランス向上の具体的な取り組みは、次のとおりです。

  • 残業時間の上限設定
  • ノー残業デーの導入
  • 年次有給休暇の計画的な取得の奨励
  • リフレッシュ休暇制度の導入
  • テレワーク制度の整備
  • フレックスタイム制度の採用
  • 勤務時間の短縮制度の設置
  • 育児休暇の拡充 など

仕事と生活の両立を支援することで従業員のストレスを軽減すれば、アブセンティーズムの予防ができます。

あわせて読みたい:健康経営にはワークライフバランスが重要!取り組みのポイントを解説

メンタルヘルス対策の強化

従業員のメンタルヘルス対策を強化することは、アブセンティーズム対策として非常に重要です。

具体的な施策は、次のとおりです。

  • メンタルヘルス不調の早期発見・対応のための定期的な研修
  • 従業員一人ひとりのストレス対処法を学ぶセルフケア教育
  • 専門カウンセラーへの相談窓口の設置

これらの施策を通じて従業員のメンタルヘルスを守り、アブセンティーズムの予防と早期対応を図ることができます

あわせて読みたい:あなたの職場は大丈夫?従業員に対するメンタルヘルスケアの現状と進め方

職場環境の改善

劣悪な職場環境は従業員のストレスを高め心身の健康を損ない、欠勤やモチベーション低下を引き起こす大きな要因となります。

職場環境の具体的な改善施策は、次のとおりです。

  • ハラスメント対策の徹底
  • コミュニケーションの促進
  • 理不尽な長時間労働の是正
  • 会社設備の改善

社内のコミュニケーションを促進する方法については、以下の記事でも詳しく紹介していますので、ぜひ参考にしてください。

あわせて読みたい:社内コミュニケーションを活性化するには?ウィズコロナ時代の施策&事例

アブセンティーズムのモニタリングと分析

アブセンティーズムの問題に効果的に対処するためには、まずその実態を正確に把握し、要因を分析することが重要です。
モニタリングとは、欠勤や遅刻、早退などのデータを社員や部門ごとに定期的に収集・記録することです。

一方、分析は収集したデータをもとに課題の要因を特定することを指します。

モニタリングと分析を行うことでアブセンティーズムの実態を正確に把握し、潜在的な問題や兆候を早期に発見できます。

モニタリングと分析を継続的に実施し、PDCAサイクルを回してください。

従業員の健康意識の向上

アブセンティーズム対策において、従業員一人ひとりが自身の健康を大切にし、健康的な生活習慣を心がける意識を持つことも重要です。

従業員の健康意識が高まることで運動や食生活の改善、節酒など自発的な健康行動が促進され、健康増進の取り組みがスムーズに進みます。

また健康経営施策への理解が深まり、制度の活用や協力が得られやすくなります。

健康は、企業と従業員にとって共通の大切な財産です。その意識を醸成し、実践に移すことがアブセンティーズム対策につながります。

まとめ:アブセンティーズム対策を行い従業員が働きやすい環境を作る

アブセンティーズムは、企業経営に深刻な影響を及ぼす問題です。

しかし健康経営・ワークライフバランス・メンタルヘルス対策・職場環境改善など様々な角度からアプローチすることで、解決へと導けます。

従業員が働きやすい環境を整備し、従業員の健康を取り戻してください。

アブセンティーズム対策の一環として、弊社では運動習慣の定着を支援するウォーキングアプリ「KIWI GO」を提供しています。

KIWI GOにはごほうびを目標にして楽しみながら歩数を増やせるゲーム性があり、従業員同士の会話を増やせるギルド機能も付帯しています。

従業員の健康維持・増進を図る施策の一つとして、ぜひKIWI GOの活用をご検討ください。